花巻東、絶妙投手リレーと「2番・千葉」で4年ぶりベスト4!

 4年ぶりに花巻東のユニフォームが準決勝の舞台へ帰ってくる。鳴門は6回裏一死一・二塁から遊撃手前で大きく弾む4番・伊勢 隼人一塁手(3年)の左前適時打をきっかけに5番・稲岡 賢太右翼手(3年)、7番・松本 高徳三塁手(3年)も適時打で3点を奪い一時は逆転。9回裏には二死満塁から稲岡の二塁ゴロが不規則に弾む内野安打となり4点目。それでも彼らは最後の一線で踏ん張った。

 要因は大きく見れば2つ。1つは佐々木洋監督による絶妙の投手起用である。この日は100キロ台のチェンジアップと120キロ台の動くストレートを使い分ける左腕・細川 稔樹(3年)を先発マウンドに送り込むと、済美戦と異なり6回3分の2まで先発を引っ張る我慢の采配。1点ビハインドの7回裏に細川が連続四死球を与え、今大会大当たりの伊勢を迎えると、同じ左腕でも全くタイプの違う中里 優介(3年)を投入し中飛に。

 

 その後も中里は120キロ台のスクリューを低めに、最速143キロのストレートを高めに配し、逆転後の8回裏を0に抑えて自らへの流れを作った。済美戦の先発の左腕・河野 幹(3年)をストッパーに投入できたのも、中里の「セットアッパー策」成功があったからだろう。

 もう1つは済美戦では見事に内野5人シフトを粉砕した2番・千葉 翔太中堅手(3年)による「相手のリズムを崩す積極的な仕掛け」である。論より証拠。彼の全5打席を全て記そう。

第1打席:1回表一死無走者。フルカウントから4連続ファウルで粘り四球。投げさせた球数13球

第2打席:3回表二死無走者。1ボールからの2球目を叩き中前打

第3打席:6回表先頭打者。フルカウントから2連続ファウル後8球目を選び四球。直後、3番・岸里 亮佑左翼手(3年)が大会第36号先制2ラン。

第4打席:8回表先頭打者。第3打席と同じく8球目で死球。エンドランで二塁へ進み、5番・多々野 将太三塁手の適時打で同点の生還。

第5打席:9回表一死無走者。2ストライク2ボールから3球ファウル後、2つボールを選び10球目で四球。

 鳴門・板東 湧梧(3年)はこの試合、163球を要して5失点完投したが、うち41球が千葉だけに投げたもの。その後の結果を見ても彼がチームに大きな推進力を与えたことは明白だ。

 こうして投手力の済美、強打線の鳴門を完全攻略し四国勢を蹴散らした花巻東。準決勝以降もこの両輪が期せれば、菊池 雄星(現:埼玉西武)をもってしても成し遂げられなかった初頂点は目の前にある。

(文=寺下 友徳)