「慌ててしまった部分があって、ミスを引きずってしまった」と告白したのは室屋成(FC東京)だ。オーバーエイジとして参戦した塩谷司(サンフレッチェ広島)も藤春廣輝(ガンバ大阪)も一様に「責任を感じた」と漏らした。試合中にメンタルを切り替えられなかった代償が後に響く。その後、さらに3失点して計5失点。追い上げも虚しく4−5で敗れた。

「世界で修羅場を経験していない監督と選手が集まった時、最初につまらないミスをしたら痛い目に遭うということを、この大会で思い知らされたという気分」

 スウェーデン戦後にこう振り返った手倉森監督は、こんな言葉も口にしている。

「技術のある今の選手たちに足りないのは(対世界との)経験だなと。この世代もそれを経験してなくて、“谷間の世代”と言われましたけど、そこをきっちり経験していれば、今回のプアな失点も防げたのかなと思います。今だけの問題じゃないというかね」

 世界と戦う上での難しさ、世界大会の雰囲気、世界大会の初戦への入り方……。本来なら3年前の2013年や2015年のU−20ワールドカップで味わっておかなければならない経験を、今大会で初めて味わうことになったというわけだ。

 ロンドン五輪でのベスト4という結果や、リオ五輪での6大会連続本大会出場という記録によって覆い隠されてしまいがちだが、U−20ワールドカップ出場を4大会続けて逃している弊害はこの先、フル代表に確実に影響を与えることになるだろう。手倉森監督が言う。

「年代別代表の強化に関しては、日本協会を通じて全クラブの下部組織から、もっといい強化ができるんじゃないかと思う」

 今回、ようやく世界との対戦を経験し、悔しさを味わったリオ五輪日本代表選手たちに期待したいのは、これまでピッチ内で発揮してきた「反発力」を、今度はフル代表を目指す上で、ロシア・ワールドカップを目指す上で、自分自身のパワーに代えて発揮してほしいということだ。

 2008年の北京五輪で3戦全敗を経験した本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(レスター)、長友佑都(インテル)といった選手たちは、その悔しさを糧に日本代表のレギュラーへと上り詰め、北京から2年後の2010年南アフリカ・ワールドカップ、4年後の2014年ブラジル・ワールドカップに出場した後、今もなお日本代表の中心選手として君臨する。

 だが、その彼らももう30歳前後。彼らに頼っていたままでは日本代表の成長はない。手倉森ジャパンの選手たちにはこの悔しさを糧に、彼らを脅かす存在に、そして彼らからポジションを奪い取る存在となることを期待したい。

「アンダーカテゴリーがなくなって、ここからはA代表しかない。そこでまたこの仲間たちと一緒にやりたいという思いがあるし、僕自身にもA代表でこの大会の借りを返したいという思いが芽生えている。そこに行くためにこれからしっかり成長しないといけないと思います」と植田直通(鹿島アントラーズ)が宣言すれば、亀川諒史(アビスパ福岡)も「自分のサッカー人生がここで終わるわけではない。この経験を活かす場としてA代表があるので、そこを目指していきたい」と今後を見据えた。

 期待したいのは、今回選ばれた18人だけではない。「この世代の可能性を追求してきた」と語る手倉森監督によってこの2年半の間に招集された選手は70人以上にのぼる。リオ行きのメンバーから落選し、思いを“託す側”に回った選手たちにも「本大会のメンバーに選ばれなかった」ことへの反発力を発揮してもらいたい。

 手倉森ジャパンのメンバーと、本大会行きが叶わなかった同世代の選手たちがロシア・ワールドカップのピッチに立った時に初めて、リオ五輪での敗北に大きな価値が生まれることになる。“谷間の世代”と呼ばれた彼らは、2年半にわたる戦いで今後に期待を持たせるに値する著しい成長を見せた。リオでの挑戦は志半ばで途切れてしまったが、これですべてが終わったわけではない。彼らが歩む道は、その先へと続いている。

文=飯尾篤史