『PLUS heads』 臺佳彦氏
『ゴールデンエッグス』を制作していることで有名な『PLUS heads』がこのたび初の映画配給を行う。配給する映画は『SING FOR DARFUR(シング・フォー・ダルフール)』という世界規模のチャリティイベント。
2009年ローマ・インディペンデント映画祭「斬新な視点賞」を受賞したスタイリッシュなモノクロ映画。
ダルフールのことが描かれた映画とのことだが、どういった構想や企画が練られているのだろうか。
今回の報告を受け、我がトレビアンニュースはその詳細を聞くべく『PLUS heads』の臺佳彦(だいよしひこ)氏に話を聞きに行くことにした。


■『ゴールデンエッグス』以外にどのようなことを?
記者  『PLUS heads』さんは『The World of GOLDEN EGGS(ザ・ワールド・オブ・ゴールデン・エッグス)』を制作されていることで有名ですが、普段どのような活動をされている会社なのでしょうか?
臺佳彦 僕は元々広告代理店で車やたばこのコマーシャルを制作していたんですよ。13年くらいそれを経験してその後フリーランスでコマーシャルの演出や企画をやりました。僕は自分の考えた物を他人に渡すのが嫌だったので全て自分でやっちゃうんです。ゴールデンエッグスを作った頃、仕事で触れていたCGは、凄いリアルなCGが多かったんです。それはそれで素晴らしいし良いんです。でも、自分の中で一番欲しかったのが、2Dに見える3Dだったので、当時コナミさんの『ウイニングイレブンタクティクス』のオープニングでも2D風な3Dで作成しました。その次に「ゲームの中のCGもプロデュースしてくれませんか?」って言われてシナリオからCG部分の構成を考えたんです。僕はその見た目(ルック)を2.5Dって呼んでるんですよ。

記者 2D風3Dですね。今ではいろんなゲームに使われてますけど、当時はあまり見られませんでしたね。
臺佳彦 そのころ対談した鷹の爪の蛙男商会(小野亮)さんとも話したんですが、彼はフラッシュという手法で、僕はフルCGだったんですが、結果的に目指した方向はあまり違わなかったねと。
記者 キャラクターの性格付けとかは臺さんがお一人で?
臺佳彦 いえ、ゴールデンエッグスに関しては僕が一人で作ってるわけではないんです。ただコンテンツとしてどういう構造なのかとか、最終的なクリエイティブディレクションとか、ブランディングという観点からの戦略は僕が決めます。15分番組だけど、その中に様々な部品が詰め込まれている。英語の字幕を入れるよとか、料理は実写とか、音楽はオリジナル40曲作るとか、15分の中に詰め込まれた部品がバラバラになっていろんなメディアになることを想定してます。代理店出身ですしね。『ターキーレンジャーチップス』はありもしないのにそのうちどこかが作ってくれるだろうと思って、勝手にCMだけ出来てるんです。何年後かにローソンさんがそのコラボで実際に実現したんです。
記者 まさにスピンアウト商品ですね。
臺佳彦 はい、ローズマリーからは本まで出てくるし。英語の本まである。
記者 構想は4年前からあったんですか?
臺佳彦 オンエアが始まったのが2004年1月だから制作はその1年前から行ってました。それでも放送している間にキッズステーションで放送が間に合わなくなって再放送をしてたりとか(笑)。それでも良いですと言ってくれるキッズステーションさんの懐は広いですね。

記者 ゴールデンエッグスを制作するのにどれくらいの時間掛かっているんですか?
臺佳彦 15分制作するのに1ヶ月掛かります。ただ通常のアニメに比べてスピードも速くコストも低い。そうしないとうちみたいな小さい会社はアニメ作れないので。ただ制作費は自分たちで持ちます。自己資金で作るっていうことはライツを管理、コントロールする。こういう作り方をしている会社ってゼロとは言わないですけどあまりないですよね。メディアミックスも自分たちでするから賛同してくれるところだけ仕事しますっていう。初期段階でこの場に集まって「僕はこのようにしたいと思います、OKならこの場にいて下さい」って言います。

■『SING FOR DARFUR』は崇高なもの 是非見て欲しい
記者 初めて映画の配給を行うと聞きました。『SING FOR DARFUR(シング・フォー・ダルフール)』なのですが。これを配給するようになった切っ掛けはあるのでしょうか?
臺佳彦 いくつかあって、『ゴールデンエッグス』でメディアミックスしたりブランド構築したり、ライツ管理したりを数年間すると僕自身それなりの蓄積やネットワークができたんです。『ゴールデンエッグス』は自己資金で制作しましたがそうでなくても良いかなと思いまして、コミュニケーションを作るときに「Powered by PLUS heads」って入れれば良いかなって。もう一つは『ゴールデンエッグス』が大きなブランドになったので、このブランドも何かの形で社会に貢献すべきじゃないのかって思いまして。今年の春から始めたチャリティーイベントはそのひとつです。
そんなときに監督やプロデューサー、ディレクターの方と知り合って、『SING FOR DARFUR』が日本で広まるにはどうしたら良いだろうって相談を受けたんです。この映画は崇高な物なんです。オノヨーコさんが曲を提供していたり出演者がノーギャラだったり。見た目も格好良くて良い映画。これをアートフィルム的なジャンルで公開しても誰も見てくれないと思った。「見て貰うんだとするとこうしたら良いんじゃないの?」って提案したらみんな賛同してくれて。回収の目処なんかないし、その場での口約束ですが。
記者 いろんなところで試写会を行っているようですけど。
臺佳彦 「Powered by PLUS heads」っていうコミュニケーションをしないといけないから、普通の映画会社が単館系の映画として公開しても新しい認知やコミュニケーションは生まれない。そこで僕が無茶ぶりで言ったのが「100箇所で試写会をやるよ」って。頑張るけど100箇所行かなかったらごめんなさい。
記者 一般公開も行うんですか?
臺佳彦 はい、今度渋谷で一般の有料公開も行います。そのときの公開方法も「Powered by PLUS heads」として考えがあって、渋谷の街中で公開劇場が変わるんです。『SING FOR DARFUR』っていう映画観た? 公開してるんだけど渋谷のどこでやってるか分からないんだよ」と言い合える。もちろん公開している劇場を知ることができるサイトは用意してあってパソコンや携帯から確認できる。そこにいけば「今日はここでやってるんだ」とわかる。渋谷で遊んでるのと同じことなんです。
記者 なかなか面白い試みに挑戦されていますね。
臺佳彦 はい、あとこのTシャツはチケットにもなっています。「チケT」って呼んでるんだけど。本当はTシャツそのものを鑑賞券にしたかったんだけどもぎれないからTシャツに鑑賞券を付けた。これ1枚1枚にシリアルナンバーが入っているんです。この映画を大勢の人に見て欲しいですね。


以上のように『PLUS heads inc.』は『SING FOR DARFUR』を切っ掛けに今後もこのようなアーティスティックな企画を輩出していくという。
この場では書くことができないが面白いバンド映像(ヒント:チンドン屋)なども少し見せて貰いこちらも期待が出来る内容となっている。
元広告代理店出身の臺佳彦氏は自らライツを管理することで企画管理することにより成功を収めているようだ。
今度も『ゴールデンエッグス』に次ぐ話題作が出てくるかもしれないし、次なる配給映画も出てくるかもしれない。
数年後にはあちこちで「Powered by PLUS heads」が見られるように期待していよう。

参照:SING FOR DARFUR 公式サイト
参照:ねとらじ × SING FOR DARFUR 特設サイト

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