土佐vs高知工
表彰式後・吉川 周佑(主将・2年)を先頭にダイヤモンドを一周する土佐
以前は「やや格上に1勝。明らかな格上にはまず1トライ」が現実的目標だったW杯で3勝1敗。しかも3勝は南アフリカ・サモア・アメリカから。準々決勝進出は惜しくも果たせなかったが、ラグビー日本代表は素晴らしい成果を残してくれた。
試合を見るとその成果につながった要因には「連続性」があげられると考える。走りこむ相手選手を接点で止めても、突進する味方が止められても、そこには必ずサポートの選手が。高い技術・戦術眼・そして体力の上に立脚した複数の予測を持った中での連続性高いプレーは、前回大会までの格上相手にも決して劣っていない、いやむしろ上回っている場面が多かった。
では、ラグビーの話をなぜ冒頭に持ってきたのか。この秋季四国大会出場権を決する土佐vs高知工ばかりでなく、高知県の高校野球には「連続性」が欠如する場面があまりにも多いからである。いいプレーの後に、その功を帳消しにしてしまうようなミス。しかも次の失点につながる進塁を許すパターンが多い。
この試合もそうだった。高知工は準決勝同様、1番・横田 謙慎(2年・三塁手・171センチ58キロ・右投左打・高知市立南海中出身)の中前打から無死満塁。併殺打の間に1点を先制しながら、直後に四球・最後は失策で土佐に同点と勢いを渡すことに。満を持して先発した左腕・小松 航士(2年・左投左打・166センチ57キロ・安芸市立安芸中出身)は4安打5奪三振4四死球と奮闘したが、この失点を含め3失点中2失点が失策。チーム4失策ではさすがに勝利は厳しくなってくる。
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2番手で6回無失点の土佐・尾崎 玄唱(2年)
一方の土佐も打線には連続性がなかった。「見逃しが多かったですね。最初はカーブを狙い球にして、途中からストレートが多いのを見て狙い球を変えたが徹底できなかったです」(西内 一人監督).事実、打線の適時打は5回裏二死一塁から3番・吉川 周がライト線に運んだ決勝三塁打のみだった。が、ディフェンスに目を転じると土佐には高知工より「連続性」に一日の長があった。西内 一人監督が準決勝に続き継投策を選択した理由はこうである。
「吉川 (周佑・2年主将・左投左打・166センチ63キロ・土佐市立高岡中出身)は滑り出しを落ち着いてできるし、尾崎(玄唱・2年・右投左打・165センチ60キロ・土佐中出身)は四球が絡まない。ランナーを出してからよく踏ん張ってくれました」。吉川は3回を4安打1失点でしのぎ、尾崎も6回で6安打を打たれながら四球は1個のみの無失点リリーフで締めることができた。
そう考えれば、土佐3年ぶり16度目の秋季四国大会出場を決めたのはいわば必然。初の秋季四国大会出場を逃した高知工「準決勝まで勝ち進んだことで得られる課題がある」(高橋 司監督)以上の根源的な「連続性」の課題を突きつけられることになった。
では、あきらめていいのか?そんなわけはない。確かにごく一部のチーム・選手を除くと高知県の高校球児は全国と比較しても全てのアベレージ数値が明らかに劣る。明徳義塾以外の甲子園出場校は、2013年センバツの高知・土佐。私学を除けば2007年春の室戸、さらに公立校・夏の甲子園出場は2006年の高知商まで遡るデータを見ても、状況は深刻である。
だが同時に「連続性」を考えれば、現在のチームや個人に不足しているものや練習法も自ずから導き出せるはずだし、県内で一定の成果も出せる。今大会における高知工の4強、新人大会における高知南の4強がなによりの証明だ。
一足飛びに行かなくてもいい。一喜一憂せず、一人はみんなのために。みんなは一人のために。連続したプレーを。「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」のラグビー精神は、野球にも絶対にあてはまる。
(文=寺下 友徳)
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