西武鉄道「妖怪ウォッチ電車」が苦境に…人気失速の原因はJR東日本!?
昨年、社会現象にまでなった「妖怪ウォッチ」が、今年はまったく奮っていない。「妖怪ウォッチ」はゲームから火がつき、アニメで大ブレイク。世間を席巻したことは、すでに周知の通りだ。
昨年の夏休みには、西武鉄道が「妖怪ウォッチ」のスタンプラリーを開催している。ブームを先取りした西武鉄道沿線には、たくさんの親子連れが目立った。もちろん、それは「妖怪ウォッチ」目当てだが、神奈川県や千葉県、茨城県といった関東圏のみならず西武鉄道とは無縁の新潟県や福島県、静岡県といった遠方から来る親子も少なくなかった。
「妖怪ウォッチ」を擁する西武鉄道に対して、JR東日本は長らく“ポケモン”をスタンプラリーの目玉に据えており、今年の夏もポケモンスタンプラリーを開催している。昨年の「妖怪ウォッチ」ブームを考えれば、今年も勢いに乗る西武鉄道に軍配が上がりそうに思えるが、どうも様子がおかしい。大人気だった「妖怪ウォッチ」の人気に早くも翳りが見え始めているのだ。
「妖怪ウォッチ」の失速理由を業界関係者はこう話す。
「『妖怪ウォッチ』の人気が思うほど伸びていない理由はいくつかありますが、今春に劇場公開された『ドラゴンボールZ復活の「F」』も理由のひとつだと言われています。『週刊少年ジャンプ』で『ドラゴンボール』が連載終了したのは1995年。すでに20年を経過していますが、当時の『ジャンプ』を夢中になって読んでいた小中学生が親世代になり、一緒に楽しめるコンテンツになりました。お父さんと一緒に映画館に行き、『ドラゴンボール』にはまるチビっ子が続出しているのです」
JR東日本がスタンプラリーの主軸に据えている“ポケモン”の人気もじわじわと回復しつつある。その理由は、やはり親世代にあるようだ。
「鉄道のスタンプラリーの場合、子供だけで参加することはありません。大人と一緒に電車に乗って移動します。ポケモンスタンプラリーが始まってから、20年もの歴史があります。だから、親世代にとって“ポケモン”は、馴染みがあるのです。対して、『妖怪ウォッチ』は、親世代に浸透しているとは言い難い。お父さんが知っている『妖怪ウォッチ』のキャラと言ったら“ジバニャン”くらいじゃないですか。だから、親子で話せるコンテンツの“ポケモン”が親世代から支持されているんです」(鉄道雑誌編集者)
もともと、鉄道各社が夏休み企画としてスタンプラリーを始めたきっかけは、通勤・通学需要が減少する7月・8月に収入補填策として考案された。大人と子供が一緒に電車に乗ってくれることで、運賃だけではなく、途中にお菓子やジュースを買わせるといった戦略もある。長年にわたって培ってきたノウハウとブランドは、一時期のブームで簡単に崩せない。
また、『妖怪ウォッチ』の人気失速はJR東日本と西武鉄道という鉄道会社の差でもあると先の鉄道雑誌関係者は指摘する。
「結局、スタンプラリーは子供が親にせがんで連れて行ってもらう。親としては、山手線など都心部の路線の方が近いし、運転本数も多いから回りやすい。そういう点からJR東日本のポケモンスタンプラリーをチョイスしてしまいがち。なにより、山手線なら途中で疲れても駅ナカが充実していますから休憩することも簡単ですが、西武線ではそうもいきません」
今年の夏は酷暑日がつづく。炎天下、千葉県や茨城県から西武鉄道まで足を運ぶのも一苦労。近いJR東日本で済ませてしまおうという心理が親には働く。そうしたことも、『妖怪ウォッチ』離れの一因になっているという。
大ブームで、“ポケモン”から世代交代して『妖怪ウォッチ』の時代に突入すると昨年は言われてきた。しかし、鉄道業界という思わぬ方向から『妖怪ウォッチ』は失速を始めている。
これも「妖怪のせい」だろうか?
(取材・文/小川裕夫)