旅行シーズンだというのに、ソウル市内の観光スポットには日本人が少ない。現地ではどんな影響が?

写真拡大

かつての韓流ブームもどこへやら。韓国が思わぬところでヒーヒー言っている。

昨年3月、単月としては過去最高となる約36万人の日本人観光客韓国を訪れたが、竹島問題など日韓関係の悪化によって、昨年9月以降、前年割れが続いているのだ。

この事態に、今年4月、韓国の旅行会社約1万5000社からなる韓国旅行業協会は政府に窮状を訴え、緊急の金融支援を求めたほどだ。

影響は旅行会社だけにとどまらず、広告にヨン様を起用して日本人向けにガンガンとPRを続けてきたロッテグループの「ロッテホテル」が今年の1〜3月期決算で営業赤字に陥るなど、ホテル業界もダメージを受けているという。

そうした状況は、直近のデータでも変わらないようで、JTBがまとめた夏休み期間中(7月15日〜8月31日)の海外旅行人員予想によると、韓国は前年比24・8%減になる見通し。

いったい、現地はどうなってるのか? 夏の旅行シーズンに突入した7月下旬、ソウルの観光スポットを歩いてみた。

まず、朝鮮王朝時代の王宮である景福宮(キョンボックン)に向かう。道中、タクシーの運転手がこう嘆いた。

「日本からのお客さんは3、4割減っている印象です。理由? 2010年の秋、北朝鮮が延坪島(ヨンピョンド)を攻撃して以降、『韓国は危険』と感じる人が増えているのでは」

到着した景福宮では、入場口の男性スタッフがこう語る。

「以前は週末になると、たくさんの日本人観光客が来ていましたが、3割から4割減りました。代わりに、中国人観光客が増えていますが……」

最大のショッピング街、“ソウルの原宿”ともいわれる明洞(ミョンドン)には、平日と週末の2度訪れてみた。

すると、週末こそ中国人観光客が多いこともあり、以前とそれほど変わらないにぎわいだったが、平日は“ドン引きレベル”の閑散とした状態だった。

待ち合わせ場所としても有名なファッションビル「ミリオレ」前から目抜き通りを見下ろす。地下鉄の駅が近くにあり、ここから緩やかな下り坂のショッピング街が始まるスポットだ。以前ならこのビルの前まで日本人観光客でごった返していたのだが、現在はスカスカ……。

「ミリオレ」1階にあるメンズファッション店の40代男性スタッフが話す。

「日本人が減って、ウチの店でも5割ほど客足が減った印象です。当然、商売には大打撃ですよ。円安、ウォン高、日本の不況などが原因でしょうか……」

確かに、円安、ウォン高は記者も実感する。レートをざっくり言うと、1年半ほど前は「1万ウォン=750円」くらいで計算できていたのが、今は「1万ウォン=900円」といった具合だ。

日本人観光客が激減する一方で、前出の景福宮の入場口スタッフの言うように、最近は中国人観光客が増えた。しかし、単純にそれで問題解決とはいかない。日本人観光客の減少分を補うまでには至っていないからだ。

前出のメンズファッション店の男性スタッフもこうコボす。

中国人のお客さんは増えているけど、マナーが悪くて大変。必ず値下げ交渉をして、しかも、かなり強気で……。その点、日本のお客さんは紳士的でよかった」

とまあ、日本人の“韓国離れ”への悲鳴があちこちで聞かれた。だが、引っかかったのは、竹島訪問など李明博(イミョンバク)政権時代から続く一連の反日アクションを原因として挙げる声が、あまりにも少なかったこと。

メディアも同様で、昨年末、日本人観光客減少についての記事を掲載した経済紙『韓国経済新聞』も、「円安により日本人の購買力が落ちたことが韓国訪問の減少につながっていると分析できる」として、反日アクションの影響についてはさらっと紹介する程度だった。

デリケートな問題だけに、特に観光関連業者などは触れにくいのだろうが、むしろ、そこに問題の根深さを感じてしまう。

つい最近も、朴槿惠(パククネ)大統領が中韓首脳会談の席で、わざわざ「歴史認識を間違う日本はさておき、両国の交流を深めましょう」という趣旨の発言をし、サッカー・東アジア杯の日韓戦では、韓国側サポーターが日本を非難する巨大横断幕を掲げた。

焼き肉もショッピングも魅力的だけど、やっぱり今は日本人的にちょっと行きにくい!

(取材・文/吉崎エイジーニョ)