ついに明日最終回「僕のヒーローアカデミア」長崎監督「近所の陽気なおじさん感をいかに出すか」
「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)の大人気連載をアニメ化した「僕のヒーローアカデミア」も、6月26日(日)の第13話「各々の胸に」でついに最終回。ヒーローの卵たちが学ぶ雄英高校を襲撃した死柄木弔ら敵(ヴィラン)連合と、主人公の緑谷出久やNo.1ヒーロー・オールマイトの戦いも決着!?
そんなクライマックス直前、長崎健司監督インタビューの後編を公開!
(前編はこちら)
──前編では主人公である緑谷出久について伺いましたが、キャスティングに関しても教えてください。出久役に 山下大輝さんを選んだポイントは?
長崎 いくつかオーディション用のサンプル音声をもらって、その中から選ばせていただいたのですが、ちょっと弱腰なところもあるけど、芯もあるところが出久だなと。叫びにしても、ちょっと声が裏返っちゃうようなところも慣れてない感じが出ていて良かったです。あとは、コメディも熱い部分もいける方ということで、山下さんが一番イメージに近くてお願いしました。ご本人も、普段は明るい方ですけど、話してみると熱い部分というか芯もある方で。そのへんの性格もお芝居に出ている感じもしました。
──他のメインキャラクターについても、見せ方やキャスティングのポイントを教えてください。まず、出久の幼なじみの爆豪勝己は?
長崎 爆豪は負けず嫌いなところが良いですよね。口が悪いけど、逆に素直だから、ああいう風に反応するんだろうと個人的には思っています。出久にだけああいう態度を取るやつだと、ただの嫌なやつなんですけど、爆豪は他の生徒相手でも変わらない。その強さみたいなところが率直に出せればと。彼のようなキャラはあまりいないので、個人的にはすごくお気に入りのキャラです。
──たしかに、雄英高校に入った後、爆豪はクラスメイトたちにも乱暴な態度を取るものの、逆に周りにはいじられたりもします。出久だけはまだビビったりしていますが。
長崎 出久は爆豪がどれだけすごいかを知っているので、ある意味、憧れもあるんですよね。だから超えたい。その関係が良いなと思います。
──岡本信彦さんをキャスティングしたポイントは?
長崎 セリフの内容が内容なので、あのセリフが良い意味でキャラの魅力になる形で演じてもらえる人、力強さがありつつもみみっちさもある感じ、ということで岡本さんにお願いしました。キャスティングでは、爆豪が一番時間かかったかもしれないですね。
──オールマイトに関しては、No.1ヒーローの強さを見せたいというお話がありましたが、他にもポイントはありますか?
長崎 近所の陽気なおじさん感をいかに出すかですね(笑)。あの人が出てくると、途端に華やかになるというかテンションが上がる。そこが上がれば上がるほど、シリアスになったときにカッコ良さが出てくるので、その振り幅の広さをできるだけ出したいと考えています。ある意味、この原作を象徴しているようなキャラクターなので。あと、絵柄的なことで言えば、オールマイトって原作では、セリフを言ってる時も閉じ口の笑顔しかないので、堀越先生に「口パクをしていいですか」って聞きました(笑)。描いてみると、いろいろと疑問とかが出てくるんですよ。
──原作の堀越先生とは、他にどのようなやりとりを?
長崎 主に絵的な部分ですね。例えば、原作であまり出てこない生徒のヒーローコスチュームのデザインについて質問すると、ラフを描いてくださったりとか、すごく協力的な形でアニメにも関わってくださっています。あとは、能力的にどのくらいのことまでできるのかといった助言を頂いたり。そういった設定的な部分は、先生にしか分からないので。
──オールマイト役の三宅健太さんについてもキャスティングのポイントを教えてください。
長崎 (筋肉ムキムキの)マッスルフォームと、(ガリガリに痩せた)トゥルーフォームの両方を演じられる人。そして、さっきもお話しした英雄としての力強さと、近所のおじさんの愛嬌ある感じの2つの要素を両立できる人ということです。すごくカッコ良いんだけど、ヒーロー過ぎて距離感を感じる人もいるので。オールマイトに関しては、サンプルだけじゃなくて、実際にスタジオに来てもらってテストもしています。そこで一番イメージにぴったりなのが三宅さんでした。
──三宅さんの声自体がそうなのか、お芝居の力か、近所のおじさんな空気はたしかに感じます。
長崎 近所のおじさん感は三宅さんの性格でしょう。ご本人の人柄がにじみ出てる気がします(笑)。
──ヒロインである麗日お茶子の見せ方で意識していることを教えてください。
長崎 素朴で可愛く、朗らかな感じですね。お茶子は、単にぽわぽわしているというよりは、誰に対してもフラットで素な感じの女の子だから、普通に毒も出しちゃう。そこが魅力なんだと思います。お茶子って原作にある絵は描きやすいけど、そうじゃない絵になると、ほんわかした感じのニュアンスが変わってしまうこともあって。特に最初の頃は、(キャラクターデザイン&総作画監督の)馬越さんもかなり気を使って、修正を入れてくれていました。
──佐倉綾音さんを起用したポイントは?
