「アイドルみたいに政治家をチェック」 若者が政治に興味を持つ意外なきっかけが面白い
「若者の政治離れ」が進んでいるといわれているが、ちょっと待ってほしい。私の周囲には政治に対して関心を持っている若者が意外と多い。中には国会前のデモに参加する学生もいれば、代議士の元でインターンをする学生もいるし、仲間内で政治を研究するサークルを立ち上げる学生も。
アプローチの方法は様々だが、関心を持って自分なりに考えて行動をしている。彼らは本当に政治に関心がないのだろうか? もしかしたら少しでもきっかけを用意すれば何かしら自分なりの考えを持って行動を起こすのではないか?
『18歳からの政治の教科書』(彩雲出版刊)は、現職参議院議員の宇都隆史氏が政治や選挙の仕組みを一から説明してくれる一冊で、政治について知りたいと思ったときに読むと役立つ。ただ、内容はそれだけではない。「若者がどのようにして政治に関心を抱いたのか」が彼らの口から語られている点が非常に興味深い。
■「アイドルみたいに政治家を見ていた」
第4章の「政治を身近に感じよう」では、宇都氏と宇都氏の事務所でインターンをしている3人のインターン生との座談会が掲載されている。なぜ彼らは政治に興味を持ち、行動を起こしたのか? 発言をピックアップしていこう。
「そもそも政治に興味を持ったのは、地元の政治家のファンというか……。その政治家個人が好きで時々活動をチェックしていたのですが、そのうちに政治全体も新聞で意識して見るようになりました。最初は本当にアイドルを見ているように『今日は写真載ってないかな〜』とかそういう感じで(笑)。」(p154より引用)
この「アイドルのように見ていた」政治家は小泉進次郎氏のことだ。この発言をした人は地元が横須賀。横須賀といえば小泉家である。身近に政治家がいたということが、興味を抱かせる大きなきっかけとなったようだ。では、他の人はどうだろうか。
「私は、前政権のときにずっとテレビで政治の動向を注目していたのですが、政権運営が全然うまくいかずに、混乱している様子を見て危機感を持ちました。」(p155-156より引用)
国会中継を見ると、居眠りをしていたり、本を読んでいたりと振る舞いが気になる政治家が出てくる。それだけではない。押し問答のような討論、効果のない政策、不信感が募るばかりだ。これからの日本を生きる若者は泥船に乗っている気分の人も少なくはないだろう。また、こんな意見もある。
「私はもともと軍事に興味がありました。今、政治史に関するゼミに入っていて、私の研究テーマが『昭和の軍部の政治介入』なんです。軍部の人間関係だとかそういうのを追っているうちに、昭和時代の政治にも興味が湧きまして、それが現在の政治にも繋がって今に至る、という感じです。」(p156より引用)
こちらは、好きなものや興味のあることが紐づいて政治に関心を寄せたという若者の意見だ。たった3人だけでも、三者三様。政治に興味を持つための導線は実はたくさんあるのではないだろうか。
■「すぐ結果に反映される」ことの大切さと落とし穴
ただ単に「興味を持て」「投票をしろ」と言われても、人は動かない。それは当然のことだ。人を動かすには、自分のこととして引きつけて考えさせられるかということが大きな鍵になる。もし仮に政治への興味に向かわせる導線がたくさんあったとしても、投票などの具体的な行動に向かわせるモチベーションを生み出す装置がなければ、結果としてそれは何も変わらない。
座談会でこんな声が飛び出している。
「最近選挙っていうと政治の選挙よりもAKBの総選挙のほうがすごく話題に上がって、あれがなんで熱狂的に支持されるかっていうと、自分が投票した子がどんどん活躍できるっていう見える成果が出るから。だからこそみんなどんどん参加して、その子を活躍させてあげようっていう気持ちになると思うんですよね。」(p171より引用)
この意見に対して、著者の宇都氏は「政治家は多くの有権者が求めていて、且つすぐ結果が出るようなものだけを選挙で訴えるようになります」(p172より引用)と、政治のポピュリズム化を懸念する。
「身近に感じる」ものを、客観的な目で判断することは難しい。それに選挙は「人気」がモノを言うものだ。知名度の高さが武器になるのは当然のことだし、そこに人は群がっていく。メディアもこぞって取り上げるだろう。座談会を通して課題が言語化されることが、考えるための大きな一歩になるはずだ。
公職選挙法の改正によって選挙権を持つ年齢が満18歳まで引き下げられる。今夏に行われる参議院議員選挙では18歳、19歳の若者たちも投票ができるようになる予定だ。
この『18歳からの政治の教科書』には、政治についてあれこれ考えるための道具が揃っている。政治家が普段何をしているのかといったところから、選挙の歴史まで丁寧につづられている。今年の夏までに18歳を迎える人も、政治が何なのかよくわからないまま大人になった人も、参考になる一冊である。
(新刊JP編集部)
アプローチの方法は様々だが、関心を持って自分なりに考えて行動をしている。彼らは本当に政治に関心がないのだろうか? もしかしたら少しでもきっかけを用意すれば何かしら自分なりの考えを持って行動を起こすのではないか?
