ロンドンオリンピックが終了し、女子はアメリカが三連覇、男子はメキシコが初優勝という結果となったが、ブラジル国内の反応が興味深い。

 なでしこジャパンは負けてはしまったものの、昨年のワールドカップ決勝と比較すると、アメリカとの実力差は大分縮まり互角以上の戦いができる内容を示したことで評価できる銀メダルであったと思う。U-23日本代表は、試合毎に成長していたが、韓国戦では相手の思う壺にはまってしまい、巧緻な戦術が見られなかったと感じた。

 一方、ブラジルは悲願の金メダルを狙っていたが、メキシコが連動性の高い堅守とブラジルの守備の脆さを巧みに突いて初タイトルを獲得した。2得点のペラルタ始め決勝に出場した選手は、全員が国内でプレーしていてチームワークの良さは抜群であった。メキシコ流のスタイルを長年、継続していてレベルアップしてきた成果であろう。ブラジルのキャプテン、チアーゴ・シウヴァも、メキシコの素晴らしさに真摯に敗戦を認めるコメントを残す程である。

 メキシコとの決勝戦前も含めて、ブラジル国内で活動している友人たちと話をしていたが、オリンピックの話題は殆どなかった。ブラジルが優勝するものと思っているのか、関心がないのか、そのどちらでもあるように感じていた。

 ブラジルのメディアも、男女のバレーボールの活躍に熱狂していて、ブラジルはバレーボールの国になったと大々的に報道していた程である。サッカー女子代表がなでしこジャパンに敗れてからは、バレーボールへの期待に関心が高まっていたようである。

 サッカーに関しては、ブラジルは初優勝できるものと思い込んでいた人々ばかりであったのかもしれない。しかし、開始早々のイージーなパスミスからの失点から、初めての金には届かなかった。敗戦後からは、メディアの報道が騒然となった。今回の責任追及と自国開催のワールドカップへの不安である。

 マノ・メネーゼス監督批判が、真っ先に起こり始めた。選手選考が間違っていたからだ。このままでは、2014年は任せられない。他の監督に変えなければならない。コパ・アメリカでも、成功していない。ブラジル国内では、ブラジル全国リーグ(Campeonato Brasileiro, Brasileirao)の真っ最中にもかかわらず、各クラブの監督や関係者からも新監督の必要性をコメントし次期監督候補者の実名すら報道されるようになってしまった。

 ホマーリオは、今回のU-23ブラジル代表がオリンピック出場権を獲得したU-20の南米でのチャンピオンに導き、この世代の選手を熟知している現在、サンパウロFCのネイ・フランコ監督がベストだとコメント。サントスFCのムリシー・ハマーリョ、パウメイラスのルイス・フェリッピ・スコラーリなどが監督となるべきであると論調も出てきた。CBF(ブラジルサッカー連盟)は、静観中であるが。

 8月15日、セレソンはオリンピック代表選手に加えて、バルセロナの右サイドバックのダニエウ・アウヴェス、ヴァスコダガマのセンターバックのデデ、MFとしてパウメイラスのパウリィーニョとチェルシーのハミレス、そして、ヴァレンシアのFW、ジョナスなどを召集してスウェーデン代表とし対戦する。

 1958年、ペレがデビューしてセレソンが初めてワールドカップのタイトルを獲った時、決勝の相手はスウェーデンであった。今回の親善試合は、その当時と同様、ストックホルムのラズンダ・スタジアム。セレソンは、当時と同じプルーのユニフォームを着用する。

 ある監督が、メネーゼス監督を擁護するコメントに興味を持てた。”監督は、魔術師でないよ” オリンピックは、所詮、U-23の大会。重要なのは、2014年のワールドカップ制覇であり、その前年のコンフェデレーションズ・カップである。興味深い、そのための準備が、スタートする。