長崎 お茶子のほんわかしているイメージでありつつも、素直な故に毒みたいにも聞こえるセリフを嫌な感じではなく言える人。あと、これは原作で後々出てくるんですけど、ヒーローになりたい理由は、しっかりと持ってるんですよね。そういう柔らかいだけではない、いざという時には地に足がついてるというか、芯のある部分を併せもっている感じの人として佐倉さんが一番ピッタリでした。
──真面目なクラス委員長の飯田天哉のポイントは?
長崎 真面目すぎて、バカっぽく見えちゃう面白いキャラクター。個人的に、すごく好きですね。真面目を突き抜けた感じや、動きがロボットみたいにカチャカチャしているところは、最初の方から意識的に描いています。(第5話で)出久が初めて教室に来た時、飯田が出久の方に近づいていくんですけど。競歩みたいに歩かせたんですよ。アニメーターさんにも「なんで競歩なんですか?」と聞かれたのですが、飯田は入試で出久にしてやられたと思っているから、早く出久と話したいんです。でも真面目だから、教室では走っちゃダメだと思っているし、ついつい競歩みたいにして歩くんじゃないかなって(笑)。そういう形でも面白さを出せればと思いました。
──飯田役の石川界人さんも、イメージにぴったりですね。
長崎 何人か候補を挙げていただきましたが、オーディションのボイスって、普通は「●●事務所 ●●です。飯田天哉をやります」とか言ってからお芝居するんですけど。石川さんは、最初からハイテンションで。「(叫びながら)プロ・フィット所属! 石川界人! 飯田天哉やります!」って感じなんです(笑)。前に他の作品でも石川さんのサンプルを聴いたことあるんですけど、その時も同じ感じだったんですよね。役柄は全然違ったキャラでも、その真剣で気合いが入っていて、良い意味で空回ってる感じがすごく飯田っぽいなって(笑)。声質も合っていたので、石川さんのサンプルを聴いて、すぐに僕の中では良いなと思いました。
──オープニングとエンディングの音楽や映像も、作品と同じくヒーロー物の王道感があります。オープニングの絵コンテは、伍柏論さんとの連名、エンディングの絵コンテは迫井政行さんとの連名になっていますね。
長崎 オープニングは僕が絵コンテを描いているのですが、時間が無くてラフな絵しか描けなかったので、清書をしてもらった形です。エンディングは迫井さんにコンテをお願いしていて。僕の方で、ブラッシュアップさせてもらいました。
──オープニングは、ポルノグラフィティの「THE DAY」です。曲の印象や映像のイメージについて教えてください。
長崎 作品自体が出久とオールマイトの師弟の関係の話なので、そこを入れつつ、生徒の様子や、先生たちのアクション、敵とかを立てていきたいという映像のイメージは最初からありました。後は、こんな感じでというイメージをポルノさんにお伝えしました。それで上がって来た楽曲に対して、映像の方を推敲していった感じでしたね。最初、候補として、全然違うテイストの曲を2曲頂いたんです。こちらで選ばせてもらえるなんて、贅沢で驚きました(笑)。どっちの曲もすごく良かったんですけど、ドライブ感という点で、今の曲の方を選ばせてもらいました。この曲の方が、僕の考えていた絵のイメージに近かったということもあって。それから歌詞を書いてもらってる形なので、かなり原作のニュアンスに寄せてもらっていると思います。
──エンディングは、Brian the Sunの「HEROES」です。絵コンテの段階で、どのあたりに修正を加えたのですか?
