小林麻央が否定した遺伝性乳がん、患者や家族が抱える葛藤
10月10日、ブログで子どもたちの運動会に参加したことを明かした小林麻央(34)。運動会が始まる30分ほど前。幼稚園の近くの神社には、姉の小林麻耶(37)や実母、長女・麗禾ちゃん(5)や長男・勸玄くん(3)らとそろって手を合わせる彼女の姿があったという。
この3日前、麻央は“ある発表”をしていた。タイトルは「遺伝子検査」。《私が遺伝性の乳癌だと断定したようなことが一部で言われていたようなのですが、私は、乳がん 卵巣がん症候群の遺伝子検査をした結果、BRCA1 BRCA2の変異はともに陰性で、遺伝性の乳癌ではありませんでした》と遺伝性乳がんの噂を否定したのだ。
そもそも“遺伝性の乳がん”とは、いったいどんなものなのか。遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関わる医療関係者の研究団体「日本HBOCコンソーシアム」によると、乳がんや卵巣がんの5〜10%ほどは遺伝的要因が強く関与して発症していると考えられているという。
ブログにあったのは、正しくは遺伝性乳がん卵巣がん症候群。英語の頭文字を取ってHBOCといわれ、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子に変異があるかを検査することで診断される。つまりこの検査で陽性と診断されると“将来がんになるリスクが高い”というのだ。
事前にリスクを知ることで予防手段を考えることができるというメリットがあるこの検査。だがいっぽうでは、患者や家族が葛藤を抱えることも多い。その理由は“HBOCは遺伝子の疾患であり、変異遺伝子は50%の確率で親から子へ受け継がれる”という点にあるようだ。日本で唯一、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の当事者会として活動している「NPO法人クラヴィスアルクス」の太宰牧子理事長は、患者が直面している葛藤についてこう語る。
「HBOCであることで、周囲の理解不足よる偏見や差別を受けるという問題があります。結婚や就職の場で敬遠されたり、子供がいじめを受けたりするケースです。家族のためを思って検査を受けたのに『余計なことをしてくれた』『家の恥』などと心無い言葉を浴びせられた方もいます。遺伝子に変異があるということは“がんを抑制する働きが弱い”ということ。だから特性を理解して対策を講じればいいだけのことなのです。しかし悲しいことに『私のせいで』と自分を責めてしまい、行き場をなくす方も少なくないようです」
麻央もまた、そんな揺れ動く心情をブログに綴っていた。
《乳がんを経験していた母は、ずっと胸のうちで「私のせいではないか」と自分を責めていました。そして、妹も乳がんとなると、姉は、相当不安があったと思います。私は、娘のことも、とても心配で、私のせいで将来もし、、、と苦しい気持ちになりました。(中略)結果を待つまでの間にどんどん現実を知ることの怖さがつのっていきました》
今回の麻央の発表について、一部では「遺伝性と診断されることはそんなに悪いことなのか?」「自分が遺伝性じゃなければそれでいいの?」などの厳しい意見もあったという。太宰さんはそうした批判について異を唱える。
「麻央さんは当時の心境をありのままに綴られていました。検査に直面した当事者の心情の一端が赤裸々に綴られていて、一般の方にも理解していただけけるきっかけになったのではないかと思います。彼女の場合、公私ともに注目を集める中で治療を続けて来られました。そこには人には言い表せないご苦労があると思います。彼女が検査結果をあえて発表されたのも、噂がご家族に与える影響があまりに大きすぎることを考えてのことだったのかもしれません。一番心配なのはやはり、お姉さまやお子様のことだったのでしょう」
冒頭の運動会を終えた彼女は、ブログに《思えば、闘病してから初めて、決めた目標でした(中略)娘も息子も、思いっきり楽しんで参加していて、本当に嬉しかったです。幼稚園のママとの再会には涙があふれてしまいました》と綴っていた。愛する家族たちと、麻央はこれからも前を向いて歩き続けていく――。