アジアシリーズ2011は、決勝戦で韓国代表の三星ライオンズが日本代表の福岡ソフトバンクホークスを5対3で下し、優勝した。日本勢が優勝を逸するのは初めて

 ホークスは初回、松田宣浩のタイムリーヒットで1点を先制したが、5回、これまでライオンズ打線をわずか1安打に抑えていたホークス先発の岩嵜翔が突如乱れ、5失点。追うホークスは8回、長谷川勇也のタイムリーヒットなどで2点を返すも、最後はライオンズに逃げ切りを許した。

 日本勢としては初めて優勝を逃したホークスだったが、その戦力は中日ドラゴンズとの日本シリーズと比較して大きく劣っていた。
 ベンチ入り選手からは、今季16勝和田毅8勝ながら防御率1.94杉内俊哉の両先発左腕、チーム最多の19勝D.J.ホールトン、日本シリーズでは苦しんだものの19セーブを記録した馬原孝浩、レギュラーシーズンから日本シリーズまで獅子奮迅の活躍を見せたブライアン・ファルケンボーグ、野手では日本シリーズMVP小久保裕紀、逆ポストシーズン男の汚名を返上した松中信彦アレックス・カブレラホセ・オーティズといった外国人選手の名が消えていた。

 それぞれに契約の都合や怪我、一年間の労をねぎらう狙いがあったのだろうが、ベンチ入り選手を見るだけで、ホークスがこのアジアシリーズにどんな気持ちで臨んでいたのか、わかる。

 アジアシリーズを軽視しているのは、ホークスだけではない。わが国からはこれまでに、2005年に千葉ロッテマリーンズ、2006年に北海道日本ハムファイターズ、2007年にドラゴンズ、2008年に埼玉西武ライオンズが出場しているが、その戦力はレギュラーシーズン、クライマックス・シリーズ、日本シリーズに比べ劣っていた。

 たしかに、出場国を見回すと、わが国と韓国が頭1つ、2つ飛び出している。また、過去2回のWBC(World Baseball Classic)では、わが国が2連覇を果たしたという自負もある。

 だが、アジアシリーズでは、最初から主力選手を出さないとするわが国の姿勢は、他の出場国に対し失礼ではないのか

 わが国にはむしろ、野球大国アメリカに嘗められてきた歴史があり、その度に悔しい思いをしてきた
 1962年には、わが国はメジャーリーグに、両国のチャンピオンチーム同士が戦う「真のワールド・シリーズ」の開催を提案したが、当時のコミッショナー、フォード・フリック氏は「日米の力量差は大きく、時期尚早」と拒否。代わって、マイナーリーグの3Aクラスのチャンピオンチームと戦う「ジュニア・ワールド・シリーズ」を提案された。

 また現地紙は、「日本は毎年シーズン終了後、メジャーリーグの最下位チームと戦ってはどうか。日本が敗れても、メジャーリーグのチームに負けたのだから、面子は立つだろう。万が一日本が勝ったなら、翌年は最下位から2番目のチームと戦い、だんだんとレベルを上げていけばいい」と、無礼な提案で、日本側の神経を逆撫でした。

 「真の日本シリーズ」の提案から半世紀。わが国は2度もWBCを制し、メジャーリーグには毎年、複数の選手を輩出している。高校野球や大学野球、社会人野球にも、メジャーのスカウトに見られるようになった。
 だが、メジャーリーグ側の態度は変わっていない。2度のWBCでは、ベストメンバーを揃えられず、そのことを優勝を逃したことを言い訳にしている。

 一方わが国は、野球大国アメリカとの力量差が以前に比べ縮まったことに浮かれ、かつて自分たちが受けていた屈辱を忘れてしまったのか、アメリカと同じことをアジアのチームにやっている。これでは、アメリカ、メジャーリーグの不遜な態度を責められない

 そんな中で迎えた今大会、日本代表のホークスは、韓国代表のライオンズの前に屈した。
 ライオンズもダック・メティスジャスティン・ジョマノチャ・ウチャンユン・ソンファンの4先発投手、ブルペン投手のアン・ジマンを欠いていたが、さらに主力選手を欠いたホークスはかなわなかった。

 杉内や和田、小久保、松中など主力を欠いたから、など言い訳にならない。これを言い訳にするのなら、2度もWBCで優勝を逸した米国と同じだ。

 ホークスに限らず、わが国は今回の敗戦を機に、初心に帰るべきだろう