長崎 最初、コンテをオーダーしたときは、現在進行形の出久の気持ちみたいものを見せたいとお願いしていたんです。クラスメイトたちの日常生活的な感じも見せたりとか。でも、Brian the Sunさんの歌を何回も聴いていくうちに、さっき話したデクの想いの強さというか、真っ直ぐさ具合を考えると、映像も本当にストレートな感じが良いかなと思い始めたんです。それで、ポイントポイントに迫井さんに描いてもらった止め絵的な絵を使わせてもらいつつ、出久が必死に駆けていくという絵にしました。憧れの星を追いかけて行くみたいな。オールマイトみたいなヒーローになれるよう努力することは、作品のテーマでもあるので。
──出久は時に泣きながらも、ただ必死にオールマイトという星を追いかけているわけですね。
長崎 努力すればするほど成長し新しく世界を照らす太陽が昇ってくるけど、その反面、星は消えていくという……。オールマイトとデクの関係ですね。見る人によっては、そんなに走らなくて良いんじゃないかって思うだろうけど。本人が追いかけたいんだから仕方がない。
──出久の人生は、オールマイトから「個性」を受け継がなかった方が平穏ではあったでしょうね。
長崎 でも、本人がそれを望んでいるからなあ……。それも資質の1つなんだよってことになるんでしょうね。出久にとってのターニングポイントっていくつかありますが、(第1話で)助けてもらった後、飛び去っていこうとしたオールマイトの足に必死にしがみついたところがすごく好きです。あそこで何もせず見送っていたら、そこで終わりだったわけで。ダサくても無様でも、しがみついていく感じも出久の良いところですよね。恥ずかしいからとか、カッコ悪いからとか言わない。好きな子に告白するか否かみたいな話ですよね。まずは、告白しなきゃ始まらないじゃんっていう(笑)。
──フラれると分っていても、とにかくアタックはしていくみたいな?
長崎 そうそう。たとえ無様だったとしても、そこまで言うんだったらって、お情けでつきあってもらえるかもしれないじゃないですか(笑)。出久以外にも、オールマイトに憧れている人はたくさんいるし、オールマイトに出会えた人もたくさんいるはず。でも、そのときに、あそこまで食らいついていった人はいなかったんじゃないかな。そんな泥臭いところも出久の良いところだと思います。
──いよいよ放送される最終話の見どころを教えてください。
長崎 出久とオールマイトの物語として始まっている作品なので、そこに収束していくというのはあるんですけど。生徒たちの新たな決意や、敵である死柄木の思惑なども見どころかなと思います。
──ヒーロー物ということで、敵側のキャラクターも魅力的に描こうという意識はあるのですか?
長崎 すごくありますね。特に死柄木はキャラクターも立っているし、個人的に気になるキャラクターでもあるので。作画的には大変なんですけどね(笑)。死柄木役の内山(昂輝)さんには、楽しそうに無邪気な子供みたいな感じでお願いしますと伝えたのですが、超ハマっていて。上手いですよね〜。毎週、アフレコが楽しかったです(笑)。声も含めて、死柄木の怪しい感じがさらに膨らんできた気がします。
──最後に、まだ最終話の制作中ではありますが、この「僕のヒーローアカデミア」という作品は、長崎監督にとって、どんな作品になりましたか?
長崎 僕が子供の頃に観ていたような真っ直ぐで熱いアニメを作ることができて、すごく嬉しいですね。ここまでストレートなアニメって、今はなかなか無いイメージなので。そういう作品に関わることができたのは、自分にとってすごくプラスになりました。作っていて、大変ではあるけれど楽しいですから。良い作品に出会えたなと思います。
(丸本大輔)
<商品情報>
僕のヒーローアカデミア
Blu-ray &DVD Vol.1 初回生産限定版
2016年6月29日(水)発売
【Blu-ray】
価格:¥6,800+税
収録話:第1話・第2話・第3話
本編72分+映像特典/カラー/1080p High Definition/16:9ワイドスクリーン/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/1層(BD25G)
【DVD】
価格:¥5,800+税
収録話:第1話・第2話・第3話
本編72分+映像特典/カラー/16:9LB/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/片面2層
そんなクライマックス直前、長崎健司監督インタビューの後編を公開!
