序盤を完全に制した浦添が苦しみながらも勝利を収めた

 浦添と普天間が、主要大会で対戦するのは、2012年の秋季県大会以来。双子の兄弟(且つ二人とも主将)対決が注目を浴びたが、この試合も、沖縄の高校野球にとって歴史的な1ページとなった。というのもこの夏までの限定とはいえ、沖縄の高校野球界では初となる元プロ野球選手の監督就任があったからだ。4月から普天間の指揮を執る新里 紹也氏(ダイエー、近鉄)の下、意気軒昂と立ち向かう普天間ナインだったがしかし、浦添の力強い野球の前に序盤はなすすべが無かった。

 浦添は1回、先頭の佐川 舜がレフト前ヒットで出塁すると犠打で進めて後、4番・粟国 壮太が逆らわずライトへ運び先制する。3回には、ヒットと相手のフィルダースチョイスなどでチャンスを拡げると、2打席連続となる粟国 壮太のタイムリーと、続く仲地 彪太の2点タイムリー二塁打で3点を刻んだ。なおも浦添は5回、三塁打の佐川 舜を置いて2番・大城 敬がレフト前へ運び1点。その後も押し出し四球と内野ゴロの間に1点ずつを加え、7対0と突き放した。

 投げては先発の仲地 彪太が普天間打線を寄せ付けず、5回を投げて一人の走者も許さないパーフェクトピッチングを披露。これでは新里監督もタクトを揮うことは出来ない。6回・仲地 彪太は、先頭の眞志喜 康克に三塁打を浴びたものの、三振、捕邪飛、二飛と力で後続をへし折り、コールドゲームの感も漂わせた。

終盤見せた粘りが感動を呼ぶ

 ここで得点出来なければ終わりという7回、普天間は相手投手の交代を機に反撃する。知念 辰樹、仲本 貴登の連続ヒットで再び仲地 彪太をマウンドに引きずり出したのだ。その一死後、打球はショートへ。併殺かと思われたが、二塁へ向かう一塁走者と打者走者の気迫が、浦添野手陣を上回る。一塁セーフの間に三塁走者を迎え入れ1点を刻んだ。そして9回、4番・仲里 修弥がヒットとエラーで二塁へ達すると、代打で登場した金城 貴大がレフトを襲うタイムリー二塁打を放って1点を返した。次打者も四球を選ぶ。「まだまだ!」そのような気持ちのこもった野球が観る者を魅了したが、ここまでだった。斜めに差し込む夕陽が、エースの体力を奪い続けていたかのようでもあったが、最後は仲地 彪太が渾身の二者連続三振斬りで締めゲームセット。

 序盤素晴らしい野球を見せた浦添と、終盤見事な粘りを見せた普天間。スコアからでは察することが出来ない、どちらにも拍手を送りたいナイスゲームであった。

(文=當山 雅通)