「ガンダムビルドファイターズ」テレビ東京系/毎週月曜日 18時〜
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普段アニメを観ない人でもガンダムだけは別! という超根強いファン・通称“ガンオタ(ガノタ)”をもつ『ガンダム』シリーズ。1979年に放送されてから実に34年間もの長期間、男の子おもちゃコンテンツの王座に君臨。なかでもガンプラは一つの趣味として確立されている感があります。初代『機動戦士ガンダム』の名セリフは、たとえ『ガンダム』シリーズに興味が無い人でも知っているほどで、ビジネス書でも『ガンダムに学ぶ経営学ー宇宙世紀のマネジメント・ケーススタディ』など一種の教養としても機能していると言っても過言ではありません。

しかし、若年層への訴求はここ数年大きく成功した例はなく、昨年の『機動戦士ガンダムAGE』もそれなりの結果に。逆に目の肥えた“ガンオタ”からは、大きく子ども向けに舵を切った内容に批判続出、新しいファン獲得の難しさを再確認することになりました。
大人向けラインの『機動戦士ガンダムUC』と、毎回新機軸を打ち出しながら迷走する子ども向け『ガンダム』のハザマで、高年齢化していくファンたち。その打開策として先週放送開始した新ガンダムが『ガンダムビルドファイターズ』なのです。

気になる内容は、ガンプラ好きの少年イオリ・セイは完成したガンプラ同士を戦わせるガンプラバトルで負け続きで、ガンプラ作りの才能はあっても操作はイマイチ。そんなある日、天才的なガンプラバトルの才能をもつ謎の少年レイジに出会い、ガンプラバトルの世界に飛び込んでいくというもの。

これまで「リアルロボット」の伝統を受け継ぎ、軍事や戦争などの重いテーマを扱いがちだったテレビシリーズが、オールドファンには懐かしいプラモシミュレーションマシンを題材にしたマンガ『プラモ狂四郎』を彷彿とさせるガンプラに焦点を絞った振り切った作風に一新。既存のモビルスーツをベースに、独自カスタムしたガンプラで戦う熱血バトルへと大リニューアルをはかりました。

この番組情報がでた時、百戦錬磨の“ガンオタ”の評判は正直イマイチでしたが、第一話が放送されるとこれまでに無い大好評! 子ども向けのハズなのに、「俺、久しぶりにガンプラ買うわ!」と宣言するオトナも生みはじめる雰囲気なのです。『ガンダムビルドファイターズ』本編では、冒頭のシーンで25歳の警備員を「おじさん」呼ばわりして「子ども向けですよ!」と予防線をはっている(たぶん)にもかかわらず、オトナもノリノリになる『ガンダムビルドファイターズ』。その秘密は、大胆に積み上げた歴史を無視して、これまでのモビルスーツを惜しげも無く大量投入する無軌道な豪華さと、そのモビルスーツのチョイスがいちいちシブいこと。また、これまでのファンならニヤリとせざる得ない名台詞のセルフパロディに配役にありそうです。

なにせ、主人公イオリ・セイのライバルとして登場したサザキ・ススムの操るガンプラはギャンですからね。初代『機動戦士ガンダム』で、キザな骨董マニアのマ・クベの操縦するギャンを愛機に選ぶ小学生って将来が楽しみ過ぎるセンスですよ。次回第二話の予告では、∀ガンダム登場のスモーが登場。しかも、親衛隊ハリー・オード仕様のゴールド・スモーですよ。ギャンに続いてスモーって、謎の騎士道精神にのっとりすぎなモビルスーツ選択センスには脱帽せざるを得ません。他にもリグ・シャッコー、デナン・ゾンにデナン・ゲー、ガズアル、ガズエル、ランバーガンダム……メッサーラ。分からない人には謎の呪文だけれど、知っている人には「どうしてそのチョイスなのか」とそれだけで2時間は語れる強烈な個性の機体ばかり。

ストーリーにちりばめられる、『ガンダムシリーズ』の名台詞パロディもツボをついたニヤリとできるもの。中でも、セイのお母さん目当てに模型店に通うランバ・ラルの姿には涙を禁じ得ません。次回予告の決め台詞は、レイジが学園に現れると知ったセイが悲痛に叫ぶ「僕は学園生活を生き残る事が出来るか!」
……なんだか、子ども向けといいながら業の深い“ガンオタ”が喜んでいるようですが、子ども向けの熱血バトルアニメとしても素直に楽しめる作品です。

「そういえば、ガンダムは好きだけど最近の作品は見てないなあ……」というガンダム卒業組のオトナたちにも是非見てもらいたい『ガンダムビルドファイターズ』。気がついたら、『プラモ狂四郎』や武者ガンダムに心ときめいていた子どもの頃の自分を思い出せるという意味で、オトナのコドモゴコロ向けになってくれるかもしれません。とりあえず筆者は、リ・ガズィが活躍でもしようものならまず間違いなく10年以上ご無沙汰のガンプラを買う将来しか見えません。
(久保内信行)