3月に開催される第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向け、日本代表候補33人が宮崎市内に集結し、合宿を開始した。イチロー外野手(マリナーズ)や松坂大輔投手(レッドソックス)ら豪華な面々がともに練習する姿はWBCへの気分を盛り上げており、合宿初日にはスター選手たちを間近で見ようとサンマリンスタジアム宮崎へ約4万人のファンが殺到。球場周辺では全国から駆けつけたファンの車が長蛇の列を成す光景も見られたという。

こうした状況は国内だけでなく海外メディアにも取り上げられ、WBCへ向けた日本の熱狂ぶりは世界に報道された。米紙ニューヨーク・タイムズもこの様子を伝えているが、同紙電子版には2月17日付で日米の「温度差」を指摘する記事が掲載されている。

この記事を執筆した野球専門ジャーナリストのブラッド・レフトン氏は、日本では北京五輪終了後からWBCに向けて興奮が高まり、代表監督選考が難航したこと、最終的に巨人の原辰徳監督が就任したこと、原監督が代表候補合宿のために最高5週間もチームを離れることなどを紹介。これについて同氏は「米国の球団では、春季キャンプ中に監督が長期間チームを離れる許可を下さない」と監督の選考方法や待遇だけでも日米で違いがあることを指摘した。

また、米国では昨季ナ・リーグのサイ・ヤング賞を受賞したティム・リンスカム投手(ジャイアンツ)や20勝投手4人が誰もWBCに参加しないことを挙げ、「米国の多くの選手は、WBCへの参加がレギュラーシーズンの準備に支障を来たすと感じている」「日本ではWBCのためにレギュラーシーズンを犠牲することもいとわない」と説明。それだけでなく、「日本では代表候補に選出されなかったことに動揺を示す有力選手もいた」としている。

これは松井稼頭央内野手(アストロズ)らを指していると思われるが、辞退者が相次ぐ米国からは特別なことに映るようだ。しかし、中日で辞退者が続出したことには触れていない。

さらにレフトン氏は、日本代表候補投手15人のうち先発投手が12人を占めているのに対し、米国代表候補では21人中6人であることに言及。「日本は先発投手を継投させる作戦を好む」とし、チームのエースが調整不足になることに異議を申し立てたロッテのボビー・バレンタイン監督や日本ハムの吉井理人コーチの発言を「珍しく懸念の声が上がった」と紹介している。ただ、バレンタイン監督が米国代表の情報提供を買って出るなどWBCに協力的なことは掲載しなかった。

米国からは異常にも見える日本の盛り上がりについて、レフトン氏はマンガ「巨人の星」の影響を示唆。ストーリーを「読者は、『大リーグボール』を編み出した日本人投手が日米野球で強力な米国人打者をキリキリ舞いさせたファンタジーに熱狂した」と紹介し、日本人の“大リーグコンプレックス”も暗に示している。