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●革新的な料金プランのギガモンスター
新iPhoneの発表を機に、ユーザー獲得の動きを活発化させる大手携帯電話会社。今年、最初に手を打ったのはソフトバンクだ。同社は月額6,000円で月間20GB利用できるデータ定額サービス「ギガモンスター」を発表した。スマホのヘビーユーザーにとっては魅力的なプランとなりそうだが、横並びが多い携帯会社のサービスにおいて、差別化要因となるだろうか。

○ギガモンスターとは

ギガモンスターは、ソフトバンクの基本料金プラン「スマ放題」「スマ放題ライト」で選べるデータ定額サービス。データ通信を毎月20GB利用できる「データ定額 20GB」(月額6,000円)と同30GB利用可能な「データ定額 30GB」(同8,000円)がある。毎月の請求額は、基本料金プランの利用額を足し合わせたものになり、たとえば、「スマ放題」「データ定額 20GB」の組み合わせで月額9,000円となる計算だ。

トータルでは高額に見えるかもしれないが、「データ定額 5GB」は5,000円であり、わずか1,000円の上乗せで、データ利用量が4倍となる。スマートフォンで動画などを多く視聴するヘビーユーザーには革新的なプランに映りそうだ。

他社と料金を比較しても差は大きい。NTTドコモで20GBを契約すると毎月16,000円、auでは16,800円であり、圧倒的に安い料金で利用できる。

もちろん、ニーズがなければ何の意味もない。ソフトバンクによると、スマホ利用者の93%が5GB以下の契約とし、ユーザーは限られそうだが、65%の人がデータ通信量を気にしながらスマホを利用しているとし、潜在的なニーズは高そうだ。

たとえば、月間5GBまでだから、外出先で動画視聴はやめておこう、といった人たちは相当数いるだろう。こまめにWi-Fiのオン/オフを心がける必要もなくなり、データの利用制限というストレスから開放されるならば、1,000円の上積みも許容できるだろう。

また、動画投稿、ライブ中継、さらにはVRコンテンツなど、データ使用量は爆発的に増加していく傾向にあり、この先のコンテンツニーズを考えても、こうした対策は評価できる。とはいえ、もう少し早くこうしたサービスを出してくれても良かったんじゃないかというのがユーザーの本音だろう。その点、同社は意図的にやらなかったのではなく、ネットワークの強化が必要だったと説明する。

●ギガモンスターを実現できたワケ
○ネットワークの強化で実現

同社はこれまで基地局の数を増やしてネットワークの強化に努めてきた。しかし、都市部において基地局は過密状態にあり、極端なところでは10m感覚で基地局が設置されているところもあるという。これ以上の基地局の設置は電波干渉などを起こしうることからも困難であり、1基地局あたりの容量を増やすことが必要になっている。

そこで、ソフトバンクは今回のデータプランの発表にあたり、「Massive MIMO」という技術を導入した。これは1基地局当たりのネットワーク容量を最大10倍に増やせる技術。イメージとしては、通常の基地局では複数人で1つの電波を利用していたのに対し、Massive MIMOでは各人に電波を割り当ててることで、混雑した場所でも快適な通信が可能になるという。Massive MIMOはiPhone 7の発売当日、9月16日より全国43都市100局より開始することになる。スタート時の数は少ないが、こうしたネットワークの余裕が見えたことで、今回のデータプランができたというわけだ。

今回のデータプランは、他社との大きな差別化になりそうだ。もちろん、それは他社が追随しなかった場合である。そのあたりについてソフトバンクネットワーク企画統括部 統括部長 北原 秀文氏は「Massive MIMOはソフトバンクが商用化した世界初の事例。他社ももちろん、実用化に向けた実験を進めているが、うちが複数年先を行っている」と話す。それが事実であれば、今回の取り組みはヘビーユーザーを取り込む大きな武器になりそうだ。

○学割ユーザーへの配慮も必要

ただし、懸念されることもある。それは学割キャンペーンだ。学割キャンペーンは、動画などの通信量を大きく消費する若い世代のニーズを汲み取り、今年1月に大手各社が打ち出した施策だ。ソフトバンクでは、「ギガ学割」と命名し、25歳以下の人を対象に、6GBを36カ月、計216GBをプレゼントするキャンペーンを展開してきた(新規・乗り換えの場合はホワイトプラン3年間0円の選択肢も)。

こうしたキャンペーンを目当てにソフトバンクを利用し続けてきた人にとっては、今回のデータプランが腑に落ちないかもしれない。データを多く使うのは、若者であり、ターゲットは学割もギガモンスターも同じ。今回のデータプランがはじめから存在していたならば、「そもそも学割は利用しなかった」「データの付与ではなく基本料金割引を選択していた」という人がいてもおかしくないからだ。その点に関して、ソフトバンクは、ギガ学割の利用者に対して「どうするか検討中」としている。ギガモンスターを進めるにあたり、ユーザーの不平不満を生まないような配慮も必要になるだろう。

(大澤昌弘)