東芝の“商魂”は“売国魂”なのではないかと物議を醸している。
 同社は先ごろ、今年の2月末に経営破綻した半導体メモリー会社、エルピーダメモリの再建支援を決める第1次入札で落選した。しかし、2次入札に残った海外勢3社の中から韓国の半導体大手、SKハイニックスと連携して共同で応札する作戦に転じたのだ。
 「ここでエルピーダを逃がせば、韓国のサムスン電子と決定的な差がつく。だからハイニックスに擦り寄ったのですが、両社は長年のライバル関係にある。『もし支援企業に決定した場合、東芝が誇る最先端技術がハイニックスに流出するのではないか』と危惧する声しきりです」(担当記者)

 実際、日本企業には苦い経験がある。ソニーは8年前、通産省(当時)による“技術流出”の警告を無視してサムスン電子と液晶パネルの合弁事業を立ち上げた。その結果、今や最大の勝ち組にのし上がったサムスンに対し「技術のソニー」は“技術流出”のソニーとなって死線をさ迷っている。
 むろん、東芝はソニーの教訓など先刻承知の上。それにもかかわらず、恥も外聞もないエルピーダ買収を画策しているのだ。
 「商売敵と平気で寝ることに『プライドはないのか』とさげすむ向きさえいる。これ自体、東芝のイメージダウンです」(業界関係者)

 そんな折、昨年暮れからNTTドコモが中心となって進めてきた日韓企業によるスマホ向け通信用半導体の開発会社設立が、断念に追い込まれた。理由は、韓国側への技術流出に対する参加予定国内メーカーの警戒心だという。ここに東芝は参加していない。
 だからこそ今回の擦り寄りが、周囲には「まるで売国奴」と写るのだ。
 その東芝は、経団連の副会長を務める西田厚聡会長が、米倉弘昌会長の後任有力候補に浮上しているという。プライドなき商魂を見せつけたことが「ポスト米倉」に大きな影を落とさなければいいのだが…。