相続トラブルなぜ起きる「宇津井健」死ぬ5時間前に入籍したら…
少子高齢化や核家族化が進む現代では、遺産をめぐる争いの数は確実に増えている。なかには、「死の床の再婚」が、再婚した妻と長男の泥仕合に発展した例もある。ワイドショーを賑わせた故・宇津井健さんの遺族騒動の事例を例に、一般家庭でも起こりうる相続問題について学ぶ。
山口百恵さんと共演した『赤いシリーズ』や、『渡る世間は鬼ばかり』などに出演していた、名優の宇津井健さんが亡くなったのは、2014年3月14日。
宇津井さんは2006年に、45年間連れ添ってきた妻・Yさんと死別。その後、自宅を二世帯住宅に改築し、ひとり息子の家族を迎え入れて同居していた。そんななか、名古屋の有名クラブのママ・Fさんと数十年ぶりに再会したことをきっかけに、宇津井さんが家を出て、同棲生活を送るようになったという。
以前から肺気腫を患っていた宇津井さんは、亡くなる半年ほど前から病院で治療に専念。面倒を見ていたのはFさんだった。
宇津井さんから懇願し、死のわずか5時間前に、2人は入籍した。
彼の生前、「遺産は相続放棄する」と話していたFさんは態度を変えた。かつて宇津井さんが暮らし、現在は息子夫婦が暮らしている、約2億円といわれる豪邸の相続をめぐり、息子と争っている。
そもそも宇津井さんが死去した時点で、Fさん自身に莫大な資産があると思われた。しかし、所有していた不動産は売却され、Fさんが代表を務める会社は、2016年4月に33億円超もの負債を抱えて倒産。巨額の借金返済のために、宇津井さんの遺産が必要になったのではと、うがった見方もされている。
宇津井さんが最期にFさんに見せた「男気」が、争いを招いてしまった。
・宇津井家の相続トラブル 死の直前に再婚した妻VS.長男
「後妻と前妻の子は感情的に揉めます」と話すのは、『磯野家の相続』『モメない相続』などの著書がある、相続問題に詳しい弁護士の長谷川裕雅氏だ。
「後妻と前妻の子供とは、相続で揉める場合が非常に多いんです。一般的に前妻の子供は、離婚したあとに、母親が女手ひとつで育ててくれたという環境が多い。そうなると、苦労したぶん、相続では感情的になってしまうんですね」(長谷川弁護士、以下同)
宇津井さんの場合は、前妻とは死別。再婚したFさんとの間には子供がいなかったが、遺言がなかったことが大きい。
「ご自分が病に臥せっていたなら、籍を入れていなくても、遺言を準備しておくべきでした。相続人以外の方にも、遺贈することができます」
「相続を放棄します」との自らの言葉を、Fさんが撤回したことで、死に際に入籍した事実自体も、美談から醜聞に変わってしまった。
「相続放棄は、被相続人が亡くなってから3カ月以内に、家庭裁判所でその手続きをおこなわなければなりません。いくら記者会見で宣言しようが、法的には効力がありません」
Fさんと長男が相続を争っている家には、長男が家族とともに暮らしている。2018年改正された相続法の施行により、配偶者の居住権が認められるようになるが(2020年4月1日に施行予定)、子供には認められない。
都内の宇津井氏の自宅は、約2億円の資産価値があるといわれ、Fさんには2分の1の1億円を渡すことになるが、長男に現金がない場合は、住宅を売却するしかない。そんな事態を誰より悲しむのは、宇津井さんである。
(週刊FLASH 2019年2月26日号)