国立がん研究センター研究所のチームが、さまざまな種類のがんの増殖に関わる遺伝子を発見し、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)の2016年1月12日号に発表した。

この遺伝子の働きを阻止する物質を開発できれば、がん細胞の増殖を抑える新たな治療薬につながると期待されている。

「IER5」という遺伝子が作るタンパク質に着目

研究チームは、これまでがん化との関連が知られていなかった「IER5」という遺伝子が作るタンパク質に着目した。分析の結果、大腸がん、胃がん、腎臓がん、卵巣がんなどさまざまな種類のがん組織で、正常な組織より量が増えていることがわかった。

人のがん細胞を使った実験などから、このタンパク質ががん細胞を低酸素や栄養不足などのストレスから保護する働きをしていることが判明した。がん細胞でIER5の働きを抑制すると、増殖が抑えられた。

また、ぼうこうがんや脳腫瘍などの患者では、IER5が活発に働いている人は、あまり働いていない人より死亡率が高く、この遺伝子ががんの進行や転移にも関与している可能性が示されたという。