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●変換アダプタは音が悪くなる?

ソニーモバイルがMWCで発表した新しいXperiaのスマートフォンは2機種ともにアナログイヤホン端子が省かれました。充電・データ伝送用のUSB Type-C端子を音楽リスニングにも兼用することになります。イヤホン・ヘッドホンがUSB接続になることで生まれるメリット・デメリットについて整理してみたいと思います。

○iPhone 7から始まったデジタル接続イヤホン

そもそもデジタル接続のイヤホンをAndroidスマホよりも先に採用したのは、2016年に発売されたアップルの「iPhone 7」でした。アナログイヤホン端子がなくなって、本体パッケージに付属するイヤホン「EarPods」もその時にLightning端子のものに切り替わっています。

イヤホンやヘッドホンは趣味性の高いオーディオ機器なので、「これからはデジタル接続だと言われても困る」という声にも応えるために、iPhoneにはLightning/3.5mmアナログイヤホンジャックへの変換アダプタが付属します。ただ、この変換アダプタは音に感度の高いユーザーには"音が悪くなる"とあまり歓迎されていないようです。

Lightning端子に直接挿せるデジタル接続のイヤホンもいくつかのオーディオメーカーから発売されていますが、MFi認証を取得するためのハードルがやや高いためか、その数はまだあまり多くはありません。むしろiPhone 7の発売以降はBluetooth接続のワイヤレスヘッドホン・イヤホンの人気が急上昇。今ではiPhoneとのペアリングが簡単にできるアップルの「AirPods」やBeatsの最新のイヤホン・ヘッドホンが人気です。

○最新のXperiaではイヤホン接続がUSB Type-Cに

今回イヤホン接続がUSB Type-Cに切り替わった「Xperia XZ2」と「Xperia XZ2 Compact」では、それぞれ商品のパッケージにUSB Type-Cからアナログイヤホンジャックへの変換端子が付属するので、アナログ接続のヘッドホン・イヤホンは愛用するものが引き続き使えます。

ただ、アダプタを介することで音質に影響が出ないのかは、それぞれの端末が日本で発売されることになってから検証が必要かと思います。新しいXperiaにUSBデジタル接続のイヤホンまで同梱する計画は今のところないようです。代わりに別売品になりますが、ソニーモバイルからUSBデジタル接続とBluetoothワイヤレス接続ができる2Wayハイブリッドスタイルのイヤホン「SBH90C」が同時期に発売されます。

スマホのイヤホン端子がUSBデジタル接続に切り替わることでどんなメリットが生まれるのでしょうか。

●メリットはスマホのデザイン改良や音質向上

そのメリットですが、スマホの側から見ると筐体の気密性を高められるので、スマホ本体の中に水やホコリ、またはそれ以外の機器に悪さをする異物が侵入するリスクが避けられます。またアナログイヤホン端子に関わる基板上の回路が簡略化できることで、本体のエッジがよりスリムにできたり、デザインの自由度も高まります。

さらにオーディオ的な観点から見ると、デジタル接続では、左右チャンネルの音声信号が互いに干渉し合うことによって発生するクロストークノイズの影響を少なく抑えることができるので、ステレオ再生の分離感が明瞭度を増して、音場の立体感も高まると言われています。

この効果はハイレゾ再生の時だけでなく、SpotifyやGoogle Playミュージックなどの定額制音楽配信を聴く時、またはYouTube動画やゲームの音を楽しむ時にも表れてきます。

○デメリットは「使い勝手」の部分

反対にデメリットとしては、主にスマホとイヤホンの使い勝手の部分に出てくることが考えられます。まずiPhoneの場合も良く言われている「音楽を聴きながらスマホが充電できなくなる問題」があります。

iPhoneの場合はパイオニアから発売されているLightning接続のイヤホン「RAYZ Plus」のようにiPhoneを充電しながらの音楽リスニングや通話に対応する製品が発売されています。USB Type-C版のRAYZ Plusのような製品が出てくることを期待しましょう。

音楽プレーヤー型の接続端子がUSBになると、飛行機に乗ったときに同じイヤホンを機内エンターテインメントに接続できなくなります。今回ソニーモバイルから発表されたSBH90CにはUSBから3.5mmアナログイヤホン端子に変換するためのアダプタは付属していません。そのようなアクセサリーが今後サードパーティーなどから製品化されるのか注目です。

○バッテリーの減りも速くなる?

またデジタル接続のイヤホンは内蔵するDACやアンプを動かすためのバッテリーが必要なので、これをUSBで接続しているスマホのバッテリーから給電することになります。そうなると音楽を聴くほどにスマホのバッテリーが速く消費されることにならないのでしょうか。

ソニーモバイルのSBH90CはXperiaからUSB経由で充電できるユニークな機能を備えています。開発担当者に聞いてみたところ、イヤホンのバッテリーがゼロの状態で接続して100%まで充電しても、Xperiaのバッテリーは3%ほどしか減らないそうです。ただ、これは再生するコンテンツによっても変わってくるでしょうし、SBH90C以外のイヤホン・ヘッドホンが出てきた時に試してみる必要がありそうです。

●使いたいスマホに対応しているか

USBデジタル接続のイヤホンはスマホとの互換性についても多少気にする必要があります。Xperia XZ2/XZ2 Compactの開発担当者に訊ねてみたところ、スマホ側としては様々なUSBデジタルイヤホンとの接続互換は確保できるだろうという見立てですが、同じUSB Type-Cでイヤホンをつなぐ仕様のスマホでも、「HTC U11」のように付属のイヤホン以外は使うことができないケースもあります。

SBH90Cの担当者にも同じ質問をぶつけてみたところ、イヤホンの側ではUSB Type-Cを搭載するXperiaとの互換性について検証を終えて、日本国内で発売されているモデルについては問題なく使えることが確認できているそうです。今後は春の発売予定時期までに他社製品との互換性についても検証を進めて、Webサイトなどで結果を公開するとのことでした。

○音モノの魅力に気づくきっかけに

アナログ接続のイヤホンは普及してからの歴史がかなり長いので、デジタル接続のイヤホンに切り替わるとそのインパクトは各方面に表れてくるかもしれません。

それが国内で音楽好きのファンを中心に多くのユーザーを獲得しているXperiaならなおのこと。できればアナログイヤホン端子と両方乗っていた方がベターかもしれませんが、今回のXperiaの決断がきっかけになって、ハイレゾ再生を楽しめたり、色んな音ものコンテンツの明瞭度が高まる効果があるデジタル接続のヘッドホン・イヤホンの魅力に陽が当たることに期待しても良いのではないでしょうか。

筆者もMWCのブースでSBH90Cのサウンドを体験してみましたが、ディティールの情報量がとても豊富で、しかもデジタル臭いカリカリとしたきつさがなく、熱っぽくパワフルなサウンドを楽しむことができました。

他社からもUSB接続のメリットを活かしたイヤホンが揃ってくれば、音や機能の違いを吟味してお気に入りの1台を見つける楽しみも生まれてくるはず。何はともあれ、Xperia XZ2/XZ2 Compactの日本発売の吉報を楽しみに待ちましょう。