わさびちゃんファミリーに仲間入りした“一味ちゃん”の成長記録や、全国の不幸な猫を減らすための取り組みを追った『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館/1000円・税抜)。

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以前にコネタでも紹介した、カラスに襲われ大怪我を負いながらも87日間の短い“猫生”を懸命に生きた子猫のわさびちゃん。
保護主によるTwitterやInstagramでの日々の報告が大きな反響を呼び、その軌跡を綴った書籍『ありがとう! わさびちゃん』は、10万部を超すヒット作になった。

ところでわさびちゃんをかわいがっていたゴールデンレトリーバーのぽんず(ぽん)ちゃんなど、わさびちゃんの家族たちはどうしているのだろうか? 実はわさびちゃん亡きあと、野良猫たちの保護や里親探しを積極的に行っていたわさびちゃんファミリーには、新しい仲間が増えていた。
昨年9月下旬、ファミリーは保健所行き寸前だった5匹の子猫を保護。子猫たちの里親探しはもちろん、母猫の避妊手術の手配などにも奔走し、子猫のうちの1匹を新しい家族として迎え入れることに。

“一味ちゃん”と名づけられたこの子猫の成長記録とともに、わさびちゃんのような不幸な猫を増やさないため、全国で保護された野良猫たち(保護猫)や、地域の人々が避妊・去勢して面倒をみる地域猫たちの現状をレポートする書籍『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館/1000円・税抜)がこのたび発売された。
わさびちゃんがいなくなって元気をなくしていたぽんちゃんが、かいがいしく一味ちゃんの世話を焼く様子や、お正月、ひな祭り、クリスマスといった季節ごとのお祝いの様子など、愛くるしい写真の数々を掲載。第一弾の写真集に掲載されてないものを含むわさびちゃんの蔵出し写真も満載だ。しかし、本書のテーマは“キュートな犬猫写真集”とは別のところにある。ファミリーを代表してわさび母さんに話を聞いた。

「今回の本では、『かわいい』だけでは動物は飼えないということを伝えたいと思いました。ペットショップで購入するなど、猫を家族に迎えるにはいろいろな選択肢があると思いますが、野良猫であってもかわいい、愛すべき家族になりうるんだということを知ってもらいたいです。そして、野良猫が生きている環境がどんなものなのかも知ってもらいたい。野良出身の一味とぽんちゃんが仲良く一緒に遊んでいる写真などを見て、ほのぼのとした気持ちになってもらえたらいいなと思います。私自身が、わさびと出会うまではあまり猫のこと、特に野良猫のことを知らなかったわけですが、そんな私のような人が読んでもわかるような、そんな本があったらいいなという気持ちから、こうした本を作ることにしました」

同書の中では、わさびちゃんの存在をきっかけにあちこちの家庭に迎え入れられた野良猫たちや、Twitter&Instagramでわさびちゃんを応援し続けた人たちの飼い猫たちといった“全国の保護猫ちゃん”を紹介。また、保健所や動物愛護センターの取り組みだったり、実際にはどのくらいの数の犬猫が引き取られたり殺処分されているのかといった現状もレポートしている。年々こういった問題への関心も高まり引き取り手が増えているものの、2012年度でも猫だけで12万頭余りが殺処分されている。
そのほか、北海道在住のわさびちゃんファミリーが、厳しい寒さのなか温泉場で暮らす地域猫たちの様子を写真を交えつつレポート。保護猫&地域猫たちの“いま”を切り取った内容になっている。

本の中ではまだ赤ちゃんの一味ちゃんは、保護から9カ月を経てすくすくと成長。時折わさびちゃんTwitter(@jessiepon)からも近況が伝わってくるが、現在の一味ちゃんの様子などを聞いてみた。

「一味はぽんちゃんにはとても甘えん坊ですが、私たち人間に対しては猫らしいというか、甘えたい時しか甘えてこなくて、遊びたいと思って誘う時には全然のってきてくれません(笑)。でも、一味の後に保護した子猫たちのお世話は一生懸命してくれています。小さい時から兄弟と取っ組み合いをしていたせいか、子猫の扱いもなかなか上手です。あやしているのか、一緒になって遊んでいるのか時々わからなくなりますが」

わさびちゃんファミリーは、この4月に新たに山椒・ざらめ・抹茶・七味ちゃんという4匹の子猫を保護。うち山椒ちゃん以外の3匹は既に里親に引き取られているそうだ。そして6月に入ってからも新たに4匹を保護して育てており、わさびちゃんの登場以来、すっかり”子育てスイッチ”の入ったぽんちゃんも大忙しなのだとか。

「一味が大きくなっても、ぽんちゃんとは相変わらず仲良しです。一味が小さい頃は、とにかく一味がいたずらをしかけたりして絶えずぽんちゃんと大騒ぎして遊んでいましたが、今は少し落ち着いたかもしれません。ぽんちゃんの一味に対する態度にも少し変化があります。一味が小さい時は本当に慈しむように優しく、大事に大事にしていましたが、さらに小さい子猫たちがうちに来てからは、一味に対しては自分と同等のような扱いで、他の子猫とは接し方が変わったようです。以前はぽんちゃんは一味の保護者のようでしたが、今では友達というか、一緒に子猫の面倒を見るパートナーと思っているようにも見えますね」

最後にTwitterやInstagram、書籍などを通じてわさびちゃんファミリーを応援している人たちへのメッセージをお願いした。

「わさびの頃からずっと私たち家族を見守って下さって、本当に感謝しています。最近はぽんちゃんのファンといって下さる方、ぽんちゃんの子猫たちの育児を応援して下さる方も結構いて、嬉しいです。また、わさびの時同様、一味の成長を一緒に喜んで下さったり、ご自身の経験談やほっこりするエピソードなどを教えて下さったり、私が保護した猫たちの里親が見つかりますようにと声をかけて下さる方も多く、励まされたり、癒されたりして、温かい気持ちになることができ、感謝しています」

その身をもって、命の大切さや野良猫たちの窮状を伝えてくれたわさびちゃん。わさびちゃんファミリー自らの尽力はもちろん、ファミリーがつなげた“猫愛”のネットワークによって救われた命も多い。小さな命の影響力は、意外に大きかったのではないだろうか。
(古知屋ジュン)