栃木県日光市にて、価格が15万円もする「日光埋蔵金弁当」が販売されています。中身が豪華なだけでなく、容器や箸も逸品。どのような内容で、そしてどのような経緯で生まれたのでしょうか。

「夢のような駅弁」を目指して

 栃木県日光市に、予約のみで販売を行う1折15万円(税込16万2000円)の弁当があります。その名は「日光埋蔵金弁当」。中身が豪華なのはもちろんのこと、容器と箸にも江戸時代から伝わる日光彫りの名品を使っているといいます。

 いくつかラインナップがあり、かつては東武日光駅の駅弁としても売られていたそうですが、どのような経緯で誕生し、またどのような内容なのでしょうか。製造元である日光鱒鮨本舗(日光市大室)の代表、田村公一さんに聞きました。

――15万円の弁当はどのような内容なのでしょうか?

 当店の看板商品である鱒(ます)寿司と北海道産タラバガニを使ったちらし寿司、A5ランクのとちぎ和牛を使ったヒレステーキ、日光の刺身ゆば、ロシア産のベルーガキャビア、九州産のクルマエビの塩焼きなど、約10種類が入っています。発売を開始した2006(平成18)年から、中身は基本的に変わっていません。

――価格の内訳などはどのようになっているのでしょうか?

 食材費が5万円、日光彫の容器代が12万円かかるため、ひとつ売ると2万円の赤字になり、利益はまったくありません。食材の北海道産タラバガニが高騰したときには、赤字はさらに膨らんでしまいました。しかしお客様サービスの一環として行っているため、今後も製造を止めるつもりはありません。

――仮に安価な紙製の容器に入れて販売するとしたら、おいくらでしょうか?

 7万円ぐらいになってしまいますね。


15万円の「日光埋蔵金弁当」(画像:日光鱒鮨本舗)。

――15万円の弁当はどのような経緯で作られたのでしょうか?

 私は27年前、東京から日光に移り住んで鱒寿司の製造を始めまして、商売が軌道にのるにつれて、栃木県内の職人さんたちと知り合うようになりました。私はもともと、日光を盛り上げる「夢のような駅弁」を作りたいという気持ちが強かったこともあり、試しに彼らに協力を呼びかけてみたところ、そうしたら皆さん、利益度外視で手伝ってくれることになったのです。

 一番最初に作った弁当は、容器が木工の町として知られる鹿沼市の桐タンスをイメージした三段構造のもので、下段にミニチュアサイズの市松人形や茶器を、真ん中の段には益子焼の器にのった日光の刺身ゆば、上段には鱒寿司などを入れました。

――その最初のものはいつ、おいくらで発売されたのでしょうか?

 5万円のものを、1999(平成11)年2月に20折限定で発売して、即日完売でした。それ以降、2000(平成12)年に3万円、2001(平成13)年に1万円、2005(平成17)年に10万円、2006(平成18)年6月に15万円の弁当を発売し、現在はすべて完売状態です。15万円の弁当も当初10折限定ですぐに売り切れてしまいましたが、お客様からのリクエストがこれまで以上に多かったため、現在では容器が完成次第、都度販売するようにしています。これまでに50折ほど売れたでしょうか。

販売は手渡しのみ、日光でしか買えない

――日光彫の容器についてくわしく教えてください。

 日光市内の職人さんに発注しており、製作は彫りに1、2か月、漆塗りに1か月程度かかります。彫りのデザインもひとつずつ異なっているんですよ。私はこの容器の出来にとてもこだわっているため、彫りの具合によっては返品することもあります。容器が出来上がったら、私が写真を撮ってお客さんにメールで送り、出来にご納得をいただいてから、購入を決めてもらっています。

――どのようにしたら買えるのでしょうか?

 予約販売のみとなります。日光市内にある道の駅で予約するか、当社に直接ご連絡をいただくかのどちらかです。後者による予約が90%を占めています。以前は日光駅内の売店でも予約を受け付けていましたが、現在は当社の直接販売に切り替わっています。

 お客さんから弁当の予約を受けたら、まず私が業者さんに連絡をして、次の容器の完成予定日を聞き、それをお客さんに伝えます。長く待つ場合、半年ぐらいかかるでしょうか。職人さんは1回に、2から3個の単位で容器を作ってくれますね。

――「直接販売」というのは、どういうことでしょうか?

 私がお客さんに直接手渡ししています。場所は日光市の道の駅か、東武日光駅の改札、または駅周辺などです。県外のお客さんから配送の要望が多くありますが、いっさい行っていません。宅配便で送って、「万が一、容器に傷が付いてしまったら」ということを考えると責任が持てないからです。職人さんが精魂込めて作ったものは、こちらも大切に扱わないといけませんからね。

旅館の食事をキャンセルして食べる人も

――どのような人たちが購入し、どのようなシーンで食されているのでしょうか?

 主な年代は50から60代のご夫婦といったところでしょうか。日光に受け取りに来て、帰りの特急「スペーシア」内で食べられたり、市内の旅館に宿泊し、そこでの料理をキャンセルして、代わりに弁当を食べるといったことを聞いたことがあります。なんらかの記念日に食べる人が多いような気がします。

――今後、さらに高価な弁当を作る予定はあるのでしょうか?

 構想はあり、まだ実現していませんが、これからも利益が出なくても作り続けたいと思っています。

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2017年7月発売の「SL大樹 日光埋蔵金弁当」(画像:日光鱒鮨本舗)。

 ちなみに同社は2017年7月から、「日光埋蔵金弁当」のラインナップのひとつとして「SL大樹 日光埋蔵金弁当」を販売します。価格は1350円(税込)。容器は将軍の持つ印籠をイメージし、東武鉄道がこの夏から、東武鬼怒川線で運転するSL「大樹」の石炭シャベルを模した「ランチスコップ(スプーン)」が付いてくるそうです。東武百貨店池袋店で2017年6月15日(木)から20日(火)まで開催されたイベント「鉄道フェスタ」にて先行販売され、連日のように開店1時間半で用意された20折が完売したとのことです。

※「みんなの乗りものニュース」では、7月18日まで「駅弁フォト特集」を開催中。皆さまの投稿、コメントをお待ちしております。
https://min-nori.trafficnews.jp/special/1

【写真】「日光埋蔵金弁当」の中身をさらに見る


地元日光はじめ各地の高級食材が一堂に会する(画像:日光鱒鮨本舗)。