たばこ小売業の売上高と紙巻たばこ販売本数推移

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 喫煙人口が減少している。2018年に日本たばこ産業(以下、JT)が発表した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、2017年との比較で推計37万人の減少となった。

 2018年7月には改正健康増進法が成立し、政府や自治体も規制の強化に乗り出しているほか、たばこ税の増税や健康志向の高まりなどで喫煙者人口が減少している。そのほかにもここ数年で喫煙に関して環境が大きく変化する中、たばこの小売りを主業とする業者が直接影響を受けていることが予想されるが、果たして。

 帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」より2011年度から2017年度まで業績が判明したたばこの小売りを主業とする305社の売上高をみると、表の通り。
 
 売上高は、2016年度まで6年連続の減少となったものの、2017年度は減収傾向から一転し、前年度比8.4%増となった。2013年度の水準にまで回復している。2016年までは、社会的な禁煙意識の高まりからたばこ・喫煙具小売を主業とする業者へも大きくその影響を及ぼした。また、本データで抽出した業者の多くは、たばこの自動販売機を設置して営業している業者。未成年者の喫煙防止を目的として発行されたtaspoカードの所持率の低さや、周辺のコンビニエンスストアの増加に伴い、消費者が流出したことも減収の要因となったといえる。

 ではなぜ2017年度は一転して増収となったのだろうか。背景には、2014年から日本でも普及し始めた加熱式たばこによる影響が大きいと考えられる。JTの推計によると日本のたばこ市場全体に占める加熱式たばこの割合は2018年8月時点で20%を超え、2017年の12%から急上昇している。紙巻たばこと異なりにおいがつきにくいことが喫煙者の間で人気を博している。本体の購入に加え、多彩なフレーバーのタバコやカートリッジの購入者の増加が業績を伸ばす要因となったと売上高の推移から各社の動向が読み取れる。近時は、JTをはじめ大手各社による改良品の発売などもあり、今後も業界内のさらなる競合の激化、紙巻きたばこの販売本数減少を補う形で加熱式たばこの普及率が上昇することが予想され、この動きがたばこ小売業者の業績にも波及するものと思われる。

 来年は東京オリンピック・パラリンピックが控えており、引き続き今後も喫煙について大きく環境が変化するだろう。東京都では、受動喫煙防止条例も制定され、特に飲食店での喫煙に対する規制が強化された。

 上述のように喫煙者と非喫煙者お互いが不快なく過ごせる社会づくりへの取り組みが官民一体となって行われているが、たばこ小売業者は法律や条例、健康意識の高まりといった外部環境の変化に直接影響を受ける業界であり、今後も動向が注目される。