(前編はこちら)
乱暴なセリフも爆豪の持ち味にしたかった
──前編では主人公である緑谷出久について伺いましたが、キャスティングに関しても教えてください。出久役に 山下大輝さんを選んだポイントは?
長崎 いくつかオーディション用のサンプル音声をもらって、その中から選ばせていただいたのですが、ちょっと弱腰なところもあるけど、芯もあるところが出久だなと。叫びにしても、ちょっと声が裏返っちゃうようなところも慣れてない感じが出ていて良かったです。あとは、コメディも熱い部分もいける方ということで、山下さんが一番イメージに近くてお願いしました。ご本人も、普段は明るい方ですけど、話してみると熱い部分というか芯もある方で。そのへんの性格もお芝居に出ている感じもしました。
──他のメインキャラクターについても、見せ方やキャスティングのポイントを教えてください。まず、出久の幼なじみの爆豪勝己は?
長崎 爆豪は負けず嫌いなところが良いですよね。口が悪いけど、逆に素直だから、ああいう風に反応するんだろうと個人的には思っています。出久にだけああいう態度を取るやつだと、ただの嫌なやつなんですけど、爆豪は他の生徒相手でも変わらない。その強さみたいなところが率直に出せればと。彼のようなキャラはあまりいないので、個人的にはすごくお気に入りのキャラです。
──たしかに、雄英高校に入った後、爆豪はクラスメイトたちにも乱暴な態度を取るものの、逆に周りにはいじられたりもします。出久だけはまだビビったりしていますが。
長崎 出久は爆豪がどれだけすごいかを知っているので、ある意味、憧れもあるんですよね。だから超えたい。その関係が良いなと思います。
──岡本信彦さんをキャスティングしたポイントは?
長崎 セリフの内容が内容なので、あのセリフが良い意味でキャラの魅力になる形で演じてもらえる人、力強さがありつつもみみっちさもある感じ、ということで岡本さんにお願いしました。キャスティングでは、爆豪が一番時間かかったかもしれないですね。
オールマイトの近所の陽気なおじさん感
──オールマイトに関しては、No.1ヒーローの強さを見せたいというお話がありましたが、他にもポイントはありますか?
長崎 近所の陽気なおじさん感をいかに出すかですね(笑)。あの人が出てくると、途端に華やかになるというかテンションが上がる。そこが上がれば上がるほど、シリアスになったときにカッコ良さが出てくるので、その振り幅の広さをできるだけ出したいと考えています。ある意味、この原作を象徴しているようなキャラクターなので。あと、絵柄的なことで言えば、オールマイトって原作では、セリフを言ってる時も閉じ口の笑顔しかないので、堀越先生に「口パクをしていいですか」って聞きました(笑)。描いてみると、いろいろと疑問とかが出てくるんですよ。
──原作の堀越先生とは、他にどのようなやりとりを?
長崎 主に絵的な部分ですね。例えば、原作であまり出てこない生徒のヒーローコスチュームのデザインについて質問すると、ラフを描いてくださったりとか、すごく協力的な形でアニメにも関わってくださっています。あとは、能力的にどのくらいのことまでできるのかといった助言を頂いたり。そういった設定的な部分は、先生にしか分からないので。
──オールマイト役の三宅健太さんについてもキャスティングのポイントを教えてください。
長崎 (筋肉ムキムキの)マッスルフォームと、(ガリガリに痩せた)トゥルーフォームの両方を演じられる人。そして、さっきもお話しした英雄としての力強さと、近所のおじさんの愛嬌ある感じの2つの要素を両立できる人ということです。すごくカッコ良いんだけど、ヒーロー過ぎて距離感を感じる人もいるので。オールマイトに関しては、サンプルだけじゃなくて、実際にスタジオに来てもらってテストもしています。そこで一番イメージにぴったりなのが三宅さんでした。
──三宅さんの声自体がそうなのか、お芝居の力か、近所のおじさんな空気はたしかに感じます。
長崎 近所のおじさん感は三宅さんの性格でしょう。ご本人の人柄がにじみ出てる気がします(笑)。
飯田は真面目さが突き抜けてバカっぽく見える
──ヒロインである麗日お茶子の見せ方で意識していることを教えてください。
長崎 素朴で可愛く、朗らかな感じですね。お茶子は、単にぽわぽわしているというよりは、誰に対してもフラットで素な感じの女の子だから、普通に毒も出しちゃう。そこが魅力なんだと思います。お茶子って原作にある絵は描きやすいけど、そうじゃない絵になると、ほんわかした感じのニュアンスが変わってしまうこともあって。特に最初の頃は、(キャラクターデザイン&総作画監督の)馬越さんもかなり気を使って、修正を入れてくれていました。
──佐倉綾音さんを起用したポイントは?
