7月8日、リクルートは2012年春卒業予定の学生の内定状況に関する調査結果を発表した。それによると、東日本大震災の影響で大手企業が選考を延期したことなどにより、6月下旬時点で就職活動を終了した学生の数は全体の34.4%と、前年に比べ11.7ポイント低下。内定率も49.2%と前年より6.6ポイント低下したことがわかった。

 半数近くの就活生たちがいまだ就職できていないことになるわけだが、そんな状況を逆手に取り、ユニークな就職試験を実施することで、より自社のカラーに合った学生を選びだそうとする企業が増えている。

 昨年より一芸入社枠を取り入れた富士通は、約380人の応募者のなかから「大学を休学してJリーグクラブの観客動員増に貢献した学生」や「学生囲碁2冠」ら12人を採用。今年度はその枠を3倍に広げると発表している。

 また、来年、創立100周年を迎える吉本興業は「1県1人採用します」と、47都道府県での採用計画を実施。よしもとクリエイティブエージェンシーで広報を担当する吉川徹氏によると、6千人近くの応募があったそうだ。

「給料さえよけりゃいいというステレオタイプの学生は影をひそめ、自分の地元にプライドを持っている学生がたくさん応募してくれました。『あなたの地元をどうやって盛り上げたいですか?』という質問にも、熱い回答が寄せられましたよ。地方が空洞化しているいま、お笑いで地域コミュニティーを活性化し、心のインフラづくりをできればと考えています」(吉川氏)

 価格比較サイト『ECナビ』の運営を行なうECナビは昨年、日本初のツイッター採用を実施したことで話題となった。そして、今年度の学生を対象に行なったのは“宝探し”。同社人事本部本部長の後藤尚人氏はこう語る。

「選考会1回につき、100人ほどの学生さんに弊社の会議室に集まってもらい、4、5名のグループになってもらいます。ひとつのチームに渡されるのは宝の地図を模した社内の見取り図。各部屋にヒントが施されているので、社内を走り回りながら謎を解いてもらい、制限時間内に宝を見つけ出すグループワークになっています」

 肝心のヒントは、なぞなぞあり、図形を示しただけのものありと難易度は高く、そうとう地アタマのよさが要求される採用試験となっている。こういったユニークな採用方法について、学生の就活状況に詳しい「INOZEMI」主宰の加藤清紀氏はこう語る。

「学生からは『なぜ落ちたのかわからない。理由を明確にしてほしい』というグチをよく聞くんです。そこまで言わなきゃダメ?って感じですが、いまの学生を取り巻く環境が、物心ついたときからすべて可視化されていたのであれば、企業側も自社の特色や採用の意図をはっきり打ち出したほうがミスマッチも減り、双方にとってよい方向に進むと思うんです」

 こうした傾向に気づいた企業が増えてきたことが、いままでになかった珍入社試験が増加している背景にあるようだ。

(取材/山脇麻生)