「聖飢魔IIカルトQ」の始まりです。デーモン閣下へのブルボン小林の愛がとまらない
イベント後なのに、熱心さにほだされたか、居残ってくださった閣下に、長年聞きたかったことにだんだんと迫っていこうとするのだが。さてさて。
第1回 第2回 第3回
──僕が、閣下の歌詞がすごいって思ってる中の1つに……あ、閣下はそんなつもりじゃないと否定されるかもしれないですが、あくまでも僕が勝手に感じた感じ方で。自分たちを取り巻く、特に音楽的な状況に対してのルサンチマンとか、逆に誇りとか、矜持のようなものを、割と隠さずに歌詞に取り入れてる、そう僕は感じてまして。
閣下 たとえばどんなやつですかね?
──ルサンチマンを「嫉妬」と訳してしまうと浅い話になるけれども、自分の状況のもどかしさとか、世間で無闇に評価されているものに対しての疑義の気持ち、それを持っていないふりをせず、口に出していうことを、僕は大事なことだと思ってて。聖飢魔IIの年代順に言うと『JOKER〜非力河童人間〜』から。
(補足・『JOKER〜非力河童人間〜』=「髪の毛さかだてて気取る」当時のビジュアル系を揶揄し、「お決まりのパッション」で「愛の歌」を歌う者をあげつらった曲。魔暦前9(’90)年の小教典『BAD AGAIN』のカップリング)。
閣下 (笑)ほう。
──ちょうどバンドブームで、ビジュアル系といわれるバンドもどんどん出始めて、いかにもこわもてな風貌なのに安直なラブソングを歌ってやがる、みたいな歌詞になってるわけですよ。
閣下 ほう、そういうふうに聞こえるわけですよね?
──そうですそうです、僕には。
閣下 へえー。
──(やはり、とぼけられるなあと思いつつ)バンドブームが終わった時代になると『WHO KILLS DEMON?』誰が悪魔を亡き者にするのかと歌う。DEMONというのがデーモン閣下のデーモンでもあると思ったときに、自分が消されようとしているという歌にも当然、聞こえる。『PAINT ME BLACK』という曲も同じ大教典に入ってて。ストーンズの曲(『PAINT IT BLACK』)と違って「自分を」黒く塗ってくれ! と。
閣下 (興味深そうに聞く姿勢)
──受け手は勝手に感情移入して聞く中で、私小説的なことも思うわけですよ。いろんな思いで曲を作ってるだろうから……僕もいろいろ創作をするので、そんな単純でないと分かっていつつ、そうはいっても、心境も絶対に入ると思うんですよ。その次に『ASS HOLE!』という曲があってですね、「歴史の一コマから葬り去られた」世間は俺をアスホールと罵ってくるという歌です。でも、そこで閣下が「稀代のドンキホーテ」と歌ったことに、僕はとても感動したんです。
(補足・『WHO KILLS DEMON?』『PAINT ME BLACK』は魔暦前3(’96)年の大教典『メフィストフェレスの肖像』に、『ASS HOLE!』は同年末の小教典『悪魔のメリークリスマス青春編』に収録。)
閣下 ほう。
──世間からみたらドンキホーテのような不自由な活動って思われてるだろうけど、でもそれをやるんだってことを、この曲の中で宣言したな、と。
閣下 『ASS HOLE!』で感動した。初めてそういう人にあったな。(笑)
一同:(笑)
(補足・この次に『無冠の帝王』という題名の曲もあって、魔暦12(’2010)年に刊行された聖飢魔IIのムック本の題名にもなっている。バンド25周年を記念する本の題に冠するというのは、やはり、かなり自覚的に「無冠」「帝王」両方の意識があっただろうと推察されるが、これも質問に入れそびれてしまった)。
──で、魔暦元(’99)年の解散のときの極悪集大成盤の中に『敗れざる者たち』って題を。僕の勝手な解釈ではあるけれども、敗れざる者たちってご自身のことを歌にされたと感じたとき、グっときたんです。そういう気持ちっていうのは皆、照れて言わないような気がするんですよ。
閣下 (笑)まあ、同じ年に発布の『解散前最後の』大教典のタイトルで『LIVING LEGEND』(実存する伝説)と自称しているくらいな連中だからね。
──ルサンチマンを隠さないのは、テレビ番組とかでも閣下はあえてそうしている気がします。「ミュージックステーション」でね、ちょうどそのときKANの『愛は勝つ』がすごいヒットしてて。パフォーマンスではあると思うんだけれども、「愛は勝つだなんて」と、はっきりKANさんの前で閣下が仰って。「必ず最後に愛は勝つ 本当に?」。
閣下 声に出して言った?
