スカイロボットは13日、赤外線サーモグラフィカメラを搭載したドローンで野生動物を調査・分析するサービスを10月1日より開始すると発表した。近年多発する野生動物による農作物の被害や人間への危害に対し、ドローンを活用してデータの蓄積から調査・分析、撃退に至るまでを実施する。あくまでも動物保護の観点から、高性能ドローンを用いた「やさしい」害獣防止を行うという。

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 具体的にはカメラを搭載したドローンによる空撮により、データを蓄積し、AIを活用した分析・予測を行う。撃退方法としては、田畑に野生動物が近づくと、ドローンから超音波や苦手なニオイを発して撃退するという。ドローンに爆竹音やサイレンを鳴らす装置を付け、退散を図ることも可能としている。

 夜間や草木の隙間など可視光カメラにて認識できない場合は、赤外線サーモグラフィカメラを活用。農家や自治体のみならず、山菜狩りの高齢者や登山者にも配慮したサービスを実現する。

 スカイロボットは産業用ドローンを開発・販売するドローンベンチャー。「わたしたちロボットは人を助けます」をスローガンに、人命救助や家屋調査、清掃発電など、人間にとって過酷な環境で活躍するロボットを提供してきた。

 これまでも動物監視システムはあったが、野生動物に電波発信器を装着するなど、従来の電波技術により発信機が大きく重いことが、動物愛護の観点からも適していなかった。スカイロボットが開発した追跡システムでは、ドローンを活用することで動物に配慮されたものになっているという。天然素材を用いたにおい液封入ボールも開発しており、2019年には商用化を予定。ドローンから発射してマーキングとして有用な役割を果たすことを目指している。

 ドローンを活用した害虫・害獣駆除の実験や活用は研究機関やベンチャー企業により、さまざまな形で行われている。佐賀大学とオプティムが共同開発した「アグリドローン」は、上空をパトロールして殺虫剤を散布したり、殺虫器をぶらさげて駆除するなど、無農薬環境下での活躍が期待されている。

 他にも、ドローンによるニホンザル追い払い支援ロボットの開発、ドローン世界最大手の中国DJIによる日本でのシカ個体数調査など、ドローンを活用したこうした動きには枚挙にいとまがない。

 一方で、害獣駆除は動物愛護の観点も見過ごすことはできず、非常に慎重さが求められる領域であることも事実である。また、地方自治体と企業による開発・運営費用に対する考え方の相違、現地高齢者とITの相性など、普及に向けての不安視される点も多い。とはいえ、人間では手に負えない問題をサポートできるのがドローンの強みであることから、一つ一つ課題をクリアして、人間にとってかけがえのないプロダクトになることを期待していきたい。