八重山商工vs八重山
コザしんきんスタジアムのスコアボード上では、国旗などの旗がホームベースへ向かって強くはためいていた。その逆風をものともしない平良 海馬の打球は、ベンチよ重苦しい雰囲気を切り裂く最高の一打となっていった。
注目の離島決戦!その試合の序盤を支配していたのは八重山だった。1回、先頭の川満 拓也がライトへ二塁打を放つと、二つの四球を集めて満塁としたが得点には至らず。2回は一死から又吉海智に二塁打が、3回には先頭打者がヒット、4回にも二死ながら一・三塁と常時塁を賑わせるものの、どうしてもあと一本というところで、八重山商工先発の黒島 志門に遮られてしまった。
その八重山商工は、13年もの間奮ってきたタクトをこの夏で置くことを決めていた伊志嶺 吉盛に、絶対勝たせてやるんだというナインの親孝行が硬さとなっていた。自慢の打線は4回を終えてノーヒット。5回こそ森田 虎之介にチーム初ヒットが生まれるも三塁を踏めずにいた。しかし6回、簡単にツーアウトとなったが1、2番がそれぞれ四球を選ぶと打席には2年生の平良 海馬が入る。ファールで何度も粘った8球目。逆風を切り裂く力強い打球は、ライトスタンドに跳ねていった。喜びを爆発させるベンチナインとともに、笑顔で拍手を送る伊志嶺監督の姿がそこにはあった。
対する八重山も秋の王者。このままでは引き下がれない。その裏、二死一塁から又吉 海智がヒットで繋ぐと、続く伊志嶺 瑠希がセンターオーバーの2点タイムリー三塁打で反撃。お互い手の内を知り尽くしているだけでなく、離島勢として切磋琢磨してきた島の球友が、真剣勝負を繰り広げる一進一退の攻防に、観衆の目は釘付けとなっていった。
7回、八重山商工は前粟蔵 知弘に三塁打が生まれると、次打者の安里 郁哉がライト前へ運び1点を返す。そして9回、大濱 安音夢のタイムリー、仲嵩 勇雅の2点タイムリー、さらに上地 樹稀にもタイムリーが出て4点を奪い勝負を決めた。点差こそついたものの、内容は互角。試合後に涙を流した八重山ナインの思いも背負った八重山商工ナインは、春優勝で、今年では最強と言っていい実力を持つ糸満の胸を借りる。
(文=當山 雅通)