──番組内のアンケートに答えたんですよ、「こういう奴はダメだみたいな、どういう人をダメだと思いますか?」みたいなアンケートで、閣下の答えが「必ず最後に愛が勝つと思ってる奴」。
閣下 (侍従の方を向いて)言ったの? KANの前で? (笑)
侍従 覚えてる覚えてる。
閣下 (怪訝そうに)へえ。
──僕は、チャレンジングなことに見えたんですよ。テレビの前のティーンエイジたちはハラハラしたと思うんですね。剣呑な話じゃないですか。「KANさんはKANさんですごいですね」みたいに言ってれば無難に済むことを、わりと正直に言ったみたいなね。そういうことを詩の中でも僕は勝手にね、感じ取ることができた。ネガティブに自分自身のことを黒く消してっていうようなことも含めて。稀代のドンキホーテと歌って最後は「敗れざる者」だって。……と、ここまで質問というより、僕の思ってたことを熱く語ってるだけになってますけども。
閣下 (笑)そうだね、2〜300人客を入れてシンポジウムみたいにやるといいよね。
──僕の思いの丈を述べて。
閣下 「皆さんで同感する人!」って。(笑)
──こうして質問をしても、煙に巻かれるかもしれないですけど。僕が感じ取ったこと、私小説的に音楽業界での浮沈みたいなことへの思いというのを詞に入れてる面も、やはりあるんじゃないですか?
閣下 まあそれはそうでしょうね。なにも思ってもないことは書かないわけで、膨らましたりはしてるだろうけど。
──閣下の作詞には、これも「たまたまです」って言われたらそれまでなんですけど。
閣下 あ、それはたまたまだわ。(笑)
一同 (笑)
──もう心を読まれてる。(笑)。
──閣下の詞には、戦場が多く登場します。
閣下 ほうほう。
──最初それは、閣下が悪魔だからだろうと思ったんです。悪魔が人間のことを歌うときに戦争が一番愚かな、滑稽な振る舞いってことでモチーフになりやすいので、当然のことかなと思ったんだけれども、何か生々しい。『殺しの現場!!』という曲で「戦場でやるかやられるか」を歌って。『CRIMSON RED』では弾薬背負い込んだ異国の戦場を。『悪魔のメリークリスマス(完結編)』では、日本人は甘い恋愛に興じてるけれども今も異国は戦場であると。それから直接的に戦場と銘打たれてないけれども『HEAVYMETAL IS DEAD』でも「殺せ殺せ、戦争は人殺し」と。
閣下 ああ、3番だね。
──『正義のために』という歌にも戦場を感じる。『いざ戦場へ』と題名にも戦場が出てくるソロ名義の作品もある。僕はそこで描かれる戦場に関する歌詞は、もちろん悪魔として、人間はなんて愚かなんだということを伝えるためのこととしても選ばれているのだろうけど、こんなにまでディティールがあるっていうのは、閣下の心の中の風景に常に戦場があるんじゃないか。風刺してやれとかってことと別に、常に戦場のことを景色のように思ってるように思うんですよね。妙に詞がスッと出てきてる感じがあんですけど、どうでしょう?
