「あまちゃん」のあんべちゃんこと片桐はいりのど迫力「とと姉ちゃん」37話

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連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第7週「常子、ビジネスに挑戦する」第37話 5月16日(月)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


昭和11年、春。
常子(高畑充希)は、女学校の5年生、最終学年を迎え、ようやく正規の制服を着ることができた。
たいていの生徒は卒業を前に、お嫁に行くことを考えていたが、常子は職業婦人を目指している。なんといっても彼女の目標は妹ふたりを嫁に出すことだから。
だが、どの求人も男性の半分以下の給料で、どうしたもんじゃろのう〜と悩んでいた時、やってきたのは新しい先生・東堂チヨ(片桐はいりーー「あまちゃん」の、まめぶのひと・安部ちゃん! )
彼女がいきなり、床に座ってあぐらをかけと女生徒たちを挑発する。それは、男性と女性の差異について改めて考えさせるためだった。
教室の床にあぐらーー制服が汚れるから男性でも躊躇するのでは? と揚げ足取りしてしまいそうになる難題を出す先生に常子はすっかり心酔してしまう。
いや、チヨにというかチヨが紹介した平塚らいてうに。
そのらいてうが「元始、女性は実に太陽であった。」と高らかに語る雑誌「青鞜」(大正15年には廃刊している)を貪り読む常子。
平塚らいてうに関しては千野帽子さんのレビュー近藤正高さんのレビューをご覧いただきたい。

「あさが来た」の終盤、颯爽と登場し(演じたのは大島優子)、主人公のあさを痛烈に批判した平塚らいてうに、「あさが来た」の後を受けた「とと姉ちゃん」の主人公が影響を受けるとはなんとも皮肉なお話ではあるが、こうやって時代は移り変わっていくのだと思うと面白い。

片桐はいりは、朝ドラファンには“安部ちゃん”の印象が強烈。とにかくインパクトが強い俳優で、舞台では、松尾スズキの代表作「マシーン日記」や、昨年上演された「不倫探偵〜最期の過ち〜」などでも、彼女しかできないであろう難易度の高い役柄を演じている。松尾の監督作「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」では、凄まじい髪型や衣裳を鮮やかに手なづけるエネルギーに圧倒される。一方で、西田征史の監督作の「小野寺の弟・小野寺の姉」では弟(向井理が演じている)の母親代わりをしながら40歳になってしまった、慎ましい性格のおひとり様を演じていた。この映画も、人間のちょっと痛いところを優しく包みこむあたたかな映画なので「とと姉ちゃん」が好きな方で未見の方にはおすすめだ。
その「とと姉ちゃん」では、世の中が勝手に規定する男性、女性の差異に疑問を投げかける役を演じる片桐。かつての彼女が発した言葉で興味深いものを見つけた。1998年の蜷川幸雄演出「ロミオとジュリエット」(彩の国さいたま芸術劇場)のパンフレットの彼女のプロフィールページだ。63年(早)生まれの彼女がジュリエットの乳母の役を演じるに当たってのコメントで、「ある小説の受け売りだけれど、世の中には、少年とおばさんしか存在しないのだそうである。もちろんココロの話」と切り出し、蜷川さんに「今度『ロミオ〜』やってくれる?」と聞かれてロミオ役と勘違いしたと明かし、その時「少年の夢を捨て」「正しいいおばさんになりたい」と思ったと結んでいる。ちなみにこの時のロミオは大沢たかおだった。
少年になりたい夢をもっていたらしき片桐はいり演じる東堂チヨ。安部ちゃんを凌駕する役になってほしい。
(木俣冬)