ワンチャンスを生かして集中して逆転した工学院が快勝

都立片倉・高橋 歩武君

 東京都大会は、一次ブロック予選を勝ち上がった48校の間で競われる。会場校でもあった都立片倉としては、本大会出場は最低限のノルマという意識で挑んでいた。そのハードルをクリアしての本大会である。気持ちとしては、いくらかリラックスして戦えるのかなというところでもある。それに対して工学院大附は大学の付属系列校であり、学校に隣接する大学のグラウンドを週3回は使用できるという。だから、今の中では野球部としての環境としては移動がないだけでも恵まれているという意識だという。

 そんな両校の対決となったが、一次ブロック予選では接戦を戦い代表決定戦では城北に逆転サヨナラ勝ちして進出してきている工学院大附が、その勢いを示した試合となった。

 2点をリードされた工学院大附は3回、先頭の8番井上君が左翼線へ二塁打すると、阿部君のバントは三塁線に決まって安打となる。すかさず二盗を決めると、ここまで落ち着いていた都立片倉バッテリーが急に崩れ出してバタバタし始めた。捕逸で1点が入ると、1番服部君が四球で無死のまま再び一三塁またも二塁盗塁を試みると、送球がそれて三塁走者が生還となり同点。工学院大附としては、労せずして追いつくことができた。

 なおもバントで一死三塁とするが、二死後4番久保君が左越二塁打して逆転。さらに、奥富君も二塁打で突き放し、都立片倉ベンチはここで伊藤君を諦めて高橋 歩武君を投入したが、その代わり端の初球を坂口君が痛打してさらに1点。工学院大附はこの回、一挙に5点というビッグイニングとした。

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工学院大附・岸野君

 一転して追いかける形となった都立片倉だったが、直後の4回に一死満塁と絶好の反撃機を作ったが、工学院大附の白滝 聡監督は、「継投は最初から予定していましたから、早めに準備させておきました」というように、迷うことなく背番号5の久保君を内野へ入れて、エースナンバーをつけた岸野君を送り出した。そして、岸野君も期待に応えて、後続をしっかりと押さえた。

 これで試合の流れは工学院大附のものになっていったが、都立片倉の二番手高橋君も、持ち前の度胸の良さでその後は0に抑えていっていた。そして、何とか反撃したい都立片倉は、今年のチームは打線には宮本 秀樹監督も、ある程度の手ごたえを感じていたのだが、つながり切らなかった。結局、7回に橋村君と中島君という3、4番の連続長打で1点を返したにとどまってしまった。

 都立片倉は、2回に9番佐々木君の叩きつけた打球の二塁への内野安打で先制し、3回にも一死二塁で中島君が中前打して2点目といい形で点が入っていた。それだけに、3回にバッテリーが突如として崩れてワンチャンスでビッグイニングを許したことが悔やまれる。宮本監督も、「なんで、いきなりあんな形になっちゃったのかなぁ…、ここまで調整は悪くなかったというよりも、ブロック予選の後も練習試合ではずっと勝ってきていたんだけれどもねぇ。いろんなことを徹底しきれなかったということでしょうか。一番よくない形の負け方になってしまいました」と、肩を落とした。

 逆にワンチャンスをものにしていった工学院大附の白滝監督は、「本当は、もっと自分たちで打って点を取っていきたかったんですけれども…、まだまだ途上のチームですから」と言いながらも、部員42人のまとまりを感じさせたチームのいい戦いぶりに満足げだった。

(文=手束 仁)

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