閣下 今例に挙げられたいくつかの曲のうちの、その確かに本物の戦争という場面を描いてるものもあるけれども、比喩として人の生き様とか営みというのは日々戦いの連続でしょ? って言うことを戦場という場面に描いている……
──社会、実社会だとしても。
閣下 ええ。そのように置き換えてるものも結構、半分はあるんじゃないのかなという気はするけどね。
──なるほど。じゃあなんとなく目を閉じると気持ちの上で戦場っていうものが常に浮かぶってことでは特にない?
閣下 別に風景として戦場が浮かぶというわけではないけれども。まあやっぱり音楽、エンターテイメントの活動もさることながら、非常にいろいろなことをやってるのでね。日々の生活は本当に戦のようなもので。戦うという闘争心をもって生きていかないと乗り越えられないような場面がたくさんあるから、まあたぶん比喩として使いやすいんだろうね。
──なるほど。確かに「戦う」という言葉まで広げたらさらに増えますね。
閣下 だから『いざ戦場へ!』みたいな曲っていうのは全然戦争の現場ではなく、どちらかというと、これからステージに出て行くときの歌を歌った歌なんだけれども。
──なるほど。僕の深読みだったかもしれません。聖飢魔IIというバンドにしろ、デーモン閣下のソロ活動にしろ、もちろん悪魔だから、ネガティブな「死ね」とか「殺せ」というような、様式美としての残酷さを突き詰めてる曲は多数あって、そっちの方が(『蝋人形の館』のように世間には)有名です。でも、その一方で実はポジティブな、生まれてきたことの幸運をすごい大事にしようと、生きることの意義を問いかける歌がすごく多いですよね。
(補足。頻出する「戦場」モチーフも、そのことが浮き彫りになると思えると結びつけたかったのだが、ここではとっさに言及できず)
閣下 すごく多い。……なんか、クイズ出されてるみたいだね。(笑)
一同:(笑)
閣下 「生まれてきたという喜びを彷彿させる曲、それはなんでしょう?」と。
──さすがに聖飢魔IIだけで160何曲ですから、すぐ「あれね」とは……
(補足・「幸運を大事にすることを歌った」曲と、「生きることの意義を問いかける」曲とを分けて尋ねればよかったのだったが、失敗した)
閣下 『地獄の皇太子』がそうだよね。
──あ、たしかにあれも「生まれて」る!(全然、その曲のつもりではなくて動揺する)。
閣下 あれはまさに生命の誕生のシーンだよね。
──「豚の胃で作られた子宮の中に悪魔の国の王子が」ね。(笑)
(補足・『地獄の皇太子』は聖飢魔IIの第1大教典(ファーストアルバム的な作品)に収録された人気曲で、様式美的な、つまり、とても地獄的な内容)
閣下 聖飢魔IIカルトQ。
──いや(焦りながら)あの『嵐の予感』とかですね。「君は何をやりとげるために生まれてきたのか」と問いかけてます。それから『AGE OF ZERO!』という曲でも、幸福になるために生まれてきたと。閣下には、生まれるってことの幸運をまず思い、だから漫然と生きることを良しとしてない価値観がある。生まれてきたならなにをやり遂げるんだってことを問いかけて。今回の新曲(『GOBLIN'S SCALE』)でも「100年後1000年後に何を残せるのか」と歌詞にある。生きてきたからには何かを残さなきゃいけない。そういったことが、やはり多い。すぐにぱっと出せないくらいに。
閣下 『GOBLIN'S SCALE』をもう聞いたんですか?
──あれもかっこいい曲で。悪魔的な破壊の曲もたくさんあるけども。実は全体を通して聞いたときは常にポジティブなものを手渡されると思うんですよ。
閣下 どちらかというとね。
──それで……やっぱり僕ばかり喋ってますね。
アライ 想いが熱いんですね本当に。
──そうなんだよ。
その5に続く!
