Appleのティム・クックCEOが大学の卒業生に送った言葉とは？
Appleのティム・クックCEOがアメリカの名門ジョージ・ワシントン大学の卒業式で式辞を述べ、自身の過去の経験や見識からくるアドバイスを卒業生たちに向けて語りました。スピーチの最後には、自身のiPhoneを使って式に出席した卒業生たちの写真をパシャリと撮影するおちゃめな一面も見せています。
Tim Cook to college graduates: 'You don’t have to choose between doing good and doing well'
ワシントンD.C.の中心部にあり、U.S. News＆World Reportによる全米大学ランキングでは54位につける有名大学がジョージ・ワシントン大学です。ワシントンD.C.という土地柄からか、政治学・国際関係学・公共政策学などが強い大学で、卒業生には政治家のコリン・パウエル氏や第35代アメリカ合衆国大統領であるジョン・F・ケネディ氏の夫人であるジャクリーン・ケネディ氏、他にも歌手のアンジェラ・アキ氏などが名を連ねています。
そんなジョージ・ワシントン大学の卒業式では、これまで多くの著名人が式辞を述べてきたそうで、2015年はティム・クックCEOがスピーチを担当することになっていました。「Apple」と「卒業スピーチ」といえば、Appleの創設者であるスティーブ・ジョブズ氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチが有名ですが、そんなジョブズ氏からAppleのCEOという役職を引き継いだクックCEOが一体全体どのようなスピーチをするのか、と注目が集まっていました。
2005年にスタンフォード大学の卒業式にてジョブズ氏が行ったスピーチの様子は以下のムービーで見られます。
スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版 - YouTube
2015年5月17日に行われたジョージ・ワシントン大学の卒業式では、クックCEOは多種多様なトピックを取りあげて卒業生にアドバイスを送っています。話した内容は「ジョブズと初めて会った際のこと」についてや、ジョブズ氏から教わった「自身の世界感を大きく変え、キャリアを成功させるための秘訣」、さらにはクックCEOが特に熱心に取り組んでいる人種差別問題に至るまでさまざま。スピーチの中では「テクノロジーや政治よりも、子どもや世界を変えることにこそ強い関心を抱いている」ことを明かしています。
さらに、「給料のために自身を犠牲にすることを当然と思わないでください。あなた自身の価値は非常に重要で、これは地球にとっての北極星のような指針となるべきものです。自分自身が正しい方向を向いていると感じる時、仕事は新しい意味を持ち始めます」と述べ、これから社会に出る若者たちに仕事をする上で大切なことは「お金」だけではないとアドバイスを送っています。
他にも、17年前に初めてAppleの創設者であるジョブズ氏に会った際のことについても語りました。クックCEOは当時働いていたコンパックでの仕事を辞めて1998年にAppleに入社していますが、当時のAppleの状況を「舵がない会社」と感じたそうです。当時、クックCEOは「仕事は仕事」と常々考えていたそうですが、ジョブズ氏の仕事に対する姿勢や考え方に触れる内に、そういった考えが変化していったことも明らかにしています。
人種差別を嫌うクックCEOは、1977年の夏、17歳だった頃に論文コンテストで賞を受賞したそうです。当時のクックCEOの家はそれほど裕福ではなかったそうで、タイプライターがなく、論文は手書きで提出したとのこと。その論文の表彰式にて、当時のアラバマ州知事であり人種差別支持者でもあったジョージ・ウォレス氏と、平等主義者のジミー・カーター大統領に直接面会する機会に恵まれたそうですが、クックCEOは当時を振り返りながら「州知事と会ったことは全く名誉なことではなかった。彼と握手してしまったことは、自身の信念を裏切ったようにさえ感じた」と語り、人種差別に対して強い嫌悪感を抱いていることを隠そうともしません。さらに、「私は2人の歴史的な人物に出会った。自分の中ではひとりは正しく、ひとりは間違った人物であった」ともコメントしています。
加えて、スマートフォンとタブレットが盲目の人を助けたり、教育面で役立っていたりすることに焦点を当て、「不正を目撃してそれを白日の下にさらしたいと考えたなら、それは簡単にできます。なぜなら、今では誰もがポケットの中に常にカメラを持っているからです」と述べ、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末がもたらす影響力の大きさについても独特の言い回しで語っています。
ティム・クックCEOによるスピーチの全編は以下のムービーで見られます。
GW Commencement 2015 Tim Cook on Vimeo
スピーチの最後には自前のiPhoneで卒業生たちをパシャリと撮影していました。
なお、ティム・クックCEOは2010年に自身の出身校であるオーバーン大学にて式辞のスピーチを行っており、その際のムービーも公開されています。
Auburn University Spring 2010 Commencement Speaker Tim Cook - YouTube
