若い世代の支持が議論に(2008年12月撮影)

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東京都知事選の得票で4位に入った元航空幕僚長田母神俊雄氏(65)が20代など若い世代の支持を集めていることが、マスコミの出口調査で分かった。「ネット右翼」の伸長を示すものとして、論議になっている。

「テレビ見ていると、10%ぐらいの票が入っているんです。そういう意味では、一定の成果があったかなと」

田母神俊雄氏は、2014年2月9日夜の開票時にこう戦いを振り返った。

20代の投票先で24%を占め2位に

舛添要一氏(65)が200万票以上の得票で圧勝したことに、田母神氏は、「組織票が強かった」と漏らした。とはいえ、泡沫候補とされながらも、ネット上で若い人たちに相当支持されるようになったとして、満足感を示した。

実際、田母神氏は、若い世代に支持される度合いが高かったらしい。

朝日新聞の出口調査によると、20代の投票先トップは舛添氏の36%だったものの、田母神氏は、それに迫る24%を得て2位だった。得票数2、3位の宇都宮健児(67)、細川護煕(76)両氏は、それぞれ19%、11%だ。

また、TOKYO MXテレビの開票速報でも、田母神氏は20代で舛添氏に迫る割合を出口調査で示していた。20〜40代までだと、舛添氏に次いで2位に食い込んでいる。性別では、男性が13%と女性7%より多く、番組では、選挙ではあまり見ないような20〜30代の若い男性が遊説先に多かったと紹介していた。

田母神氏の人気は、若い世代が多いネット上で支えられていたようだ。

産経新聞の記事によると、ホットリンクがツイッター上での候補者出現割合を分析したところ、田母神氏がトップの33%を占めた。次いで、宇都宮氏の23%で、舛添氏は20%に留まった。田母神氏は、「ネット右翼」が多いとされる2ちゃんねるやニコニコ動画で話題に上ることも多い。共産、社民両党が推した宇都宮氏も若い世代の関心を集めており、長引く不況と世代間格差の中で明るい見通しが持てない現状への不満が支持に反映している可能性もありそうだ。

「新保守層」「極右」と賛否分かれる

自民党元衆院議員の早川忠孝さんは、自らのブログで、田母神俊雄氏が60万票の得票を得たことから、保守系政党間で自分の陣営に引き入れようとする競争が始まると指摘した。それは、「日本全国で100万票ぐらい個人で獲得する可能性がある候補者だということになる」からだそうだ。

また、評論家の古谷経衡さんは、ヤフー・ニュースサイト上で、ネット右翼をネット保守と言い換えたうえで、田母神氏が得た60万票ほどがネット保守の勢力を示すものだとした。そして、そこから逆算して、日本全体では約250万人のネット保守がいるのではないかと試算した。

これは、国会議員にして、2、3議席分の勢力だという。ただ、古谷さんは、日本の右傾化との指摘には懐疑的で、まだ共産支持者の半分に過ぎず、マイノリティーに留まっていると指摘している。

ネット上では、「ネトウヨ層の政治的影響力が強まった」「新保守層これから増えることは間違いない」と肯定的な向きは多い。その一方で、「この人たちが社会の主力になる20年後が怖い」「やっぱ極右の伸張が一番の問題だな」などと懸念する声も相次いでいる。

確かに、田母神氏の遊説を聞くと、侵略戦争や南京大虐殺、慰安婦の強制連行を全部ウソだと主張、新宿・歌舞伎町の一部や新大久保などで不法滞在の外国人などを徹底的に取り締まるといった過激な主張も見られる。しかし、同時に、都民税の減税や公共事業の拡大を通じた景気回復を訴えたり、子育て支援や高齢者対策を打ち出したりもしている。

むしろ遊説では後者を先に持ち出し、「私は本当にいい人なんです」と繰り返すなどしており、こうしたソフト路線が支持を伸ばしたとの指摘もあるようだ。