「キレる老人」は他人事ではない? モデルとなる高齢者を探すべき理由

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調理実習や裁縫など、実技が多かった「家庭科」という授業。でも、実は奥深い。高校の家庭科教科書をのぞいてみると、生まれてから成長し、年老いて人生の終わりを迎えるまでの人の一生の中で起こる生活に関わるあらゆることが詰まっている。

『人生の答えは家庭科に聞け!』(堀内かおる・南野忠晴著、和田フミ江画、岩波書店刊)は、2014年から放送されているNHK高校講座「家庭総合」の冒頭で紹介される「おなやみ相談」漫画を受けて、主人公である高校生たちが直面している課題に則して解説をしていく一冊である。

■モデルとすべき高齢者を見つけることが大切な理由。

10代、20代のとき、どんな大人になりたいかを考えても、どんな高齢者になりたかいかまで考えることはあまりないかもしれない。しかし、いつかは自分も高齢者になる日が来ることを頭の片隅にも置いておいた方がいい。

毎年平均寿命と一緒に発表される「寿命中位数」というものがある。「生まれた子どもの数が半分になる年齢」ということで「中位数」となっているが、言い換えれば「2人に1人はその年齢まで生きます」という意味だ。ちなみに、2014年の寿命中位数は、男が83.49歳、女が89.63歳で、毎年少しずつ伸びている。

今の高齢者たちの多くは、子どもの頃に高齢者と同居していたり、近所の高齢者との触れ合いも今より濃密だった。そういった普段の経験から、彼らの中には「歳をとることのイメージ」が漠然とでも形成されていたはずだ。

一方、今の若者たちは核家族化の結果、昔より高齢者と接する機会が少なくなっているかもしれない。自分がモデルとすべき高齢者、あるいは反面教師になるような人。その漠然としたイメージを持つだけでも将来の見え方が違ってくるはずだ。

そのためには、さまざまな高齢者を観察したり、仲良くなったり、友達になれたら、ずっと先の目指す人生の方向が見えてくるかもしれない。自分の祖父母をはじめ、近所の高齢者たちと話す機会をつくることから始めてみてはどうだろう。

■あなたも将来は「キレる老人」になるかも?

本書は中高生向けの岩波ジュニア新書から出版されているが、大人になってからも似たようなことで悩むことは少なくないだろう。むしろ大人になってからの方が、小さなことや人間関係で悩むことが増えていくものだ。

今、「キレる老人」「暴走老人」という言葉が広まり、一部の老人に対して非難の声があがっている。そこに囚われているとどうしても、イメージの悪い高齢者から目がいかなくなる。しかし、「あんなふうには…」とは思っていても、もしかしたら自分もなってしまうかもしれない。そんなときには、自分にとっての模範的な高齢者の姿がすでに頭にあったなら、自分を律せるかもしれない。

悩んだときに、どんな選択肢を選ぶのか。家庭科の教科書に載っていることがヒントになることもあるはずだ。

(新刊JP編集部)