買収報道の出ているココストア

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コンビニチェーンの「ココストア」が無くなるかもしれない――そんな情報がニュースで報じられたときはびっくりしたものだ。だが、筆者が周囲に話しても「へえ」とか「ほう」とか気の抜けた答えしか返ってこなかった。

東京都内にだってそれなりに出店しているような気がするのにおかしい、と調べてみて驚いた。公式サイトによると2015年4月20日現在、東京23区内にあるのは1店舗だけ。そりゃあ都民に馴染みがないわけだ。そこで23区内唯一のココストアに行ってみた。

【日暮里・舎人ライナーで北上】


「ココストア」は東海地方を中心に全国で約440店舗を展開している。諸説あるが日本でのコンビニ第1号という話もあるほどの老舗だ。先日、業界3位のファミリーマートが買収に乗り出したと報じられた。コンビニ業界の競争の荒波で、もしかしたら今後「am/pm」のように屋号が消滅する可能性だってある。行くなら早いほうがいいというわけだ。

現在残っている足立区の店舗は、都心から少し離れた場所にある。山手線を経由して西日暮里駅で乗り換え、日暮里・舎人ライナーの谷在家駅を目指す。谷在家と書いて、「やざいけ」と読むらしい。知らなかった。

舎人ライナーは、「ゆりかもめ」と同じような新交通システム。住宅地などのどかな景色を見下ろせる高架軌道を走ること約20分、谷在家駅に到着した。そこからさらに歩いて10分ほどでやっと看板が見えてきた。

【90年代を思い出させる雰囲気】


看板を支えるポールはびっしりとさびていて、店先に置かれたガチャガチャのボディも年季が入っている。パッケージに書かれた「20メートル先の音もキャッチ!盗聴器」や「見本以外の物も出るよ!」「はずれはいろんなおもちゃがでます」といった文字を見ていると、90年代にタイムスリップしたかのような気分になる。

店内に入ると昼のピーク時間を過ぎたこともあってか、ほかに客はいない。大手チェーンとは異なり照明がほどほどの明るさで、商品棚はところどころ空きがある。充実した酒とつまみのコーナーが、コンビニが元は酒屋だったことを思い出させてくれる。店内の雰囲気は「デイリーヤマザキ」に近いといったら通じるだろうか。

ココストアといえば店内で調理する焼きたてパンが売りだが、この店舗では取扱っていないので、「カルボナーラスパゲティ」と「三色鶏飯丼」を選んだ。
レジの脇にコーヒーマシンを発見して、レギュラーコーヒーも注文。カプセルをセットして抽出ボタンを押すと、熱いコーヒーがコップに注がれる。意外にもしっかりと時代にキャッチアップしているようだ。

カルボナーラから食べてみると「けっこうイケる」味でびっくり。ソースが麺にしっかり絡み、ボリュームも十分ある。「三色鶏飯丼」は甘辛い味付けでごはんがどんどん食べられる。コーヒーだってほかのコンビニと遜色ないおいしさだった。

「23区内でココストアは珍しいですね」と店員さんに話しかけると、「最近までほかにも2店あったけど、なくなっちゃった」という。ココストアはミニストップとの資本・業務提携が8月で終了することが決まっているが、ファミリーマートによる買収の展開はまだわからない。

「くるまやラーメン」「バーミヤン」「紳士服コナカ」といったロードサイドなチェーン店が周囲に建ち並ぶエリアに位置するこの店舗も、いずれ姿を変えてしまうんだろうか。

すぐ近くにあるセブン-イレブンはココストアと対照的に客は多く、照明が明るくピカピカでなんだかまぶしかった。