近年、サンゴ礁の減少が著しく、半世紀のうちに世界の3分の1の珊瑚が死滅したと試算されています。サンゴ礁急減の原因は、地球温暖化による海水温の上昇だけでなく、天敵の「オニヒトデ」の増加にあるとされており、オニヒトデをいかに駆除するかが、サンゴ礁を保護する重要な鍵と考えられています。そんな中、オーストラリアの研究者が、オニヒトデを狙い撃ちする自動駆除潜水ロボット「COTSBot」を開発しています。

Poison-Injecting Robot Submarine Assassinates Sea Stars to Save Coral Reefs - IEEE Spectrum

http://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/industrial-robots/poison-robot-submarine?

オニヒトデが大量発生することでサンゴを食べ尽くしてしまい、サンゴ礁が壊滅状態になるという事例が日本では沖縄近海や徳島県・牟岐大島などで確認されており、世界中の海でオニヒトデの大量発生によるサンゴ礁の急減少が大きな問題となっています。

多様な生物が生息するため生態系にとって重要なサンゴ礁ですが、形成されるのに非常に長い年月が必要なので、一度、破壊されるとほぼ再生は不可能です。このため、オニヒトデによるサンゴ礁の減少問題解決のためにはオニヒトデの駆除が必要とされていますが、人間が手で駆除するには限界があり、オニヒトデの繁殖スピードの前にはほとんど効果がない状態です。



そこで、オニヒトデの効率的な駆除を可能にするべく、オーストラリアのクイーンズランド工科大学の研究者たちが、なんと自動でオニヒトデに狙いを定めて薬物を投与して殺す潜水ロボット「COTSBot」を開発しています。



COTSBotがどのようなロボットなのかは以下のムービーで確認できます。

QUT roboticists launch their crown-of-thorns killing robot - YouTube

二人がかりでCOTSBotをゆっくりと着水させます。



船尾にケーブルをつながれたCOTSBotがゆっくりと進み……



潜行開始。



オニヒトデに見立てたダミーを潜水艇の下に入れてみます。



COTSBotのアームがオニヒトデダミーに近づいて……



槍のように一突き。さらに執拗に針でダミーを攻撃します。



針からはオニヒトデを24時間以内に殺すチオ硫酸クエン酸塩が含まれた毒薬が投じられるとのこと。



あまりの激しい攻撃に、オニヒトデダミーが吹き飛ばされました。



COTSBotの船体はこんな感じ。船体上部のGPSアンテナで正確な位置を特定でき、前方と底面のカメラで進行方向やオニヒトデを確認可能。毒針付きのアームは普段は底面に折りたたまれています。



COTSBotがサンゴ礁に覆い被さるオニヒトデをカメラで正確に認識して、攻撃を加える様子は以下のムービーで可能です。

Crown-of-thorns starfish Detection system - COTSBot - YouTube

COTSBotは最高時速7.2キロメートルで6時間以上潜水が可能。サンゴ礁の中からオニヒトデを自動的に見分ける能力も備えています。COTSBotを導入することで、従来のダイバーによる手作業による駆除を圧倒的に上回るオニヒトデの大量駆除が可能になると期待されています。

ただし、オニヒトデの大量発生の根本的な原因は、人間の工業活動に伴う海水の富栄養化であるという指摘もあることから、COTSBotなどのハイテク機器を導入するだけでなく、その他の抜本改革にも乗り出す必要があることは忘れない方がよさそうです。