「ジョジョの奇妙な冒険」個室でにやけるニキビヅラは、圧倒的な俺たち感……!

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ジョジョ声優の「ギャップ萌え」


先々週から予言していた「オープニングの変更」がやっと実現。康一くんにエコーズのスタンドが追加ッ!歌詞に対応して「Mystery」のオノマトペを出してるのが芸コマだ。


一緒に育った大親友が石仮面を被って極悪人に、美少女を殴ったらヌケサクだった……という風に、ギャップはジョジョの楽しみの一つ。それは作品ごとの役柄に合わせて、演技をガラリと豹変させる声優さんにも言えること。
今回の敵スタンド使い・間田敏和の絵に描いたような小悪党っぷりを演じているのは、下和田ヒロキさん。小心と狡猾を悪意で練り合わせた声を持って生まれたとしか思えないハマり役だが、アニメファンには『戦国BASARA』の森蘭丸役で知られている人だ。
この子役、演技うまいね〜と信じて疑わなかったわんぱく美少年を演じた下和田さんは、ベテランの域に達した成年男性だ。中年女性とその息子を一人でお芝居できる芸域が、またひとつ広がってしまった。

作品ごとのギャップといえば、小林玉美=鶴岡聡さんも凄まじい。最も有名どころでは『FATE/Zero』のキャスター(ジル・ド・レェ)で、カエル顔をした魔術師にして元フランス軍の元帥。殺人に対して異常な美学があり、「怖がらなくもいいんだよ、坊や」と希望を持たせてから殺害して恐怖の鮮度を語った男……が轢き殺したネコの償いに50万円持ってこいと!
そして広瀬康一=梶裕貴さんも、大人気で今季のアニメでも引っ張りだこのため「ギャップ萌え」が楽しい。「異義あり!」とテンション高く指をつきつける『逆転裁判』と、体の痛みを感じずやる気もない『キズナイーバー』の阿形勝平も見ておけば、康一くんの熱いセリフの味わいも深まるはずだ。

第七話は、こんなお話


第七話はこんなお話
小林玉美が仗助と康一にもたらした新たな情報。二人が通うぶどうが丘高校に間田敏和というスタンド使いがいて、友達を傷つける事件を起こしたかもしれないというのだ。仗助は間田のロッカーを調べるが、大きな木製の人形が入っている以外は、特に変わったところは見当たらない。しかし、その直後に人形が仗助そっくりの姿に変身し、二人に襲いかかってくる……。

間田敏和の「圧倒的な俺たち」感


陰険で根暗で身勝手な敵スタンド使いの間田敏和。そのスタンド・サーフィスも「コピーした相手を操る」という恐るべき力ながら、中身のない空っぽの本人のいびつな精神を取り出したような異能力だ。
つまり、日々が充実した仗助や康一くんよりも、ありふれた視聴者サイドにいる存在。もし自分が「弓と矢」が貫いて、誰にもバレずに悪事を働く力が降ってわいたら、ここまで堕ちずに踏みとどまれるか確信が持てない危険な身近さだ。

そんな視聴者の心を隠者の紫で念写した(推測)スタッフによる、冒頭のアニメオリジナル部分。深夜ラジオを聞きながらノリノリ、誰も見てない個室でにやけるニキビヅラは、圧倒的な俺たち感……! 間田の友達で、アイドルやアニメをめぐって喧嘩したために「気がついたら自分がえぐり取ったが左目をのこった右目で見ていた」目に合わされた被害者だ。
まいった。原作ではチンケな小悪党に過ぎなかった間田が、アニメだと感情移入がハンパない。スタンド使いは引かれ合い、友達の少ないオタク同士も引かれ合う。

