モデルハウスだけで決めてはいけない? キャリア20年の設計者が語る家づくりの作法
自分たちに合った家を建てたい。
そう思っても、まずどうすべきか悩むところだろう。不動産屋やハウスメーカー、工務店などに話を聞きにいけばいいのか? しかし、いくつか思い当たるところを見てまわり、なんとなくの印象で設計の依頼先を決め、あとは言われるがまま……となり、失敗してしまう可能性もある。
■マイホーム希望者の多くが、ハウスメーカーの手玉にとられている?
モデルハウスに行くと、「こんな家に住めるんだ」と気分が盛り上がり、設計の知識に乏しい営業マンの話を深く聞いてしまうということがある。
ところが、お客が丸腰でやってくるのをいいことに、彼らはお客の「足元を見る」ようなビジネスを展開している。
21年にわたって民間住宅の設計を手がけてきた鐘撞正也さんは、業界の裏事情について、自著『夢を叶えるデザイン住宅の建て方』(幻冬舎刊)でそう指摘する。
たとえば、住宅展示場を訪れたお客は、「会社の雰囲気」「営業マンの印象」さらには「概算の見積もり」といったふんわりとした理由だけで、家づくりを依頼する先を決めてしまうことが少なくない。しかし、それはハウスメーカーにとっては非常に都合の良いことなのだという。
■「モデルハウスはどこも似た感じ」になる理由
各ハウスメーカーは住宅展示場のモデルハウスにかなりのコストをかけて出展している。そして、「古さ」が出てしまうので平均7年で建て替える。長くは使えないのだ。他にも、出展料(場所代)、モデルハウスで接客する営業マンの人件費などがそれにかかる。
この莫大なコストを回収するには、それだけ売上を伸ばすしかない。ではどうするのか?
著者によれば、どのメーカーも同じような戦略で住宅展示場を設計している。そのため、お客にしてみれば、「どこのメーカーを見に行っても、似たような感じで、選びようがない」となってしまう。
ハウスメーカー側は、そうした心理を重々承知しているため、住宅展示場に来た客をできるだけ長く引き留めるためのマニュアルをあらかじめ用意している。実際、一度つかまれば、2〜3時間にわたって営業トークに付き合わされることは珍しくない。
結果、どうなるか。
同じようなモデルハウスをいくつも見せられ、長時間にわたる営業トークを聞いているうちに客は疲弊し、「もう、ここでいいや」と半ば投げやりに決めてしまうのだ。
■「建て主に充分な情報が提供されない」という問題
ある統計によれば、展示場で見て回る住宅の数は平均2.2社だという。つまり、3社も見ずに決めてしまう客が多いのだ。この数字を見ても、充分な情報を与えられないうちに、客は誘導的に選択をさせられていることが分かる。
鐘撞さんが問題点として指摘するのは、家づくりの主導権がお客にではなく、ハウスメーカーや工務店にあること。
業界のどこを見渡しても、中立的な立場で、価格・品質・工法などについての情報提供をする人がいないために、お客は不利な立場に立たされてしまっているのだ。
そんな状況に風穴をあけてくれるのが、ハウスメーカーにも工務店にも属さない「設計者」だと鐘撞さんは語る。
というのも、そのような設計者であれば、ハウスメーカーや工務店の利益を最優先させる必要がないため、お客のライフスタイルに合った設計案を考え、その案を形にする上で最適な工務店を選びやすいからだ。
文字通りお客のパートナーとして家づくりに取り組む存在としての設計者。それを徹底するとどんな住宅ができあがるのかについては、ぜひ本書の巻末に添えられたデザイン住宅の例で確かめてほしい。
本書を通して重要だと感じるのは、どの選択肢に、どんなメリット・デメリットがあるのかを把握しておくことだ。家を建てたあとに「こんなはずじゃなかった……」となりたくないのなら、住宅業界の裏側を理解するためにも手にとって損のない内容といえるだろう。
(新刊JP編集部)
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■「モデルハウスはどこも似た感じ」になる理由
各ハウスメーカーは住宅展示場のモデルハウスにかなりのコストをかけて出展している。そして、「古さ」が出てしまうので平均7年で建て替える。長くは使えないのだ。他にも、出展料(場所代)、モデルハウスで接客する営業マンの人件費などがそれにかかる。
この莫大なコストを回収するには、それだけ売上を伸ばすしかない。ではどうするのか?
著者によれば、どのメーカーも同じような戦略で住宅展示場を設計している。そのため、お客にしてみれば、「どこのメーカーを見に行っても、似たような感じで、選びようがない」となってしまう。
ハウスメーカー側は、そうした心理を重々承知しているため、住宅展示場に来た客をできるだけ長く引き留めるためのマニュアルをあらかじめ用意している。実際、一度つかまれば、2〜3時間にわたって営業トークに付き合わされることは珍しくない。
結果、どうなるか。
同じようなモデルハウスをいくつも見せられ、長時間にわたる営業トークを聞いているうちに客は疲弊し、「もう、ここでいいや」と半ば投げやりに決めてしまうのだ。
■「建て主に充分な情報が提供されない」という問題
ある統計によれば、展示場で見て回る住宅の数は平均2.2社だという。つまり、3社も見ずに決めてしまう客が多いのだ。この数字を見ても、充分な情報を与えられないうちに、客は誘導的に選択をさせられていることが分かる。
鐘撞さんが問題点として指摘するのは、家づくりの主導権がお客にではなく、ハウスメーカーや工務店にあること。
業界のどこを見渡しても、中立的な立場で、価格・品質・工法などについての情報提供をする人がいないために、お客は不利な立場に立たされてしまっているのだ。
そんな状況に風穴をあけてくれるのが、ハウスメーカーにも工務店にも属さない「設計者」だと鐘撞さんは語る。
というのも、そのような設計者であれば、ハウスメーカーや工務店の利益を最優先させる必要がないため、お客のライフスタイルに合った設計案を考え、その案を形にする上で最適な工務店を選びやすいからだ。
文字通りお客のパートナーとして家づくりに取り組む存在としての設計者。それを徹底するとどんな住宅ができあがるのかについては、ぜひ本書の巻末に添えられたデザイン住宅の例で確かめてほしい。
本書を通して重要だと感じるのは、どの選択肢に、どんなメリット・デメリットがあるのかを把握しておくことだ。家を建てたあとに「こんなはずじゃなかった……」となりたくないのなら、住宅業界の裏側を理解するためにも手にとって損のない内容といえるだろう。
(新刊JP編集部)
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