西武から自由契約となった、G・G・佐藤外野手(33)=本名・佐藤隆彦=が、イタリアプロ野球・セリエAの強豪「フォルティテュード・ボローニャ」に入団することが24日、分かった。同球団が発表した。

 佐藤は2007年から3年連続で20本塁打以上を放つなど西武の中軸として活躍したが、10年に左肩と両ひじの手術を受け昨年は1軍出場なし。オフに戦力外通告されていた。ボローニャはイタリアリーグ制覇9度、欧州王者3度の強豪。

http://www.sanspo.com/baseball/news/120225/bsr1202250501000-n1.htm




誤解されている方をよく見かけるのですが、GG佐藤の挑戦するボローニャは「セリエA」のチームではないです。

イタリアのスポーツのリーグのトップカテゴリーは基本的に「セリエA」だというのは有名な話だと思うのですが、野球界に関して違います。

ちなみに、wikipediaに書いてる「セリエA」が前身ってのもちょっと違いますね。
2年前に、セリエAに所属するチームの中から、資金力のあるチームを集めてIBL(イタリアンベースボールリーグ)として独立するという形になりました。セリエAも別にまだ存在します。中日ドラゴンズでプレーするエンジェルベルト・ソト投手も、一昨年まではそちらのほうでプレーしてました。
以前と違って、昇格・降格争いというのはなくなってしまったのですが、資金力のないチームは容赦なく脱退させられます。
旧セリエAは日本で言うなでしこリーグのようなイメージで、プロ契約の選手とそうじゃない選手に分かれていたのですが今は完全にプロ化したという風に謳ってますね。
豪州リーグ同様、MLBからの資金援助も大きかったようです。

プロ化したことによって、各球団がつれてくる外国人選手のクオリティーにもだいぶ変化が生じました。
かつてはだいたいが1Aクラスから2Aクラスの中南米出身選手か、イタリア系アメリカ人だったように記憶しています。

今年からメキシカンリーグのチームに移籍するらしいのですが、GGの来るボローニャには昨年まで2006年のワールドベースボールクラシックでベネズエラ代表としてプレーしたビクトール・モレノも在籍していました。
あとリミニにはかつてヤンキースやブルージェイズで活躍したMLB通産64本塁打のジョシュ・フェルプスも在籍。

今のIBLになってからやってきた、NPB経験者はバーナムJr(元ロッテ)、ジム・ブラウワー(元広島)、そして現在もイタリアでプレーするするダーウィン・クビアン(元阪神・サンマリノ在籍)に続いて4人目。
もちろん、日本人選手だと始めての挑戦になりますね。

レベル的には1Aくらいの水準なんですが、外国人選手に関してはレベルが跳ね上がります。
ユーロ国籍を持っている選手は無制限なのですが、それを除いて外国人枠は3枠。3AやMLB経験者が珍しくない今のIBLの助っ人選手に求められるものは、日本で想像されている以上にシビアだと思いますよ。

10年ほど前に旧セリエAでプレーした湊川誠隆(元中日)、前田勝宏(元西武)、小野剛(元西武)がいた頃とはいろいろ事情も変わってきてるんじゃないでしょうか?


さて、ボローニャのチーム事情なんですがタイトルにも書いたようにめちゃくちゃ強いです。
イタリアリーグ制覇9度、欧州王者3度の実績を誇っています。
IBL誕生前年の2009年にセリエAを制覇。
ヨーロピアンカップ(クラブ欧州選手権・平たく言うと野球版チャンピオンズリーグ)も一昨年の2010年大会のチャンピオンに輝いていたりします。
昨シーズンに関しては国内リーグのレギュラーシーズンは29勝13敗で2位。
プレーオフではセカンドステージで敗退。ヨーロピアンカップも準決勝敗退でした。
タイトルからは1年遠ざかってるわけですね。

ボローニャは基本的に投手力に優れたチームのイメージ。
昨シーズンもチーム防御率はリーグトップでした。
ドミニカ出身のサイドハンド・一昨年の投手三冠ヘスス・マトス、イタリア代表のコディー・チーロ、WBCベネズエラ代表のビクトール・モレノをベースとした守りは安定していましたね。

その一方で打力の面ではちょっと物足りない感じもありました。
特にサンマリノの強力打線と比較すると。
そう考えるとGG佐藤はうってつけの存在ではあるのですが・・

Fortitudo Bologna has added corner infielder Takahiko Sato from Japan to the 2012 roster. Manager Marco Nanni plans to use the 34-year-old slugger at third base. He had started his professional career at 23 with the Philadelphia Phillies organization. After 170 games at the Rookie and Single-A level he signed with the Saitama Seibu Lions in 2004. He won two Japan Series titles during his seven-year tenure with the Lions. He also was a member of the Japanese team at the 2008 Olympics. The past two seasons he played for the farm team of Seibu.