承太郎を街から追い出すためとはいえ、モテが約束されたジョースター家の仗助(コピー人形)とつるむのは精神的な拷問に近い。並んで歩けば「さよなら仗助くん」と口々に言う女子のせいで非モテ度が跳ね上がり、イケメンがラブレターをもらう一番見たくない場面を見せつけられ……クキィーッ!
しかし間田の「てめーとおれはどこが違うってんだよぉ〜〜」に対しては「ぜんぶ」とテレビに向かって突っ込んでしまう悲しさ。人形!蹴らずにはいられないッ!「この世に性格のいい人間はいねーのか」も自分にブーメランでナイス発言である。

時間サスペンスを盛り上げる再構成


前回に続き、原作5話分のストーリーを一話にまとめ、堅実にイベントを消化しているサクサク感が素晴らしい第七話。ただスピードがあるだけでなく、原作の「無駄なくプロットを組んでいる構造」がすっきり見えてくる再構成の上手さも見逃せない。
人形に取り憑き、相手のしゃべり方や声までコピーするスタンド・サーフィス(上っ面)。コピーされた者は必ず人形と同じポーズを取ってしまう「操り人形」ならぬ「操られ人形」だ。

このとき、人形がたとえ話に出す「パーマン」(のコピーロボット)が、またもや出版社の壁を超えて「原作通り」でガッツポーズ。で、「パーマン」を知らない仗助に対して「こんなやつと会話したくねーっと感じだな!」と毒づく人形に激しく同意……するのは昭和世代だけ?
本筋に戻ると、ここからの話の転がし方が息を呑む見事さ。操られた仗助が腕で康一くんをふっ飛ばし、続いて本人はグショォ!と目を潰されて失神…と欺いたのは、「グショォ」の音を貼り付けた康一くんの機転だった。それも吹っ飛ばす瞬間にクレイジーダイヤモンドで骨折を治していたから可能だったということで、二人が名コンビすぎる。
間田の目的は承太郎を半殺しにすることと知った二人は、杜王グランドホテルに電話。しかし、サーフィスが仗助の声で先に電話をかけていた! 話し中が終わると、すでに承太郎がホテルを出た後……というピンチは、携帯電話の普及してなかった1999年という設定だから成り立つ。電話ボックス、久しぶりに見たなあ。

バイクを愛する兄弟に間田が絡んでいるところで仗助達が追いつき、投げつけたガラスを「直す」ことでサーフィスの右手をガラス瓶の中に封印。こっちが後々効いてくると思わせるのも、実はフェイクだ。
「待ち合わせまで残り15分」や杜王町マップでの位置表示が時間サスペンスを盛り上げつつ、駅前の開かずの踏切で「カンカン」と音を鳴らして間田達を駅ビルに迂回させたのは、もちろん康一くん=エコーズの仕業。この子、先週スタンドに目覚めたばかりで応用力が高すぎる。
息詰まる駆け引きの末に、先に承太郎と出会えた仗助達。しかし駅ビルのウィンドウの中にはサーフィスがいて……そこでバイク兄弟が間田を殴る! まさか「右手」ではなく「間田にムカついてた兄弟」が伏線だったとは!

原作からの地味だが大事な変更点は、間田がうっかり漏らした「待ちあわせは駅」を仗助たちが盗み聞きしてることだ。漫画では、間田が腹いせにブチちのめした被害者たちが道案内になっていて、いくらなんでもマヌケすぎる。
さらにスタンド使いの出番も先取りして補完。最後にレッドホットチリペッパーが弓と矢を背負って見物してるのは、間田が「あいつ(承太郎)に近づいて対抗できるスタンド使いはおれたちの仲間には…」と漏らしていたセリフに対応している(原作には「仲間」が出ない)。
そして学校から走り出る康一を見守っていた美少女は、来週のサブタイトルにもなっている山岸由佳子。どんな娘なんだろう、きっと大人しくて性格がいいんだろうなあ(棒読み)。
え、最初に人形にレンガで殴られてた小林玉美? 原作だと「草むらに隠れて腕だけ」だったのが「全身像でぶっ倒れたまま入院」という点で、ちょっぴりと美味しかったですね!
(多根清史)