(ブルボン小林)
聖飢魔II オフィシャルWEBサイト
第1回 第2回 第3回
初めてそういう人にあったな
──僕が、閣下の歌詞がすごいって思ってる中の1つに……あ、閣下はそんなつもりじゃないと否定されるかもしれないですが、あくまでも僕が勝手に感じた感じ方で。自分たちを取り巻く、特に音楽的な状況に対してのルサンチマンとか、逆に誇りとか、矜持のようなものを、割と隠さずに歌詞に取り入れてる、そう僕は感じてまして。
──ルサンチマンを「嫉妬」と訳してしまうと浅い話になるけれども、自分の状況のもどかしさとか、世間で無闇に評価されているものに対しての疑義の気持ち、それを持っていないふりをせず、口に出していうことを、僕は大事なことだと思ってて。聖飢魔IIの年代順に言うと『JOKER〜非力河童人間〜』から。
(補足・『JOKER〜非力河童人間〜』=「髪の毛さかだてて気取る」当時のビジュアル系を揶揄し、「お決まりのパッション」で「愛の歌」を歌う者をあげつらった曲。魔暦前9(’90)年の小教典『BAD AGAIN』のカップリング)。
閣下 (笑)ほう。
──ちょうどバンドブームで、ビジュアル系といわれるバンドもどんどん出始めて、いかにもこわもてな風貌なのに安直なラブソングを歌ってやがる、みたいな歌詞になってるわけですよ。
閣下 ほう、そういうふうに聞こえるわけですよね?
──そうですそうです、僕には。
閣下 へえー。
──(やはり、とぼけられるなあと思いつつ)バンドブームが終わった時代になると『WHO KILLS DEMON?』誰が悪魔を亡き者にするのかと歌う。DEMONというのがデーモン閣下のデーモンでもあると思ったときに、自分が消されようとしているという歌にも当然、聞こえる。『PAINT ME BLACK』という曲も同じ大教典に入ってて。ストーンズの曲(『PAINT IT BLACK』)と違って「自分を」黒く塗ってくれ! と。
閣下 (興味深そうに聞く姿勢)
──受け手は勝手に感情移入して聞く中で、私小説的なことも思うわけですよ。いろんな思いで曲を作ってるだろうから……僕もいろいろ創作をするので、そんな単純でないと分かっていつつ、そうはいっても、心境も絶対に入ると思うんですよ。その次に『ASS HOLE!』という曲があってですね、「歴史の一コマから葬り去られた」世間は俺をアスホールと罵ってくるという歌です。でも、そこで閣下が「稀代のドンキホーテ」と歌ったことに、僕はとても感動したんです。
(補足・『WHO KILLS DEMON?』『PAINT ME BLACK』は魔暦前3(’96)年の大教典『メフィストフェレスの肖像』に、『ASS HOLE!』は同年末の小教典『悪魔のメリークリスマス青春編』に収録。)
閣下 ほう。
──世間からみたらドンキホーテのような不自由な活動って思われてるだろうけど、でもそれをやるんだってことを、この曲の中で宣言したな、と。
閣下 『ASS HOLE!』で感動した。初めてそういう人にあったな。(笑)
一同:(笑)
(補足・この次に『無冠の帝王』という題名の曲もあって、魔暦12(’2010)年に刊行された聖飢魔IIのムック本の題名にもなっている。バンド25周年を記念する本の題に冠するというのは、やはり、かなり自覚的に「無冠」「帝王」両方の意識があっただろうと推察されるが、これも質問に入れそびれてしまった)。
──で、魔暦元(’99)年の解散のときの極悪集大成盤の中に『敗れざる者たち』って題を。僕の勝手な解釈ではあるけれども、敗れざる者たちってご自身のことを歌にされたと感じたとき、グっときたんです。そういう気持ちっていうのは皆、照れて言わないような気がするんですよ。
閣下 (笑)まあ、同じ年に発布の『解散前最後の』大教典のタイトルで『LIVING LEGEND』(実存する伝説)と自称しているくらいな連中だからね。
──ルサンチマンを隠さないのは、テレビ番組とかでも閣下はあえてそうしている気がします。「ミュージックステーション」でね、ちょうどそのときKANの『愛は勝つ』がすごいヒットしてて。パフォーマンスではあると思うんだけれども、「愛は勝つだなんて」と、はっきりKANさんの前で閣下が仰って。「必ず最後に愛は勝つ 本当に?」。
閣下 声に出して言った?
