曲がり角にある日産と三菱の提携の行方
2010年、日産自動車と三菱自動車工業は互いの事業拡大のために協力関係を持つことに合意、翌年に正式契約をして合弁会社のNMKVを設立した。目的は日本市場における軽自動車の共同開発・製造・販売である。新車の販売不振が続く中、比較的好調な軽自動車市場で両社のシェアを伸ばすのが狙いだ。
本来、日産はあまり軽自動車市場が得意ではない。スズキのOEMを受けるなどして断続的に取り扱っていた程度だ。一方、三菱はミニカなど自社生産の人気車種を有していたが、近年はスズキやダイハツに水をあけられている。この提携は、軽自動車市場で巻き返しを図りたい両社の思惑が一致したというわけだ。
この合弁会社では互いの役割分担がある程度はっきり決められており、日産は部品調達・企画・デザインなどを行い、三菱が製造・開発などを担当する。2013年の6月にトールワゴン車(日産・デイズ、三菱・eKワゴン)が登場したのを皮切りに、2014年2月までに4車種が次々市場に出た。両社のシェアは向上し、この提携は「互いの弱点を補い合える理想的な業務提携」と評され、順調に推移しているかに思われていた。
ところが、2014年6月に開かれた日産の株主総会で、同社のCEOであるゴーン氏が「軽自動車の自社工場生産」を肯定する発言を行った。国内年間生産100万台という目標を達成するには、それが必要な選択肢の一つになってきていたのである。三菱にとってこれは重大な問題だ。なぜならば、同社は日産が販売する分を生産することで、多くの生産台数を確保して工場稼働率を上げているからだ。ゴーン氏の発言は、両者の利益バランスを崩しかねない要素を孕んでいるというわけだ。
もっとも、先述のようにこの提携は実績を以って効果を証明してきている。ここで提携解消に至れば、両社はせっかく軽自動車市場に築きかけた橋頭堡を失いかねない。そこで、三菱が譲って生産の一部を日産の工場に移すのではないかと言われているが、日産が生産する場合には三菱に対して特許料などの支払いが発生するとされ、それを販売価格に上乗せするのは難しいと思われる。
既に、軽自動車が新車販売の中で4割に達しており、カーメーカーにとって無視できない市場であることは間違いない。しかし、今年の7月以降はその売れ行きに陰りが見え始め、以前のような特需は当面見込めなくなってきた。そのような中、EV(電気自動車)などの新たな市場が開拓されつつあり、NMKVも開発に注力すると発表している。さらに、将来的には同社を軸に両社が合併して、業界再編の起爆剤になる可能性がないわけではない。結局、互いに不満を抱えながらも現状維持に落ち着くことが、望ましい結末だといえるのではないだろうか。