■「アイドルみたいに政治家を見ていた」
第4章の「政治を身近に感じよう」では、宇都氏と宇都氏の事務所でインターンをしている3人のインターン生との座談会が掲載されている。なぜ彼らは政治に興味を持ち、行動を起こしたのか? 発言をピックアップしていこう。
「そもそも政治に興味を持ったのは、地元の政治家のファンというか……。その政治家個人が好きで時々活動をチェックしていたのですが、そのうちに政治全体も新聞で意識して見るようになりました。最初は本当にアイドルを見ているように『今日は写真載ってないかな〜』とかそういう感じで(笑)。」(p154より引用)
この「アイドルのように見ていた」政治家は小泉進次郎氏のことだ。この発言をした人は地元が横須賀。横須賀といえば小泉家である。身近に政治家がいたということが、興味を抱かせる大きなきっかけとなったようだ。では、他の人はどうだろうか。
「私は、前政権のときにずっとテレビで政治の動向を注目していたのですが、政権運営が全然うまくいかずに、混乱している様子を見て危機感を持ちました。」(p155-156より引用)
国会中継を見ると、居眠りをしていたり、本を読んでいたりと振る舞いが気になる政治家が出てくる。それだけではない。押し問答のような討論、効果のない政策、不信感が募るばかりだ。これからの日本を生きる若者は泥船に乗っている気分の人も少なくはないだろう。また、こんな意見もある。
「私はもともと軍事に興味がありました。今、政治史に関するゼミに入っていて、私の研究テーマが『昭和の軍部の政治介入』なんです。軍部の人間関係だとかそういうのを追っているうちに、昭和時代の政治にも興味が湧きまして、それが現在の政治にも繋がって今に至る、という感じです。」(p156より引用)
こちらは、好きなものや興味のあることが紐づいて政治に関心を寄せたという若者の意見だ。たった3人だけでも、三者三様。政治に興味を持つための導線は実はたくさんあるのではないだろうか。
■「すぐ結果に反映される」ことの大切さと落とし穴
ただ単に「興味を持て」「投票をしろ」と言われても、人は動かない。それは当然のことだ。人を動かすには、自分のこととして引きつけて考えさせられるかということが大きな鍵になる。もし仮に政治への興味に向かわせる導線がたくさんあったとしても、投票などの具体的な行動に向かわせるモチベーションを生み出す装置がなければ、結果としてそれは何も変わらない。
座談会でこんな声が飛び出している。
「最近選挙っていうと政治の選挙よりもAKBの総選挙のほうがすごく話題に上がって、あれがなんで熱狂的に支持されるかっていうと、自分が投票した子がどんどん活躍できるっていう見える成果が出るから。だからこそみんなどんどん参加して、その子を活躍させてあげようっていう気持ちになると思うんですよね。」(p171より引用)
この意見に対して、著者の宇都氏は「政治家は多くの有権者が求めていて、且つすぐ結果が出るようなものだけを選挙で訴えるようになります」(p172より引用)と、政治のポピュリズム化を懸念する。
「身近に感じる」ものを、客観的な目で判断することは難しい。それに選挙は「人気」がモノを言うものだ。知名度の高さが武器になるのは当然のことだし、そこに人は群がっていく。メディアもこぞって取り上げるだろう。座談会を通して課題が言語化されることが、考えるための大きな一歩になるはずだ。
公職選挙法の改正によって選挙権を持つ年齢が満18歳まで引き下げられる。今夏に行われる参議院議員選挙では18歳、19歳の若者たちも投票ができるようになる予定だ。
この『18歳からの政治の教科書』には、政治についてあれこれ考えるための道具が揃っている。政治家が普段何をしているのかといったところから、選挙の歴史まで丁寧につづられている。今年の夏までに18歳を迎える人も、政治が何なのかよくわからないまま大人になった人も、参考になる一冊である。
(新刊JP編集部)