アムステルダムの空港に現れた、手が届きそうな「雲の3D壁画」

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アムステルダム・スキポール空港の出発ホールに、長さ112mの「雲の壁画」が現れた。この見る角度によって風景が変わる世界最大のレンチキュラープリントを手がけたのは、「光る自転車道」で知られるオランダのデザイナー、ダーン・ローズガールデだ。

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2/817世紀前のオランダの画家たちの雲の絵がインスピレーションになっているという。

3/8壁画の横を通ると、壁画は動いて形を変えるように見える。

4/810cmの厚さをもつ壁画が、何kmにも及ぶ深さを表現する。

5/8薄い円柱形のレンチキュラープリントが、下にある絵を拡大している。

6/8壁画全体で1,600億ピクセル。壁画の奥にはLED照明があり、ポリカーボネートを通して壁画を明るく照らす。

7/8エスカレーターを上ると出発ゲートだ。

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アムステルダム・スキポール空港の出発ホールを歩くと、雲が描かれた長い壁の前を通ることになる。とても大きなLED画面だ、と最初は思うだろう。しかし、これは単なる画像ではない。雲の風景に奥行きがある。視差があり、見る人が動きを止めると、雲たちの動きも止まる。

これは、世界最大のレンチキュラープリント(シート状のレンチキュラーレンズを使って、見る角度によって絵柄が変化したり、立体感が得られたりする印刷物)による壁画なのだ。

「画面の雲をつかもうとする子どもたちもいますが、彼らは雲をつかむことはできません」と、デザイナーのダーン・ローズガールデ(日本語版記事)は語る。彼は、ゴッホの「星月夜」をモチーフにした光る自転車道や、スモッグを吸収する建物などを発案・制作してきた注目のデザイナーだ。この動きのある約112mのパノラマ「BEYOND」は、スタジオ・ローズガールデの最新プロジェクトである。

通常のレンチキュラープリントと同様に、ローズガールデの壁画にもレンチキュラーレンズと呼ばれる薄い円柱レンズが使われている。しかし、このレンチキュラーレンズは普通のものではない。

このレンズが、向こう側にある画像からの光を屈折させる。これが奥行きと動きをシミュレートする鍵になる。「ぼくたちはこの技法をどこまでも追求しました」とローズガールデは言う(ギネス世界記録を申請中だという)。

いちばん上の層には、レンチキュラーレンズが1インチ当たり15個の密度で重ねられている。レンチキュラーレンズの下にはインクの層があり(190億画素以上)、さらにLED照明が全体を光らせている。フレームが大きいほど動きもスムーズになり、10cmの厚さをもつ壁画が何kmにも及ぶ深さを表現する。

同じ効果のあるヴィデオウォールを設置するほうが簡単なのかもしれないが、アナログ感がほしかったとローズガールデは語る。「BEYOND」は常設の作品であり、数年で時代遅れに見えてしまうかもしれない。フィジカルなプリントを使うことで、リアル感が増す。

いつもなら生真面目な空間に“センス・オブ・ワンダー”をつくりたかったのだと、ローズガールデは言う。「雲のなかには隠れた物語があります」と彼は言う。目を凝らせば、ウサギのような雲や、オランダのような形をした雲に気がつくだろうと。

SLIDE SHOW

1/12ダーン・ローズガールデ作品集
Smart Highway:スタジオの代表作である「スマート道路」。日中の太陽光で充電し、夜になると発光する蛍光塗料によって、エネルギーを使わずに光を発する。

2/12Smog Free Project:イオンを利用したテクノロジーによって大気汚染物質を吸収する、巨大バキューム。オランダや中国で使われている。

3/12Dune:オランダ・ロッテルダムに流れるマース川沿いにつくられた、人が近づくと反応して光と音を発する「インタラクティブ・ランドスケープ」。

4/12Crystal:人が触ることに反応し、LEDライトで光を発するクリスタル。ダーンはいつまでも遊んでいられるこの作品を「火星からやってきたレゴ」とたとえる。

5/12Marbles:「Crystal」を大きくしたような作品。LEDとセンサーによって、人の動きに合わせて光を発する。

6/12Boo:スタジオの作品にはライトを使ったものが多い。「光は人とのインタラクションをつくり出すいい方法なんだ」とダーンは言う。

7/12Lotus:フランス・リールのサント・マリー・マドレーヌ大聖堂の中につくられた作品。人の動きに反応して、アルミニウムでできた花びらが開いたり閉じたりする。

8/12Liquid Space:3本のアームが、人の動きに合わせて音と光を発したり変形したりする作品。2008年のYCAM(山口情報芸術センター)にも出展された。

9/12Sustainable Dance Floor:人が踊ることで生まれる振動をエネルギーに変換するフロア。

10/12Intimacy:心拍数によって服の透明さが変化する「テクノロジーと親密さ」の関係を表現した作品。「テクノロジーは第2の皮膚である」という自身の考えを体現している。

11/12Flow:数百の換気装置が人の動きに合わせて動き、人工的な風をつくり出す「スマートウォール」。

12/12Rainbow Station:125年の歴史をもつアムステルダム中央駅と、現代のテクノロジー技術を組み合わせて生まれた作品。本来は星を見るために使われる液晶技術によって虹を描いた。

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