──番組内のアンケートに答えたんですよ、「こういう奴はダメだみたいな、どういう人をダメだと思いますか?」みたいなアンケートで、閣下の答えが「必ず最後に愛が勝つと思ってる奴」。
閣下 (侍従の方を向いて)言ったの? KANの前で? (笑)
侍従 覚えてる覚えてる。
閣下 (怪訝そうに)へえ。
──僕は、チャレンジングなことに見えたんですよ。テレビの前のティーンエイジたちはハラハラしたと思うんですね。剣呑な話じゃないですか。「KANさんはKANさんですごいですね」みたいに言ってれば無難に済むことを、わりと正直に言ったみたいなね。そういうことを詩の中でも僕は勝手にね、感じ取ることができた。ネガティブに自分自身のことを黒く消してっていうようなことも含めて。稀代のドンキホーテと歌って最後は「敗れざる者」だって。……と、ここまで質問というより、僕の思ってたことを熱く語ってるだけになってますけども。
閣下 (笑)そうだね、2〜300人客を入れてシンポジウムみたいにやるといいよね。
──僕の思いの丈を述べて。
閣下 「皆さんで同感する人!」って。(笑)
──こうして質問をしても、煙に巻かれるかもしれないですけど。僕が感じ取ったこと、私小説的に音楽業界での浮沈みたいなことへの思いというのを詞に入れてる面も、やはりあるんじゃないですか?
閣下 まあそれはそうでしょうね。なにも思ってもないことは書かないわけで、膨らましたりはしてるだろうけど。
──閣下の作詞には、これも「たまたまです」って言われたらそれまでなんですけど。
閣下 あ、それはたまたまだわ。(笑)
一同 (笑)
──もう心を読まれてる。(笑)。
半分はあるんじゃないのかな
──閣下の詞には、戦場が多く登場します。
閣下 ほうほう。
──最初それは、閣下が悪魔だからだろうと思ったんです。悪魔が人間のことを歌うときに戦争が一番愚かな、滑稽な振る舞いってことでモチーフになりやすいので、当然のことかなと思ったんだけれども、何か生々しい。『殺しの現場!!』という曲で「戦場でやるかやられるか」を歌って。『CRIMSON RED』では弾薬背負い込んだ異国の戦場を。『悪魔のメリークリスマス(完結編)』では、日本人は甘い恋愛に興じてるけれども今も異国は戦場であると。それから直接的に戦場と銘打たれてないけれども『HEAVYMETAL IS DEAD』でも「殺せ殺せ、戦争は人殺し」と。
閣下 ああ、3番だね。
──『正義のために』という歌にも戦場を感じる。『いざ戦場へ』と題名にも戦場が出てくるソロ名義の作品もある。僕はそこで描かれる戦場に関する歌詞は、もちろん悪魔として、人間はなんて愚かなんだということを伝えるためのこととしても選ばれているのだろうけど、こんなにまでディティールがあるっていうのは、閣下の心の中の風景に常に戦場があるんじゃないか。風刺してやれとかってことと別に、常に戦場のことを景色のように思ってるように思うんですよね。妙に詞がスッと出てきてる感じがあんですけど、どうでしょう?
