大詰めを迎えたJリーグ、広島と仙台による優勝争い以上に熾烈なのが残留争いだ。すでに札幌のJ2降格が決まり、残りふたつとなった残留枠をめぐって新潟、G大阪、神戸、大宮といったチームが空前の大混戦を繰り広げている。そんななか、神戸が3試合を残した時点で西野朗監督の解任に踏み切り、議論を呼んだ。

神戸の今季の監督解任は4月の和田昌裕前監督に続いて2度目。強豪に変革すべく、G大阪で実績を残した“大物”西野監督を迎え、中・長期的なスパンで強化に取り組むと掲げた方針はどこへ行ったのかというわけだ。

でも、僕に言わせれば、神戸の行き当たりばったりの人事は今年に始まったことではないし、特に驚きはない。何しろ、神戸は経営体制が変わった2004年以降、監督は9年間で13回も入れ替わっているからね。選手補強にしても、04年のイルハンをはじめ、今季も8月に獲得したブラジル人選手がまるで使い物にならないなど、そこそこお金は使うけど強くならないチームというイメージが定着している。

もちろん、西野監督に問題がなかったわけではない。伊野波(いのは)、野沢、大久保といった選手の顔ぶれを見れば、神戸は決して残留争いをするようなチームではないからね。ただ、クラブトップの三木谷浩史会長が西野監督就任時に発した「全面的にバックアップして、将来につなげたい」という言葉には、中身が十分伴わなかったように思う。

今回のタイミングでの解任には三木谷さんの意向が強く反映されたと聞く。彼がクラブ存続の最大の功労者なのは誰もが認めるところだけど、プロ野球の東北楽天を見てもわかるように、長期的なチーム強化という点では、それほど力を注いでいないのかもしれないし、性格的に向いていないのかもしれない。いずれにしても、アブラモビッチ(イングランド・チェルシーのオーナー。世界的な大富豪)とはちょっと違うようだね。

J2の昇格争いにも触れておこう。レギュラーシーズンを終え、1位甲府と2位湘南の自動昇格が決定。3つ目の枠をかけて、3位から6位までの4チーム(京都、横浜FC、千葉、大分)によって、今季から導入されたプレーオフが行なわれている。

このプレーオフ制度について、盛り上がりは見せているけど、僕は疑問を持っている。普段、J2は見向きもされないのに、プレーオフだけ騒がれても、Jリーグ全体のレベルアップ、盛り上がりにはつながらないと思うからだ。それに、もし6位のチーム(大分)が昇格したら大変なことになるよ。本来、シーズンを通して6番目の力しかなかったのだから、J1で通用するはずがないし、だからといって無理して補強などすれば、財政的に逼迫する可能性もある。

僕は新制度導入によるリーグ活性化を目指すなら、まずはアジアでも勝てなくなったJ1のレベルアップから手をつけるべきだと思っている。具体的には、J1からJ2に降格するチームをひとつ増やして4チームにしたい。どことはいわないけど、毎年懲りずに残留争いをしているチームも、今まで以上の危機感を持ってチーム強化に取り組むはず。その姿勢はほかのチームにも波及する。各クラブ間の競争意識をより働かせることがリーグ全体のレベルアップにつながると思うんだけど、どうかな。

(構成/渡辺達也)