パリに行ったら、ワインよりもビールを飲むべき理由

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フランスという言葉から「ビール」を想像する人は少ないだろう。もちろん隣にはビール大国ベルギーやドイツ、イギリスがあるし、それら生産国のビールをそろえる店は(特にパリでは)以前から存在した。しかし、ごく普通のカフェでは、ビールといえばハイネケンやフランス東部アルザスのクローナンブール社の製品など、銘柄は決まっていた。

そんなワインのイメージがあるパリで、ビールが注目度を高めている。第1回パリ・ビア・ウィークも今年5月末から6月かけて開かれたほか、市内でクラフトビールを豊富に扱うバーが増えてきたのだ。さらにミクロ・ブラッスリーと呼ばれる小規模醸造所がいくつかでき、パリの地ビールは注目されつつある。今パリでビールは、どのように盛り上がっているのだろうか? 

パリにおけるミクロ・ブラッスリーの先駆けは、2012年に操業を始めたブラッスリー・ド・ラ・グットドールだ。市内18区、北アフリカ系やインド系移民が多く住むバルベス地区の、エキゾチックなレストランや食料品店が連なる通りに、醸造所を構えている。販売するビールは、IPA(インディア・ペール・エール)、ブロンド、アンバーなど5種類。デーツや香辛料などの風味を感じさせる、醸造所がある地区を意識した味わいだ。

20区にあるブラッスリー・ラ・バレーヌも、同様にミクロ・ブラッスリーの1つである。醸造所は団地が立ち並ぶ住宅街の地上階にあり、注意していないと見落としてしまうほどだ。ラ・バレーヌのビールはアンバー、ブラウン、白、ブロンドの4種類。独自のレシピで選ばれた厳選したホップ、酵母、ハーブ、スパイスを混ぜ合わせ、オーセンティック、新鮮、そして自然の風味を感じる味わいに仕上がっている。同所を営むブルーノ・トーレスさんは、写真家から醸造家に転身した異色の経歴の持ち主だ。

かつてパリにあったブランドも復活した。ドゥモリは1827年、アルザスの醸造技術をパリに呼び込み操業した銘柄だ。同ブランドはパリでよく知られた存在だったが、1930年代の大恐慌と第二次大戦をきっかけに他社に買収された。買収後も「ドゥモリ」ブランドは維持されたものの、結局1950年代にその製造は終了した。ところが約50年後の2009年に、再び日の目を見ることになったのだ。ドゥモリは白、黒ラガー、ノン・フィルター・ラガー、ボックなど5種類のビールをそろえ、市内に直営のバーも経営する。

1890年から1969年まで操業していたガリアも、ドゥモリ同様に近年になり蘇ったブランドだ。2009年に2人の若い実業家により、パリ郊外パンタンにミクロ・ブラッスリーとして再始動した。ガリアはIPAやラガー、アメリカンスタウトなど4種類を造る。

パリ市内の小売店も、これらパリ・ブランドの広がりに注目し始めている。市内老舗百貨店は、店内に専用コーナーを設け、市内のブラッスリーやパブも、パリの地ビールが置いてあることを看板に掲げる店が出てきた。地元で地元のものを飲むという、昔であれば当たり前だったことが再び行われ出したのだ。今パリでは、地元産のおいしいビールが確実に増えている! 
(加藤亨延)