閣下 今例に挙げられたいくつかの曲のうちの、その確かに本物の戦争という場面を描いてるものもあるけれども、比喩として人の生き様とか営みというのは日々戦いの連続でしょ? って言うことを戦場という場面に描いている……
──社会、実社会だとしても。
閣下 ええ。そのように置き換えてるものも結構、半分はあるんじゃないのかなという気はするけどね。
──なるほど。じゃあなんとなく目を閉じると気持ちの上で戦場っていうものが常に浮かぶってことでは特にない?
閣下 別に風景として戦場が浮かぶというわけではないけれども。まあやっぱり音楽、エンターテイメントの活動もさることながら、非常にいろいろなことをやってるのでね。日々の生活は本当に戦のようなもので。戦うという闘争心をもって生きていかないと乗り越えられないような場面がたくさんあるから、まあたぶん比喩として使いやすいんだろうね。
──なるほど。確かに「戦う」という言葉まで広げたらさらに増えますね。
閣下 だから『いざ戦場へ!』みたいな曲っていうのは全然戦争の現場ではなく、どちらかというと、これからステージに出て行くときの歌を歌った歌なんだけれども。
──なるほど。僕の深読みだったかもしれません。聖飢魔IIというバンドにしろ、デーモン閣下のソロ活動にしろ、もちろん悪魔だから、ネガティブな「死ね」とか「殺せ」というような、様式美としての残酷さを突き詰めてる曲は多数あって、そっちの方が(『蝋人形の館』のように世間には)有名です。でも、その一方で実はポジティブな、生まれてきたことの幸運をすごい大事にしようと、生きることの意義を問いかける歌がすごく多いですよね。
(補足。頻出する「戦場」モチーフも、そのことが浮き彫りになると思えると結びつけたかったのだが、ここではとっさに言及できず)
閣下 すごく多い。……なんか、クイズ出されてるみたいだね。(笑)
一同:(笑)
閣下 「生まれてきたという喜びを彷彿させる曲、それはなんでしょう?」と。
──さすがに聖飢魔IIだけで160何曲ですから、すぐ「あれね」とは……
(補足・「幸運を大事にすることを歌った」曲と、「生きることの意義を問いかける」曲とを分けて尋ねればよかったのだったが、失敗した)
閣下 『地獄の皇太子』がそうだよね。
──あ、たしかにあれも「生まれて」る!(全然、その曲のつもりではなくて動揺する)。
閣下 あれはまさに生命の誕生のシーンだよね。
──「豚の胃で作られた子宮の中に悪魔の国の王子が」ね。(笑)
(補足・『地獄の皇太子』は聖飢魔IIの第1大教典(ファーストアルバム的な作品)に収録された人気曲で、様式美的な、つまり、とても地獄的な内容)
閣下 聖飢魔IIカルトQ。
──いや(焦りながら)あの『嵐の予感』とかですね。「君は何をやりとげるために生まれてきたのか」と問いかけてます。それから『AGE OF ZERO!』という曲でも、幸福になるために生まれてきたと。閣下には、生まれるってことの幸運をまず思い、だから漫然と生きることを良しとしてない価値観がある。生まれてきたならなにをやり遂げるんだってことを問いかけて。今回の新曲(『GOBLIN'S SCALE』)でも「100年後1000年後に何を残せるのか」と歌詞にある。生きてきたからには何かを残さなきゃいけない。そういったことが、やはり多い。すぐにぱっと出せないくらいに。
閣下 『GOBLIN'S SCALE』をもう聞いたんですか?
──あれもかっこいい曲で。悪魔的な破壊の曲もたくさんあるけども。実は全体を通して聞いたときは常にポジティブなものを手渡されると思うんですよ。
閣下 どちらかというとね。
──それで……やっぱり僕ばかり喋ってますね。
アライ 想いが熱いんですね本当に。
──そうなんだよ。
その5に続く!
(ブルボン小林)
聖飢魔II オフィシャルWEBサイト