いじめなんて子どもの世界の話で、大人がするわけがない。そんな風に思っている人もいるかもしれないが、実際には大人の世界にもいじめが存在する。むしろ変に知恵が付いている分だけ、陰湿でタチが悪い。

 職場で上司や同僚から受ける「職場いじめ」はもちろん、取引先が優位な力関係を利用して、不当な要求を突きつけてくる「取引先いじめ」なんていうのもある。

 そんな取引先いじめの摘発の強化に、公正取引委員会が乗り出した。4月28日には、家電量販店など大規模小売業者による「取引先いじめ」の規制事例を示した新告示を制定。これまで、主にデパートを対象にした「百貨店業告示」というものがあったが、新公示では、新たに家電量販店やコンビニエンスストアなども規制の対象になった。

 具体的にどんな「取引先いじめ」が独占禁止法違反になるのかというと、まずは不当な返品。例えば、業者に製品を大量に作らせ、売れなかったからと一方的に引き取らせる。もちろん代金も支払わない。あらかじめそんな取り決めが両者の間でなされていないのであれば、それは不当な返品と見なされる。

 それから、不当な値引きの強要。例えばセールで値引き販売をする際に、その値引き分だけ、納入業者に仕入れ価格も値引きさせる。自分でセールをやっておきながら、その差額を業者に補填させようというわけなのだ。不当な値引きは、消費税が総額表示に切り替わる際に多く見られたという。

 そのほか商品を納入した業者に、陳列補充などの作業をさせる企業がある。これも同意がなければ、「取引先いじめ」にあたる。

 商品を置いてやっているんだから従え。イヤなら別にいいんだよ。その代わり取引を一切停止させてもらうから。いずれの行為も大規模小売業者と中小納入業者の間にある、そんな力関係を利用したものだ。中小納入業者にしてみれば、商品を置いてもらえなくなることは死活問題。だからイヤでも従ってしまう。

 ただ最終的に割を食うのは消費者。品質や価格など純粋な企業努力で、勝負してもらいたいものだ。(文/verb)