長崎 お茶子のほんわかしているイメージでありつつも、素直な故に毒みたいにも聞こえるセリフを嫌な感じではなく言える人。あと、これは原作で後々出てくるんですけど、ヒーローになりたい理由は、しっかりと持ってるんですよね。そういう柔らかいだけではない、いざという時には地に足がついてるというか、芯のある部分を併せもっている感じの人として佐倉さんが一番ピッタリでした。
──真面目なクラス委員長の飯田天哉のポイントは?
長崎 真面目すぎて、バカっぽく見えちゃう面白いキャラクター。個人的に、すごく好きですね。真面目を突き抜けた感じや、動きがロボットみたいにカチャカチャしているところは、最初の方から意識的に描いています。(第5話で)出久が初めて教室に来た時、飯田が出久の方に近づいていくんですけど。競歩みたいに歩かせたんですよ。アニメーターさんにも「なんで競歩なんですか?」と聞かれたのですが、飯田は入試で出久にしてやられたと思っているから、早く出久と話したいんです。でも真面目だから、教室では走っちゃダメだと思っているし、ついつい競歩みたいにして歩くんじゃないかなって(笑)。そういう形でも面白さを出せればと思いました。
──飯田役の石川界人さんも、イメージにぴったりですね。
長崎 何人か候補を挙げていただきましたが、オーディションのボイスって、普通は「●●事務所 ●●です。飯田天哉をやります」とか言ってからお芝居するんですけど。石川さんは、最初からハイテンションで。「(叫びながら)プロ・フィット所属! 石川界人! 飯田天哉やります!」って感じなんです(笑)。前に他の作品でも石川さんのサンプルを聴いたことあるんですけど、その時も同じ感じだったんですよね。役柄は全然違ったキャラでも、その真剣で気合いが入っていて、良い意味で空回ってる感じがすごく飯田っぽいなって(笑)。声質も合っていたので、石川さんのサンプルを聴いて、すぐに僕の中では良いなと思いました。
全然違うテイストの2曲から選んだオープニング
──オープニングとエンディングの音楽や映像も、作品と同じくヒーロー物の王道感があります。オープニングの絵コンテは、伍柏論さんとの連名、エンディングの絵コンテは迫井政行さんとの連名になっていますね。
長崎 オープニングは僕が絵コンテを描いているのですが、時間が無くてラフな絵しか描けなかったので、清書をしてもらった形です。エンディングは迫井さんにコンテをお願いしていて。僕の方で、ブラッシュアップさせてもらいました。
──オープニングは、ポルノグラフィティの「THE DAY」です。曲の印象や映像のイメージについて教えてください。
長崎 作品自体が出久とオールマイトの師弟の関係の話なので、そこを入れつつ、生徒の様子や、先生たちのアクション、敵とかを立てていきたいという映像のイメージは最初からありました。後は、こんな感じでというイメージをポルノさんにお伝えしました。それで上がって来た楽曲に対して、映像の方を推敲していった感じでしたね。最初、候補として、全然違うテイストの曲を2曲頂いたんです。こちらで選ばせてもらえるなんて、贅沢で驚きました(笑)。どっちの曲もすごく良かったんですけど、ドライブ感という点で、今の曲の方を選ばせてもらいました。この曲の方が、僕の考えていた絵のイメージに近かったということもあって。それから歌詞を書いてもらってる形なので、かなり原作のニュアンスに寄せてもらっていると思います。
──エンディングは、Brian the Sunの「HEROES」です。絵コンテの段階で、どのあたりに修正を加えたのですか?
