その昔、「地震・雷・火事・オヤジ」という言葉があった。父親は一家の長であり、恐い存在であり、尊敬すべき人・・・と、こういう概念が確かにあったハズなのだが、それも今は昔。厚生労働省が全国の小学校5年生から18歳未満の子供のいる家庭を対象に実施した『全国家庭児童調査』によると、どうも、親が思っているほど子供は親を、とりわけ父親を厳しいと思っていないというのだ。

 同調査によると、40.5%の子供が母親について「厳しい」と回答したのに対し、父親を「厳しい」と回答したのは28.6%。逆に、「甘い」と感じている割合は、母親が17.2%なのに対し、父親は20.4%と上回った。かつての威厳ある父親のイメージはすっかりと影をひそめ、厳父慈母が理想とされる時代は過去のものになってしまったよう・・・。

 「昔と比べ、最近では父親自身のしつけに対する価値観や態度に変化がで出てきています。例えば、妻や子供に対して上からモノを言うのは勝手、自己中であり、批判を受けやすい。そこで、子供の目線になって子供を理解しよう、うまく導いていこうとする父親が増えたのです」(社団法人 家庭問題情報センター 事務局長 永田秋夫さん)

 現代の日本は「父親不在」の時代とも言われ、「二人の母親」と揶揄されることもしばしば。父親変貌の背景には、少子化で子育てに参加する父親が増えた、という事情もあるようだが、父親たるもの、少しは存在感を取り戻したいもの。

 「今は“父親はこうあるべきだ”という概念がなくなった時代。権力をふりかざす父親はナンセンスとされています。子供にすれば、それが“甘い”と捉えられがちですが、実は父親の考えが柔軟化、多様化されてきただけ。むしろ昔に比べると好ましい傾向にあると思いますよ」(同)

 とはいえ、決して「父親は子供になめられていい」ということではない。

 「子供が父親に抱くイメージには、母親の影響も強くあると思います。例えば、日ごろ母親が父親をバカにしたような発言をしたり、『お父さんみたくならないように〜』なんて言っているようではいけません。子供のしつけにおいては夫婦間の役割やバランスが大切。そして、何より愛情をもって接することが肝心なのです」(同)

 昔のように、一方的に怒る、叱るでは本当の意味でのしつけにはならず、親子間の溝が深まるばかり。それを心得た現代の父親は、「甘い」ではなく、「寛容」なのだ! というコトだろうか・・・?(清川睦子/verb)

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