【茨城展望・後編】最速149キロ右腕、茨城県ナンバーワンスラッガーなど今年の茨城も逸材揃い!
前編では、常総学院や石岡一の上位進出校について状況をお伝えしていきました。後編では、ベスト8以外で注目すべきチームや、注目選手などを紹介していきます。
高校通算52本塁打の細川擁する明秀日立、水城などの有力校の状況は?細川 成也 (明秀学園日立)明秀学園日立は対外試合自粛期間が明け、今大会が新チームで初の公式戦となった。細川 成也、糸野 雄星ら、プロ注目選手を擁し打撃陣は県内トップクラスと評される反面、投手の経験不足が不安材料である。県大会1回戦は強豪・水城を延長10回サヨナラで制したが、2回戦では、石岡一に4回までに7点を奪われ、自慢の打線で流れを呼び戻せずに完封コールド負けと課題が露呈した。この結果を受け、夏に向けた投手力の一層のてこ入れに1年生投手の起用も十分に考えられる。
また、細川 成也は平成28年5月28日の東海大相模との練習試合で通算本塁打数を52本とし、茨城県記録の大久保 博元氏(水戸商)と並んだ。今後も順調に本塁打を延ばし60本超えまでも期待したい。
水城は先述のとおり1回戦で明秀学園日立の粘りの前に延長10回逆転サヨナラ負けを喫したが、組合せ次第では上位進出できる力が十分にある。特に打撃陣は下級生から中軸を担う根本 拓真や前島 健志郎ら、強打者が揃っており上位校に引けをとらない厚みがある。課題はこちらも投手陣だ。なお、水城は春の大会を終え、監督が大川 健次氏から部長であった関根 茂彦氏に交代した。関根氏も大川氏と同様に故・橋本 實氏の愛弟子であり、水城の橋本イズムは引き継がれる。
下妻二は2回戦で優勝した常総学院に0対5で敗れたものの、エース右腕・齋藤 雄基の四隅にカーブを散らす制球力の高さはひときわ目についた。また、3番・中嶋 聖、4番・中嶋 大輔と好打者を揃え、シード入りを逃したものの総合力が高い。春はチームで徹底して一度も犠牲バントを用いない戦い方をしていたが、夏はどう戦略を立ててくるか興味深い。
古河三は2回戦・土浦日大に7対8で敗退した。部員数は少なく決して層の厚さはないが、エース左腕・須藤 佑介はストライク先行の投球ができ、打線は4番・黒須 亮を中心に好打者が揃っており、投打にまとまりがある。
秋に4強入りを果たした県北の公立2チームが春は1回戦で姿を消した。日立一は1回戦・取手松陽に対し、守りのミスで失点したことが響き3対4で敗退した。エースで中軸の鈴木 彩斗は秋に股関節を故障していたが完治。夏は昨年の再来となるか。太田一は1回戦・常磐大高に対して同点で迎えた6回一死満塁から、常磐大高の8番・田崎 瀬南に満塁弾を浴び3対5で敗れた。制球力が信条であるエース右腕・和田 凌吾は、学んだ一球の怖さを夏に生かしたい。
[page_break:最速149キロ右腕・長井 良太は最注目選手!]最速149キロ右腕・長井 良太は最注目選手!長井 良太(つくば秀英)
つくば秀英のエース右腕・長井 良太(インタビュー)は最速149キロのストレートと縦のスライダーが武器のプロのスカウトも注目する剛腕だ。身長は182センチ。昨夏の体重は68キロでヒョロヒョロしたイメージだったが、冬場の追い込みと食トレの成果でこの春は80キロまで増量し、ぶ厚い体躯を手に入れた。秋は県1回戦で石岡一に敗退。春は地区予選1回戦で古河一に敗退し、逸材でありながら公式戦でなかなか見ることができないため、夏は最優先でチェックしたい投手だ。
水戸葵陵の右腕・海野 貴嗣と鬼怒商の左腕・大木 駿は140キロを超えるストレートを持つ。コントロールが課題だが、ハマれば上位進出もある。東洋大牛久の有馬 海人は伸びのあるストレートをテンポ良く投げ込む。昨夏4強入りの立役者だ。
