堀越が「ガマンの野球」で逆転コールド勝ち

先制打を放った府中工業の3番・宮下祐輔(2年)

 試合後、昨年の6月より指揮を執る堀越の小林 寛己監督は「都立府中工さんの勢いに流されず、よくガマンができたと思います」と話した。小林監督の言う通り、試合序盤は都立府中工のペースだった。

 1回表、都立府中工の2番・矢野 敦也(2年)が二塁打と失策で三塁に進むと、続く3番・宮下 祐輔(1年)が、堀越の先発・秋山 翔太郎(2年)からセンターにはじき返し1点を先取。都立府中工は3回表にも宮下と4番・山崎 駿(2年)の連打の後に5番・小岩井 聡志(2年)の適時打が飛び出し、なおも二死満塁と堀越の秋山を攻め立てる。しかし公式戦初先発の秋山は三振でピンチを切り抜け、この回を最少失点でしのいだ。堀越の小林監督は「あそこで秋山が踏ん張ってくれたのが大きかった」と振り返る。

 するとその裏、堀越は秋山の粘りに応えるかのように、都立府中工の先発右腕・大膳 和史(2年)から、3番・佐藤 洸貴(2年)が適時打を放ち、三塁打で出塁の佐藤 叶夢(2年)を本塁に迎え入れる。1点差となり、試合の流れがわからなくなった中、堀越は4回裏に猛攻を見せる。一死二塁から7番・高山 駿(2年)の適時二塁打でまず同点、さらに1番・矢口 快生(2年)の2点三塁打と失策で3点を奪った。

 試合の主導権を握った堀越はこれを逃すまいと、5回表からは背番号「1」の佐藤 大悟(2年)を投入。ちなみに佐藤大と3番ショートの佐藤洸は双子の兄弟だ。181?の本格派右腕の佐藤大はキレのあるストレートにスライダーを混ぜながら、ベンチの期待通り、7回表までの3イニングを毎回の3奪三振で無失点に抑えた。

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2安打3打点と活躍した堀越の7番ファースト高山駿(2年)

 堀越はアドバンテージを渡すことなく、6回裏には相手のミスに乗じて1点を加点。4点のリードで迎えた7回裏は、この回より登板の都立府中工の二番手・伊藤 将也(2年)に襲いかかる。一死二塁から3番・佐藤 洸貴のこの試合2本目の適時打で1点を入れると、なおも二死満塁とし、ここで7番・高山 駿が2打席連続タイムリーとなる2点適時打。堀越に7点差となる9点目が入り、堀越の7回コールド勝ちとなった。高山は2安打3打点、3番・佐藤洸は3安打2打点と活躍した。

 今夏、堀越は東東京大会の4回戦で優勝候補の一角だった二松学舎大附に勝利した。だが「まだ5回戦があるのにそれで選手たちが達成感を持ってしまった」という。小林監督は「これでは勝てません。いい時も悪い時も次がある限り、気持ちを抑えないと。試合で波に乗っている時はイケイケでもいいところはありますが…そこで現チームは「ガマンができるチーム」を目指しているんです」と教えてくれた。序盤を「ガマン」した都立府中工との1回戦は、それが見事に形になったと言えよう。

 堀越は97年夏以来、甲子園から遠ざかってはいるが、巨人の井端 弘和やマリナーズの岩隈 久志も輩出している”東京の雄”。強豪復活を期す堀越の次の戦いも注目したい。

 この日は前夜から小雨が降り続き、第1試合開始のかなりの遅れが予想されたが、プレイボールが宣告されたのは定刻のわずか6分後。依然として細かい雨がグラウンドを濡らしていたが、東京都高等学校野球連盟の尽力でコンディション的には全く問題がなかった。支えてくれる人がいて試合ができる―。そのことを球児は忘れてはならない。

(取材・文=上原 伸一)

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