IT企業が続々と移転中 日本版シリコンバレーは福岡にできる?
グーグル、フェイスブック、アップル、インテル......これら世界を代表するIT企業には、ひとつの共通点があります。
それは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコのベイエリア南部に位置するいわゆる"シリコンバレー"に本拠を置いているということ。上に挙げたほかにも、ヒューレット・パッカードやヤフー、アドビなど、名だたるIT企業が当地で生まれています。
なぜシリコンバレーから、このような優良企業が数多く生まれるのでしょうか? その理由の1つは、トランジスタ発明者の1人であるウィリアム・ショックレーと当地に所在するスタンフォード大学に関係があります。ショックレーは1956年、現在のシリコンバレーに「ショックレー半導体研究所」を創設。インテル創業者であるロバート・ノイス、ゴードン・ムーアもここで働き、「シリコン(半導体の主原料)の街」の基礎を築きました。
また、スタンフォード大学はヤフー、ヒューレット・パッカードなど、現在、IT業界をけん引する企業の創業者を輩出しています。これらの創業者たちは同大学に在学中、あるいは、卒業後に周辺で起業したため、シリコンバレーにIT関連企業が集まりました。
書籍『シリコンバレー 最強の仕組み』によると、ショックレーやスタンフォード大学だけでなく、シリコンバレーに存在する「エコシステム」が、ビジネスに前向きな起業家たちを支えているといいます。
エコシステムとは本来、生態系との意味を持つ言葉ですが、転じて企業間の連携、共存共栄を表すときにも使われます。シリコンバレーのエコシステムで特筆すべきは、法律事務所、会計事務所、銀行などとの連携もあること。こうした起業家を支援する土壌が、シリコンバレー繁栄の要因といえそうです。
日本でシリコンバレーのような仕組みが、なかなかできないと嘆く財界人、エコノミストなどもいます。しかし、東京・渋谷には1990年代からIT企業が集まり、「ビットバレー」を形成しました。一時は、六本木ヒルズなどに居を移した企業もありましたが、渋谷ヒカリエにDeNA、LINEが入居し、再び注目を集めています。
一方で近年、ITエンジニア、クリエイターの移住や定住が進んでいるのが福岡市。LINEが国内第2の拠点として自社ビルを建設中で、現地での人材採用も行われています。さらに安倍内閣による規制・制度改革の柱として昨年、新設された『国家戦略特区』の一つに、福岡市が『創業支援のための改革拠点』(創業特区)に選定されました。これにより起業家を支援する土壌はますます醸成されており、今後、スタートアップ企業が福岡に集まってくることが見込まれています。渋谷「ビットバレー」の次は福岡の「ハカタンバレー」誕生......なんてことも十分にありえそうです。
9月3日には、こうした企業への就・転職を支援する、「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」のトークイベントが、東京・代官山で開催されました。すでに福岡に移住したデザイナーや、もともと住んでいるクリエイターも登場し、質疑応答では「再来週、福岡に行ってほかの人の話も聞きたい」との意気込みを話す参加者も。
シリコンバレーでの成功例に学びつつ、日本の社会風土にあったシステムを構築できれば、日本でも世界を代表するハイテク企業が集まる巨大都市が形成されるなんてこともあるかもしれません。それが、渋谷になるのか、はたまた福岡になるのか......。各地域の取組み、そしてIT企業の動向から目が離せません。
【関連リンク】
ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ
http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/