守谷の中塚 智はオーバースローながら横滑りするスライダーを操る珍しい投手だ。こちらは昨春4強入りの立役者。つくば国際大高の村上 稼津樹、茨城高専の桧山 航らのストレートには力がある。波崎柳川の山村 一貴、水戸一の市村 悠大はスライダーの低めへの制球力に優れる。
打者では土浦一・天貝 泰己の腕っ節がとにかく強い。「何を食べたらそんな身体になるのか」と聞きたくなるくらい高校生離れした身体の厚みがあり、打球が豪快に飛んでいく。茨城キリストの井坂 壮志は眼光鋭く集中した打席でのルーティンに目を引かれる。スイングが力強く一撃必殺の仕事人の風格が漂う。鹿島学園の中谷 太郎は内外の打ち分けが上手く、長打力も兼ね備える。常総学院・倉田から放ったレフトへのアーチは鮮やかだった。
波崎柳川の楠 大樹はパンチ力があり、センター方向中心に打ち返す打撃を心がけ、変化球に対応力がある。佐竹の菊池 幹太は懐が深くハイグリップの位置から前でさらうフォームでミートが上手い。水海道一の渡辺 大雅、下館工の廣瀬 拓斗はバットコントロールが巧みな好打者だ。
[page_break:夏の大会はこうなる!常総学院は有力だが、不安要素は?]夏の大会はこうなる!常総学院は有力だが、不安要素は?第1シードの常総学院は選手層が厚い。エース・鈴木 昭汰を欠いた状態でも春優勝できたことで夏の戦力も盤石だ。しかし、関東大会で登板した鈴木昭の投球内容から不安要素が生じた。この夏は、春のように鈴木昭が本来の状態まで完全復活できないまま登板させることは避けたい。センバツ出場の最大の功労者である鈴木昭だが、完全に怪我が癒えなければ厳しい決断を下さざるを得ない。
常総学院を追う筆頭格は、関東大会で1勝をあげた好投手・高崎 大幹を擁す石岡一と、総合力の高い昨年の覇者・霞ヶ浦。石岡一の川井 政平監督は人心掌握術に優れており、接戦にはすこぶる強い。就任後、着実に実績を積み上げているので今夏いよいよ茨城を制しても、もう誰も驚かない。霞ヶ浦は昨夏優勝メンバーを多く残す。打撃陣は好調で、主砲の根本 薫もようやく本来の実力が出せるようになった。対戦相手としては、抑えの飯村 将太が出てくる前に少しでも得点を重ねておきたい。続いてエースで4番を擁す3チームの上位進出が有力だ。
古田島 成龍(取手松陽)
水戸商はエースで4番の瀧 功聖が勝利の鍵を握る。勝ち上がるには瀧を出来るだけ温存しておきたい。取手松陽は古田島 成龍が投打の要だ。相手としては古田島に気持ちよく打たせてしまったら投球でも乗せてしまうので注意したい。
日立一もエースで中軸の鈴木 彩斗が精神的な支柱だ。ただ前出の2チームと違うのは、力のある2枚目がいる点だ。左腕・片山 皓心がエースを張れる力を持っているので、鈴木 彩斗の負担は軽減される。
打力に秀でた3チームも脅威だ。藤代は打撃力が高いが投手陣に不安を残すため、上位校からも5点以上取る打ち勝つ野球をするしかない。明秀学園日立と水城はノーシードとなったが、打線は県内でもトップクラスであり、シード喰いの力は十分にある。
土浦日大と常磐大高はここ2年で公立高校から監督を招聘したチーム同士だ。下級生が台頭している若いチームで逆境へのもろさが感じられるが、一度勢いに乗せてしまうとビッグイニングにつながる怖さがある。
下妻二、鹿島学園は投打に能力が高い選手が揃い8強入りの力がある。太田一、東洋大牛久は投手力が高くロースコアの接戦をものにしたい。古河三、鉾田一はバランスがとれた好チームで16強入りは十分可能だ。
(文・伊達 康)
注目記事・2016年度 春季高校野球大会特集