そしていよいよ、講演は核心に及び、選手を掌握してきたコミュニケーション術に話が及ぶ。コワモテなイメージの強い落合氏だが、実際には選手の個性に応じて、接し方をそのつど変えてきたという。

「性格を考えてコメントする必要があった。森野(将彦)にはかなりきつく言った。昨年は太って失敗。太ればボールが飛ぶと思ったんだろうが、アイツは痩せなきゃダメ。ドアラ(中日のマスコット)みたいな顔しやがって(笑)。

 荒木(雅博)が心配。繊細でキレやすい。ボールの球をストライクと言われると、その日はもう全部打てない」


 まさに選手の特徴をインプットしたうえで、適材適所で選手を起用する ──。さながら落合学校の先生と生徒のような関係性もかいま見えてくる。落合氏の選手評はなおも続く。

「井端(弘和)は不安げで、すぐ(ベンチにいる落合氏の)顔を見てくる。和田(一浩)はベンチで『あれボールだよね』とよく言ってた」

 だが、昨シーズン、落合氏が全幅の信頼を置いていたキャッチャーの谷繁元信に対しては、当初、あまり選手としての評価が高くなかったことも今回、初めて明かした。

「谷繁(元信)は本来キャッチャー向きの性格ではない。しかし、ここ2〜3年で困っているピッチャーをフォローしてあげられる、真のキャッチャーの意識が芽生えてきた」

 さらに、選手の成長について話が及ぶと淡々とした口調ながらも、目を細め喜ぶ一幕も ‥‥。

「ドラゴンズの外野守備でいちばんうまいのは平田(良介)。大島(洋平)の数段上。アイツは結婚してよくなった。それまでは痛いとかよく言っていたが、それがなくなった」

 選手にとって、ケガとは常に隣り合わせ。監督時代に選手の故障に悩まされていた落合氏は、誰よりも選手のコンディションをチェックしていた。それだけに、昨シーズン、ケガで棒に振った選手に対しての辛口エールも飛びだした。

「昨年遊んでいた中田賢一、山本昌広、小笠原(孝)、朝倉(健太)は、ケガを治せばやれる力はある。というより、やらなければクビ切られてしまいますからね(笑)」

 まさに、至言だろう。