長崎 最初、コンテをオーダーしたときは、現在進行形の出久の気持ちみたいものを見せたいとお願いしていたんです。クラスメイトたちの日常生活的な感じも見せたりとか。でも、Brian the Sunさんの歌を何回も聴いていくうちに、さっき話したデクの想いの強さというか、真っ直ぐさ具合を考えると、映像も本当にストレートな感じが良いかなと思い始めたんです。それで、ポイントポイントに迫井さんに描いてもらった止め絵的な絵を使わせてもらいつつ、出久が必死に駆けていくという絵にしました。憧れの星を追いかけて行くみたいな。オールマイトみたいなヒーローになれるよう努力することは、作品のテーマでもあるので。
──出久は時に泣きながらも、ただ必死にオールマイトという星を追いかけているわけですね。
長崎 努力すればするほど成長し新しく世界を照らす太陽が昇ってくるけど、その反面、星は消えていくという……。オールマイトとデクの関係ですね。見る人によっては、そんなに走らなくて良いんじゃないかって思うだろうけど。本人が追いかけたいんだから仕方がない。
──出久の人生は、オールマイトから「個性」を受け継がなかった方が平穏ではあったでしょうね。
長崎 でも、本人がそれを望んでいるからなあ……。それも資質の1つなんだよってことになるんでしょうね。出久にとってのターニングポイントっていくつかありますが、(第1話で)助けてもらった後、飛び去っていこうとしたオールマイトの足に必死にしがみついたところがすごく好きです。あそこで何もせず見送っていたら、そこで終わりだったわけで。ダサくても無様でも、しがみついていく感じも出久の良いところですよね。恥ずかしいからとか、カッコ悪いからとか言わない。好きな子に告白するか否かみたいな話ですよね。まずは、告白しなきゃ始まらないじゃんっていう(笑)。
──フラれると分っていても、とにかくアタックはしていくみたいな?
長崎 そうそう。たとえ無様だったとしても、そこまで言うんだったらって、お情けでつきあってもらえるかもしれないじゃないですか(笑)。出久以外にも、オールマイトに憧れている人はたくさんいるし、オールマイトに出会えた人もたくさんいるはず。でも、そのときに、あそこまで食らいついていった人はいなかったんじゃないかな。そんな泥臭いところも出久の良いところだと思います。
この作品に出会えたことは自分にとってプラス
──いよいよ放送される最終話の見どころを教えてください。
長崎 出久とオールマイトの物語として始まっている作品なので、そこに収束していくというのはあるんですけど。生徒たちの新たな決意や、敵である死柄木の思惑なども見どころかなと思います。
──ヒーロー物ということで、敵側のキャラクターも魅力的に描こうという意識はあるのですか?
長崎 すごくありますね。特に死柄木はキャラクターも立っているし、個人的に気になるキャラクターでもあるので。作画的には大変なんですけどね(笑)。死柄木役の内山(昂輝)さんには、楽しそうに無邪気な子供みたいな感じでお願いしますと伝えたのですが、超ハマっていて。上手いですよね〜。毎週、アフレコが楽しかったです(笑)。声も含めて、死柄木の怪しい感じがさらに膨らんできた気がします。
──最後に、まだ最終話の制作中ではありますが、この「僕のヒーローアカデミア」という作品は、長崎監督にとって、どんな作品になりましたか?
長崎 僕が子供の頃に観ていたような真っ直ぐで熱いアニメを作ることができて、すごく嬉しいですね。ここまでストレートなアニメって、今はなかなか無いイメージなので。そういう作品に関わることができたのは、自分にとってすごくプラスになりました。作っていて、大変ではあるけれど楽しいですから。良い作品に出会えたなと思います。
(丸本大輔)
<商品情報>
僕のヒーローアカデミア
Blu-ray &DVD Vol.1 初回生産限定版
2016年6月29日(水)発売
【Blu-ray】
価格:¥6,800+税
収録話:第1話・第2話・第3話
本編72分+映像特典/カラー/1080p High Definition/16:9ワイドスクリーン/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/1層(BD25G)
【DVD】
価格:¥5,800+税
収録話:第1話・第2話・第3話
本編72分+映像特典/カラー/16:9LB/日本語リニアPCM 2.0ch ステレオ/片面2層