「口喧嘩 しても手をかす 貼り薬」薄ぼんやりと哀愁が漂う挿絵

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個人的な話で恐縮だが、30歳を目前に控え、肩こりや腰痛がひどくなり、足も頻繁につるようになってきた。このまま年をとったらどうなるのだろうと、恐れおののきながらせっせとジムに通い、筋肉の衰えに微力ながら抵抗している。
徐々に筋肉が衰え、肌がたるみ、体の可動域が狭まりつつも、年をとること自体は少し楽しみに思っている。というのも、ポプラ社より発売されている『シルバー川柳 4』 を読んだからだ。

本書は「社団法人 全国有料老人ホーム協会」が高齢社会・高齢者の日々の生活などをテーマとして公募した川柳のうち、入選作を含め、88作を収録している。シリーズ累計60万部を突破するほどの人気シリーズだ。ここでいくつか紹介してみよう。

・口喧嘩 しても手をかす 貼り薬

・入れ歯とれ 『年寄りみたい』と 笑う母
・運動会 撮った写真に 孫いない

読んでいると、ついつい笑いが漏れてしまう。撮った写真に孫がいないなんて! 何を撮ったの、しっかりして! と爆笑しながらツッコミを入れてしまいそうだ。
「どの句もその方の日常が浮かんできて、楽しくなる」と本書の担当編集者である浅井さんは仰る。まさにその通り!

年齢を重ねても、日々の生活を楽しんでいるように感じられ、「老いるのも悪くないな」と思える。
また、話題のキーワードが織り込まれた句も多く見られた。

・LED 絶対見てやる 切れるとこ

・同時期に シュウカツをする 孫と爺
・関心は AKBより PPK (PPKは、ピンピンコロリの意味)

流行りのアイドルの名前を出して友人たちとお茶を飲みながら「AKBよりPPKよね」と笑い合っている様子が目に浮かぶようだ。きっと「アンタ、うまいこと言うわね!」なんて盛り上がることだろう。

本シリーズは第4弾になるとのことで、かなり反響も大きいそうだ。
前述の浅井さんによると「これまで読者ハガキは4000通以上いただいています。中心は60代〜80代の方ですが、『お孫さんやお子さんからのプレゼントでもらった』『町内のバス旅行で勧められた』『病院の待合室に置かれていた』と本との出会い方が独特なのが嬉しいです。若い方の反響としては、病院やデイケアセンターなどに勤務なさっている方、『両親、祖父母にプレゼントしたら喜ばれた』という方も多く、笑いを通じて、本を贈りあう様子が浮かんできます」とのこと。

また、本書をお勧めしたい方、お勧めしたいポイントについても伺ってみた。
「昨日笑えなかった人は、ぜひ今日この本で笑ってください。毎日はけっして楽しいことばかりではないけれど、そしてこの本は健康実用本ではないけれど、元気になれるし若返ることもできるし、絆が深まる本だと信じて作っています。最近、家族に連絡していなかったな、という方もぜひこれで親睦を深めてください!」

どんなに願っても時間は巻き戻せないし、寄る年波には勝てないというのは真実だ。それでもいつだって状況を楽しんで笑いながら生活できれば、これが本当の「勝ち組」だろう。
(薄井恭子/boox)