現地の記事を見る限りなんと三塁手で起用することが考えられてるようです。

corner infielder Takahiko Sato って紹介されてますけど違和感が半端ない(笑)
いや確かにファーストはちょろっと守ってましたけど。
大学はショートだったらしいですし、見かけによらず器用と聞くのですが大丈夫なのか・・
イタリアの球場は基本天然芝ですし。

実は今オフ、ボローニャはイタリア代表のサード、ジョー・マズッカを昨年のイタリア王者・サンマリノに放出しているんですよね。
その穴埋めとして考えられているみたいです。

佐藤選手がプレーするのは、実はIBLだけではありません。
前述したヨーロピアンカップもボローニャは2012年大会の出場資格も獲得しています。
1次リーグは5月末にサンマリノで開催。
ボローニャは昨シーズンのIBL王者サンマリノの他に、パーターボルン(ドイツ)、ドラッシブルノ(チェコ)、アムステルダム(オランダ)、ホーボーケン(ベルギー)と同居。
上位2チームが9月に行われる準決勝ラウンドに進出します。
昨年のワールドカップでキューバ打線を2安打に封じてオランダ代表を世界一に導いたコルデマンスら要するアムステルダムが侮れないのは言うまでもありませんけど、昨年の大会でボローニャはドイツのヘイデンヘイムに不覚をとられてますし、ドラッシブルノには2010年大会で敗れています。
気の抜けない戦いになるのは間違いないでしょう。
とはいえ、ここ数年は完全プロ化したことによってライバルのオランダと少し差がついてきている状況ですが。
上位もイタリアのチームが独占するようになりましたし、イタリア勢がここ3大会連続で王者に輝いています。
こちらの戦いも非常に楽しみですね。




佐藤選手個人のイタリアでプレーするポイントはやっぱり動くボールですかね。
以前、イタリアでプレーしてた小野剛投手も周りの選手からなぜそんなにフォーシームばっかり投げるのか尋ねられたそうです。
それだけツーシームがスタンダードのリーグなんですよね。

2010年に台湾で行われたインターコンチネンタルカップで、ファームの選手や一部一軍の若手選手で構成された日本代表はIBLの選手をベースに構成されたイタリア代表に完封負けを許しています。
実はそのとき、イタリアの先発した投手は佐藤選手がチームメイトになるコディー・チーロなんですよ。
彼はいわゆるハードシンカーを多投するピッチャーで、これに慣れてない日本の若手選手は苦しめられていました。
イタリアにはこの手のピッチャーがたくさんいるわけです。

佐藤選手はマイナーリーグでのプレー経験もあるのである程度慣れてると思いますけど。オリンピックじゃオランダ戦でホームラン打ってますし。


最後に、GG佐藤が挑戦する意味とはなにかを考えてみる。
やっぱりそれはプロ野球選手のセカンドキャリアの選択肢が広がるということでしょうかね。
いや野球を続けるんだからセカンドキャリアとは言いませんか。
今のイタリアの外国人契約でやってくる選手はそれなりに待遇は悪くないです。単純に収入だけなら日本の独立リーグよりずっといいと思います。
東南アジアで今、元Jリーガーが活躍しているのは有名な話でしょう。
彼らの活躍によって、Jリーグのトライアウトにもアジアのチームのスカウト来るようになったんだそうです。

佐藤選手の活躍によって、元プロ野球選手の選択肢が広がって、欧州球界でプレーする日本人ももっと増えるかもしれません。
それはこれから発展を目指すヨーロッパ球界にとっても歓迎していることだと思います。

実は彼の挑戦が背負っているものって、想像以上に小さくないものなのかもしれませんよね。
活躍に期待しましょう。