「ミドリムシ」をエネルギーにして、このバスは動く。

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さて、皆さんにクイズです。自動車って、何をエネルギーにして動くでしょう? まず、真っ先に「ガソリン」が思い浮かびますよね。そして、昨今は「電気」なんて回答も正解です。あとですね、実は「ミドリムシ」なんてアンサーもOKなんです……!
もっと、詳しくご説明しましょう。「いすゞ自動車株式会社」と「株式会社ユーグレナ」は、ミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル燃料実用化に向けた共同研究プロジェクトをスタートさせました。

っていうか、何がどうなってミドリムシが自動車の燃料になるのか?
「ミドリムシは藻の一種で、絞ると油分を取り出せます。この油分を精製し、トラックやバス、飛行機などの燃料をつくりだすことが可能となります」(株式会社ユーグレナ・広報)

始まりは「いすゞ」若手プロジェクトの発案だという、今回のプロジェクト。決して、机上の空論ではありません。もうミドリムシを使って、実際に車を動かす段階まできています。ミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル燃料、その名も「DeuSEL(デューゼル)」を使用したバスの定期運行が、7月1日よりスタートするのです!
そのバスとは、いすゞ自動車藤沢工場⇔湘南台駅を行き来するシャトルバス。藤沢工場へ向かういすゞ社員と来訪者の送迎は、ミドリムシのパワーによって行われることになります。

この事実を知ってしまったら、どうしてもその先の展開を期待してしまうな……。市販の自家用車に、ユーグレナのバイオディーゼルが活用・採用される可能性はあるのでしょうか?
「定期運行バスに入れるミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料とは別で、さらに研究を重ねていき、新しいミドリムシ由来の燃料『次世代バイオディーゼル』を2018年に技術確立することを目標としております。そして、その後の実用化(市場に出回るなど)を目指していく予定です」(株式会社ユーグレナ・広報)

さすがに、今すぐ実用化とはいきません。例えば7月より運行のシャトルバスに使用される「DeuSEL」は法律上、入れられる量が限られている。
「ユーグレナ社といすゞは、含有率100%でも車両のエンジンに負担をかけることなく使用できるバイオディーゼル燃料の技術確立を目指し、共同研究に取り組んでいきます」(株式会社ユーグレナ・広報)

しかし、そもそもなぜミドリムシなのか? その答えは、ミドリムシが地球にやさしいから。
ミドリムシはCO2を吸収して酸素を生み出す「光合成」で育つし、DeuSELを燃やして排出されるCO2は、もともとミドリムシが吸収したCO2。要するに、DeuSELは環境負荷が限定的な“炭素循環型の燃料”と言えますね。

というわけで、こんな未来図が描けるかもしれません。
「荷台の天井には培養プール。太陽を浴び空気中のCO2で育ったミドリムシは、トラック内で精製されDeuSELに。そして、ディーゼルエンジンを動かす。排出ガス中のCO2は、大気を通じて培養プールへ。そのCO2でまたミドリムシが育つ。トラック一台で炭素循環型輸送が完結!」
何度も言うけど、机上の空論ではありません。

ちなみに「DeuSEL」とは、「DIESEL(ディーゼル)」と 「euglena(ユーグレナ)」を組み合わせた造語だそう。
7月より運行となるシャトルバスは、ミドリムシだけにグリーンカラー。車体には「ミドリムシで走る地球にやさしいバス DeuSEL」という文言が記されています。
(寺西ジャジューカ)