○ 日本:4 vs 0:マレーシア ●

■万吉:
一昨日は大勝だったようだね。翌日のスポーツ紙は概ね好評価だったな。ところで某スポーツ紙に『関塚監督、采配ずばり!』とあったが、具体的にはどういう事なんだい?

★珍蔵:
采配ずばり?…はて?…関塚監督の采配が駄目な事は沢山あっても、上手かったと言える事は何一つないと思うがな。なにしろ役所みたいに決まった采配しかしない人だ。何の事だろう。具体的に何か書いてなかったかい?

■万吉:
『前回のシリア戦は守備的戦術で逃げ切れなかったのを、前戦で先発したMF&FW6人中4人を入れ替える「奇策」をした』、と書いてあったよ。

★珍蔵:
ああん?メンバーを変えて戦った事を「奇策」といっているのか。それが采配ズバリか。そんなこと言ったら例えばバルセロナなんて毎試合「奇策」だよ。

今のU‐23日本代表はそれほど警戒する選手がいる訳ではないし、しかも相手は敗退が決まっているマレーシア。若手に経験を積ませる機会として今回の試合を捉えており、あまり相手の選手構成など気にしていなかったろう。奇策というのは「人の予想もしない奇抜なはかりごと。奇計。」を意味するわけだが、相手にとって気にもしていない様な事は「奇抜なはかりごと」とか「奇計」とは言わないよ。それに予想の範囲内だと思うよ、あのメンバーは。日本語の使い方を間違っているよ。

それにシリア戦は守備的だったのだろうか。勝ちに行ったが逆に押し込まれて終始守勢だった、ということだろう。別に守備的なサッカーを目指していたわけではなく、そうなってしまった、という事だと思うのだが。
いつも思うけど、スポーツ新聞のサッカー記事はキチンとした人が書いているのかな。

■万吉:
まあ、日本の組織ジャーナリストは、世界的にも珍しい番記者制度を採り入れているからな。担当組織の一員か?というくらい一体化しているから、内部情報量は膨大になる。しかし取材対象が身内同然になってしまい、取材対象について都合の悪いことは書けなくなってしまうところがある。つまり目線を向ける相手が読者ではなくなってしまうわけだな。だからボロクソな批判記事はなかなか書けない。そんなもの書いておいて、翌朝「どうもー。今朝もご機嫌ですね」と、顔は出せないからな。

優良コンテンツである代表サッカーを牛耳っているサッカー協会には嫌われたくはないわけだし、そこで無難な言葉を探すうちに訳が分からんこじつけになってしまう事もあるだろう。一般受けすればいいや、とか。壊すべきシステムではあるのだがね。

★珍蔵:
確かにそれぞれに事情があるのは理解できる。僕も自分に関わる事は批判できないし。でもジャーナリズムとしては問題だな。そういうシステムで得た内部情報は、批判でも何でもぜひ書いて欲しいものだね。

■万吉:
関塚監督の「昨日の試合に関しては一つ成長できた」という談話も載っていたが、この談話も腹が立つのではないかな、先生は。

★万吉:
何度も言うけどマレーシアだからね、相手は。はっきり言って超格下、普通に言っても超格下だ。しかもマレーシアは若手に経験を積まそうとメンバーを落としてきた。そして日本にとっては何点取れるかが課題である重要な試合だった。もちろん、そういう意味での重圧はあったのだろうが、重圧が無い試合なんて試合ではない。どんな試合でも重圧はある。

韓国に接戦の末勝ったのなら分かるが、あの勝利を「成長」と言ってしまう考え方が僕には良く分からない。強いていえば「格下とはいえ、ほんの少だけだがやっとまともなサッカーが出来たと思う。」程度の事だろう。成長というより、マイナスだったのがやっとゼロに戻ったが、相手が格下だったのでそれが本物かどうかは分からない、というところだよ。