過去の受賞例を見ても、両賞の一致は少ない(写真はイメージ)

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2016年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に「スバルインプレッサ」、もうひとつの「RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)カー オブ ザ イヤー」に「日産セレナ」が、それぞれ12月までに決定した(以下、表記はカーオブザイヤーに統一、あるいは略「〜」)

現在日本には、大きく二つの「カーオブザイヤー」があり、お互いに「棲み分け」を図ってきた。「走り重視」の日本カーオブザイヤーに対して、RJCカーオブザイヤーは「実用性」を重視しており、この点では今回の受賞は順当と言える。問題は2位以下のランキングで、両賞の評価がここまで分かれるのも珍しい。

インプレッサは「2位と1位」

「日本〜」はスバルインプレッサが420点で、2位のトヨタプリウスの371点と首位争いを演じた。3位以下はアウディA4の149点、ボルボXC90の145点、メルセデス・ベンツEクラスの114点と大きく水が開き、日産セレナはわずか11点で9位(BMW M2クーペも同じく11点で9位)と、まったく振るわなかった。

同実行委員会は、インプレッサについて「新開発のスバルグローバルプラットフォームなどにより、質の高い走行性能を持つとともに、国産車初の歩行者保護エアバッグ、運転支援システムのアイサイトをはじめとする多くの安全装備を標準装着するなど、世界トップレベルの安全性能も実現した」と評価した。

これに対して、「RJC〜」で首位の日産セレナの319点に続いたのは、スバルインプレッサの222点。3位以下はホンダフリードの200点、トヨタプリウスの176点、マツダアクセラの165点、ダイハツムーヴの115点だった。

「RJC〜」は日産セレナとスバルインプレッサが1、2位で並び、言わば順当な評価だった。しかし、「日本〜」で日産セレナは最下位グループとなり、ここまで両賞の評価が分かれるのは前代未聞といえる。

RJCは、日産セレナについて「ミニバンとしての利便性を徹底的に追求すると同時に、レベル2の自動運転サポート技術を比較的価格の安いモデルで実現したことを高く評価した」と論評した。しかし、「日本〜」では選考委員59人のうち、日産セレナに投票したのはモータージャーナリストの小沢コージ氏、金子浩久氏、島下泰久氏、松下宏氏と自動車技術解説者の熊野学氏の5人のみだった(松下氏は3点、残る4氏は2点)。

両賞の特徴

「日本〜」の最終選考は、各選考委員が25点の持ち点を対象10車のうち5車に配点することになっている。最も高く評価するクルマには満点の10点を与えるのがルールで、スバルインプレッサが59人中、24人の選考委員から10点満点を獲得したのと対照的だった。

二つのカーオブザイヤーのうち、1980年に始まった「日本〜」は、自動車雑誌の出版社などが実行委員会を作り、選考委員にはレーサーやラリースト出身の自動車評論家が多い。これに対して、「RJC〜」を主催する日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)はNPO法人で、会員には学識経験者や技術者のほか、レーサー出身でないベテランの自動車評論家が多い。

今回、「日本〜」の選考委員は、スバルインプレッサについて「走りの質感、安全性、操縦性などにおいて今までにないレベル」などと高く評価した。一方、日産は高速道路の同一車線で自動運転を可能にした「プロパイロット」をセレナに搭載。同一車線の自動運転技術はミニバンとして世界初となったが、選考委員の関心を惹かなかったようだ。

「RJC〜」は、伝統ある「日本〜」を「メーカーの接待づけ」や「運動性能に偏重した選考」が多いなどと批判して1991年に誕生した。このため、過去の受賞車も、「日本」にはスポーツカーや高級車が多く、軽の受賞が一度もないのに対して、「RJC〜」はスポーツカーよりもファミリーカーが多く、軽が何度も受賞している。

過去の受賞例を見ると、両賞が一致したのは、直近で2011年の日産リーフ、それより前に遡っても2001年のホンダフィット、2000年のホンダシビック/フェリオ、1997年のトヨタプリウス、1992年の日産マーチしかない。